この度の震災によって、物流が滞っている。面白いことに、漫画雑誌は、ネット上に、無料で雑誌を公開し始めた。何故そんなことをするのか。果たして、単なる見せかけのチャリティ(笑)や、宣伝と称する売名行為のためだろうか。
日本における漫画雑誌は、事実上、立ち読みし放題である。漫画雑誌を丁寧にもひもで縛っていたりラップしていたりする書店の方が少数派である。大多数の書店は、漫画雑誌を立ち読み可能な形で、そのまま陳列している。
したがって、漫画雑誌を無料で公開すること自体は、なにも新しい考えではない。もともと、当然の如くに立ち読みされてきたのだから、今更、無料でネット上に公開されたところで、影響はないだろう。
しかし何故、流通が途絶えたからといって、にわかにネット上で公開しだすのか。
この問題を考えていた私は、ある結論に至った。もし、数週間ないしは数ヶ月ほど雑誌を読まなくなると、再び読もうという気がなくなるからである。娯楽品はある種の中毒性を持っていて、頻繁に楽しまない娯楽は、忘れてしまうのだ。
私は高校生になった時から、漫画雑誌をあまり読まなくなってしまった。理由は、様々あるが、高校生に成り立ての頃、色々と忙しく、数週間ほど、漫画雑誌を読む暇がなかったのだ。何しろ、当時の私は、片道10キロメートルほどの道のりを、自転車で通学しなければならなかったのだ。私は田舎に住んでおり、都合のいい電車やバスは通っていなかったのだ。そのような田舎でさえ、毎週、発売日の前日に、漫画雑誌は店頭に並ぶのである。
数週間して、通学にも慣れたのだが、再び漫画雑誌を読む気にはならなかった。漫画雑誌を読まないと、単行本も買う気がしない。そして、私は次第に、漫画から離れていった。
いま、震災によって流通が滞り、数週間、ないしは数ヶ月、漫画雑誌を読まなかったとすると、かつての読者の大半は、漫画雑誌を読むのをやめてしまう。おそらく、出版社が恐れていることはこれだろう。
たとえ普段は立ち読みでも、読んでいる限り、ある程度の金は落としてくれる。しかし、一切読まない者からは、金は落ちないのだ。
しかし、出版社は今ひとつ煮え切らない。聞説、ネット上で公開されている漫画雑誌を閲覧するには、専用のソフトウェアが必要だというではないか。しかも、そのソフトウェアは、MS Windows専用だというではないか。
そのような、本来、技術的に不必要な、環境依存の制限を強いる漫画を読む義理はない。我々は読むのをやめるべきである。なあに、心配はない。漫画中毒は、治療が可能だ。数週間も読まずにおれば、さほどまでに読みたいとは思わなくなる。数ヶ月もすれば、もうすっかり禁断症状も収まり、読もうとも思わなくなるだろう。
そもそも、いまどき書籍程度は電子媒体で提供されているべきなのだ。技術的には何の問題もないのだ。ただ、既存の価値観にとらわれている出版社が拒否しているだけなのだ。我々はそのような不親切なコンテンツを閲覧する必要はない。
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