言語の文法をどのように説明すればいいのだろうか。規格では、Syntax Notationという記法を用いている。当初、これを使えばいいのではないかと思ったが、これは、あまりにも、普通のユーザーには不向きだ。
たとえば、整数リテラルのSyntax Notationは、いかに正しいとはいえ、こんな記述は、Language Lawyerでなければ、読む気がしないだろう。
integer-literal: decimal-literal integer-suffixopt octal-literal integer-suffixopt hexadecimal-literal integer-suffixopt decimal-literal: nonzero-digit decimal-literal digit octal-literal: 0 octal-literal octal-digit hexadecimal-literal: 0x hexadecimal-digit 0X hexadecimal-digit hexadecimal-literal hexadecimal-digit nonzero-digit: one of 1 2 3 4 5 6 7 8 9 octal-digit: one of 0 1 2 3 4 5 6 7 hexadecimal-digit: one of 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 a b c d e f A B C D E F integer-suffix: unsigned-suffix long-suffixopt unsigned-suffix long-long-suffixopt long-suffix unsigned-suffixopt long-long-suffix unsigned-suffixopt unsigned-suffix: one of u U long-suffix: one of l L long-long-suffix: one of ll LL
しかし、たとえば、if文の場合(イタリック体などの修飾は省略)、
if ( condition ) statement if ( condition ) statement else statement
このぐらいなら、使っても構わないだろう。あるいは、訳すか。
if ( 条件 ) 文 if ( 条件 ) 文 else 文
if文のような文であれば、別に、文法記法などといった、たいそうなものを使わなくても、サンプルコードひとつあれば、理解できるかもしれない。しかし、関数の宣言は、非常に厄介だ。
たとえば、関数の宣言は、T Dという形をとる。Dは、以下のようになる(文字の修飾は省略)。
D1 ( parameter-declaration-clause ) attribute-specifier opt cv-qualifier-seq opt ref-qualifier opt exception-specification opt
これは、この順番でなければならない。つまり、
struct Foo { int // 戻り値の型 func // 関数名 (int x)// 仮引数の宣言句 [[]] // アトリビュート指定子 const // CV修飾子 & // リファレンス修飾子 throw() // 例外指定 }
もしこれらが、間違った順番であれば、文法違反である。
規格のSyntax Notationを使うべきか。あるいは、独自の文法記法を考えだすべきか。もし、規格の文法記法を使う場合、その文法カテゴリー(syntactic categories)、たとえば、parameter-declaration-clauseなどといったものは、翻訳するべきか。
現時点では、ユーザーにも分かる範囲の、規格の文法記法に準じた記法を使い、文法カテゴリーは、翻訳するべきであると考えている。つまり、関数の宣言の場合、T Dという形をとり、Dは、
D1 ( 仮引数の宣言句 ) アトリビュート指定子(省略可) CV修飾子(省略可) リファレンス修飾子(省略可) 例外指定(省略可)
となる。
たとえば、選択文の場合、
選択文: if ( 条件 ) 文 if ( 条件 ) 文 else 文 switch ( 条件 ) 文 条件: 式 変数の宣言
となる。これは、普通のユーザーでも、理解できる範囲内だと思う。厳密には、条件(condition)は、以下のようになっている。
condition: expression type-specifier-seq attribute-specifier opt declarator = initializer-clause type-specifier-seq attribute-specifier opt declarator braced-init-list
しかし、こんな文法記法が、一般に受け入れられるわけがない。変数の宣言は宣言で、また、別の場所で解説すればいいのだ。
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