2011-09-12

post-Bloomington mailingの簡易レビュー

post-Bloomington mailingが公開された。

ISO/IEC JTC1/SC22/WG21 - Papers 2011-09

N3301: Defect Report: Terminology for Container Element Requirements

見逃していた文面上の僅かな誤りを修正。

N3302: Constexpr Library Additions v2: complex
N3303: Constexpr Library Additions v2: chrono
N3304: Constexpr Library Additions: containers
N3305: Constexpr Library Additions: utilities v2

それぞれのライブラリーで、constexpr化できる関数をconstexprにする変更。

N3306: A Proposal to Tweak Certain C++ Contextual Conversions, v2

幾つかの場所では、式の評価には、ある種の制限が課せられる。例えば、if文やwhile文のオペランドの式を評価した場合、boolに変換可能であることが求められる。このような制限を、規格では、contextualという用語を用いている。

ところで、規格の文面中に、このcontextualとよく似た意味を、それぞれ別の言葉を使って表現している箇所が、4箇所ある。その箇所では、オペランドがクラス型であった場合、期待される型への、「唯一の非explicitな変換関数」が求められている。

この4箇所の言葉を統一するために、新たな用語、contextually implicitly convertedを定義して、その用語に置き換えようという提案。

N3307: Issues Found Implementing C++0x

C++0xを実際に実装している途中で見つかった不具合集。多いので説明はしないが、興味深い問題も多い。特に、constexprと例外指定に関する問題が多いように思われる。例外指定は、私の印象では、些細なものが多いが、constexprは厄介だ。

しかし、いくつかの問題を解決するためには、それなりに大きな変更が必要になる。例えば、ある問題を解決するためには、テンプレートコンストラクターも、コピー/ムーブのコンストラクターとし、他のあらゆる箇所を、それに対応して修正し、さらに既存のコードの意味を変えないために、テンプレートなコピー/ムーブのコンストラクターは、暗黙のコピー/ムーブのコンストラクターの生成を妨げないという条件も付け加えなければならない。

N3308: constexpr consternation

constexprの原案では、constexpr関数を前方宣言することはできなかったし、定数式の入力に対しては、常に定数式を出力しなければならなかった。そのような制限は後に変更されたが、文面上では、その変更を正しく適用できていない箇所がいくつかある。その修正案。

ちなみに、今回のcore active issuesは、タイトルだけで詳細が書かれていないものが多い。これは、次のmailingで修正される予定らしい。

しかし、今書いているC++の参考書は、ある部分では1年以上前のドラフトを参考にして書かれたので、今とはだいぶ異なっている。constexprのような、明らかに多大な変更が入るであろう機能は、当時執筆を保留したが、実際にFDISを読んでみると、殆どの項目で、一年前とは文面が改良されている。問題は、そのような改良を、参考書にも適用しようとすると、ほぼ書きなおしになってしまうということだ。これでは、いつまでたっても本が完成しない。結局、不完全でも僅かな修正だけで済ますしかないだろう。やはり、C++の参考書を日本語で書くべきではなかったのだ。しかし、英語でいいとなると、なおさら今書いている本のようなものは必要ない。英語でいいのならば、規格を読めばいいからだ。なんともニッチな需要であることよ。

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