私はこれからの時代、コンテンツは無料になると確信している。いや、これは誤解を招く言い方である。本当は、コンテンツが売れなくなるのだ。
例えば漫画だ。私は常々、最近はロクな漫画がないことを嘆いていた(ただしジョジョを除く)。しかし、今気がついてみると、私は実際には、漫画をたくさん読んでいるのである。読むべき漫画がないというのは、商業漫画の話なのだ。
pixivというWebサイトがある。これは、絵の投稿サイトである。投稿されている絵の品質は様々であるが、非常に素晴らしい絵が、毎日大量に投稿されている。絵には、漫画も含まれる。
Pixivに投稿されている漫画には、非常に面白いものもあるのだが、商業漫画たりえない理由がある。例えば絵があまりうまくなかったり、内容があまりに偏っていて、万人受けしないということである。
商業漫画は、非常にコストの掛かる商売である。漫画を印刷して全国に流通させるのは、決して安くない。そのため、出版される漫画は、売れる見込みのある漫画ばかりとなる。これには、絵のうまさという要素もあるが、もっと重要なことには、老若男女すべてに受け入れられるかという要素がある。万人受けを狙うとすれば、共通して楽しめる内容にするしかない。このため、同じ年代の漫画は、似たり寄ったりな絵になり、ストーリーも似通ったものになる。つまり、いずれも似たような凡作ばかりで、平均からかけ離れた逸作がでてこないのである。
これは、漫画というものが市民権を獲得した近年、とみにみられる傾向である。漫画の黎明期は、実験的な漫画が多かった。昔の漫画が面白いのは、このためである。今の漫画は、売るために当たり障りのない内容ばかりである。昔と比べて、絵の質は上がっているものの、内容はむしろ劣化している。
これは、東京都の表現規制を待つまでもない。赤字にならないこと、売れることを追求した、大衆迎合の結果である。これでは芸術品の生まれるわけがない。
一方、Pixivのような投稿サイトは、もともと利益にならないのだから、好きなように描く。だから、飛び抜けた作品も多い。決して万人受けはしないものの、飛び抜けた作品が生まれる可能性がある。
動画に関しても同じだ。YouTubeというWebサイトがある。これは、動画の投稿サイトである。もちろん、YouTubeには他人の著作物が違法にアップロードさされているという批判もある。しかし、大部分の動画は、オリジナルである。私のよく見る動画は、完全に合法である。特に、私の大好きな猫の動画に関しては、一日に24時間以上もの動画がアップロードされている。これは、YouTubeだけで生涯に渡る猫動画の需要を観たせることを意味する。また、オリジナルの猫のアニメーションなども多数アップロードされている。わざわざ違法にアップロードされた昨今の糞アニメなどをみる必要はないのである。
では、文章はどうか。私に言わせれば、読むべき価値のある文章は、すでに書き尽くされてしまった。例えば、私は今日、古事記を読んだ。本居宣長が古訓の復元に努めてくれたおかげで、高等教育を受けていないこの私でも、スラスラと読むことができる。また、有名所の古文は、大抵インターネット上にテキストがあるので、金はかからない。
これは、英文学でも同じである。私の最も好きな英文は、Lord Dunsanyの文章であるが、彼の著作は、すべて著作権が切れている。 好きなだけ読むが良い。
追記:今、気がついたのだが、戦時加算を考慮すると、Lord Dunsanyのほとんどの著作物は、まだ著作権が切れていないということになるのだが・・・・・・。
つまり、娯楽作品に限れば、もはやコンテンツにカネを払う価値はないと言える。何故ならば、商業作品はつまらないし、合法的に無料で楽しめる作品は、世にあふれているからだ。いい時代になったものだ。
では、娯楽以外のコンテンツはどうなのか。例えば、プログラミングの参考書はどうかというと、これもやはり、商業的なコンテンツは廃れていくのではないかと思っている。個人がやっているWebサイト上の解説では、まとまった内容とはなりにくいことは確かだ。しかしこれも、複数のサイトを横断した縦横無尽な検索によって駆逐されてしまうだろう。それに、今後プログラミングの初期学習は、comp.std.c++やStack Overflowのようなプラットフォームが主流になるはずだ。
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