2009-09-14

先の時代精神3

またドラえもんの話。

「ウルトラミキサー」の回で、のび太家のトイレは和式であることが描かれている。

「王かんコレクション」の回では、切手コレクションが大流行である。これは当時、実際に流行ったらしい。私の亡くなったじいさんも、結構な数の切手をコレクションしていたはずだ。

「アソボウ」では、のび太のパパが、高級そうなコンポを買っている。もちろん、CDではなくレコードである。作中では、「ちがうなぁやっぱし! からだのしんまでずんずんひびくよ」と言っているが、現代の我々が、レコードなんぞで音楽を聴いた日には、雑音だらけのヘボい音と看過するに相違ない。

私の親父曰く、当時は、「どの会社のレコード針がいいか」とか、「レコードを回転させるには、ベルト駆動かギヤのどちらがいいか」、「スピーカーはどれがいいか」などと言ったことで、喧喧諤諤の論争があり、それで飯を食っている評論家も、大勢いたらしい。親父曰く、「CDの発明により、レコード針や駆動系の会社、それに評論家達は、なんも悪いことしてないのに、皆、職を失った。Aなのか、Bなのかと争っている間に、いや実はCなんだ、イロハなんだ、甲乙丙丁なんだといった、全く違う物が登場して、AもBも、どうでも良くなってしまう。時代とはそういうものなんだ」と。スピーカーに関しても、当時良しとされたスピーカーの特性を計測すると、見事にドンシャリなんだとか。

「昔の常識は今の非常識」とは、私の高校時代の国語教師の口癖だったが、よく言ったものである。現代にも生き残っている、昔気質な評論家の例。
HDDで音質が変わる
本田雅一の「週刊モバイル通信」

「たとえ胃の中、水の中」の回の最後に、のび太がインク壷を飲み込んでしまうというオチがある。インク壷は、万年筆を使っていなければ、そこら辺に転がっているわけがない。

かように、万年筆は、一時期、小学生でも使っており、非常に便利な者だったのだが、何故こんなに廃れてしまったのだろう。ペンを垂直に立てて書く必要のある、ボールペンなどより、よほど自然で書きやすいペンだと思うのだが。

追記:もちろん、未だにレコードには根強いファンがいる。物理的な音溝に針をあてて音を得るというのは、じつにアナログで分かりやすい仕組みだ。また、真空管アンプのファンもいる。真空管など、ノイズに弱いどころか、それ自身がノイズの発生源であるにもかかわらず、だ。ある実験では、ランダムなノイズが混じっているほうが、人は音質がよいと思う傾向にある、という結果がでたらしい。まあ、なんと言おうと、趣味の世界にいる人の決意を覆すことは難しい。

例えば、万年筆だって、機能的には、ボールペンに劣っている。手入れが必要だとかいう点もさることながら、ブルーブラックのインクでさえ、耐水性、耐光性という点で、油性ボールペンに勝てないのである。最近は超微粒子の顔料インクが開発されており、これを使えば、ボールペンにも勝る耐久性を有する字を書けるが、やはり、染料インクに比べれば、手入れが難しい。油性ボールペンは、前述の通り耐久性もさることながら、非常に安価で手入れも必要ないということもあって、到底、万年筆の及ぶ所ではない。

知ることと知らないこと - For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder? 出張所

たまたま、手元に村上春樹の短編集、「夜のくもざる」があったので、「ずっと昔に国分寺にあったジャズ喫茶のための広告」風にコメントを書いてみた。

まあ、経験の違いでしょう。 私が子供の時分、すでに万年筆は絶滅して久しかったのですが、家に万年筆はありました。 たまには、万年筆で字を書いていました。 そんなわけで、私は万年筆について、よく知っていたのです。 家にレコードはありました。ただし、レコードプレイヤーはありませんでした。 というのも、私の両親はCDが発明されるや、その音質の優れた事に感動し、すぐに鞍替えしてしまったからです。 そんなわけで、私はレコードについては、よく知らないのです。 どうかそのことで筆者に詰め寄ったりしないでください。もともとそういうことになっているのです。

まあ、そもそも私は音楽にあまり興味がないというのも、あるのだが。

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