著作権を考えていて、ふとデジタルデータと譲渡権は実情に合っていないのではないかと思った。譲渡権とは、著作権法、第二十六条の二に規定されている。著作者は、譲渡権を専有する。つまり、他人の著作物を勝手に譲渡してはいけない。
しかし、もし、私が紙の本を1000円で買えば、その本は古本屋に売ることができるし、他人に渡すこともできる。これは著作者もしくはその承諾を得たものから譲渡された複製物には、第二十六条の二が適用されないためである。
この例では、私は1000円を支払うことによって、著作物の複製物である紙の本を、正規の方法で入手したわけである。そのため、私の所有している本には、譲渡権は及ばない。譲渡権が及ばないのだから、古本屋に売ったり、他人に譲り渡したりできる。別に、金銭が関わる必要はない。著作権者から、あるいはその承諾を得ている者から著作物の複製物を入手した場合、それには譲渡権が及ばないということである。
これを現代のデジタルデータの頒布方法のひとつ、つまりインターネットに当てはめると、私の見解では、非常に不思議なことになる。
今、私が著作者の承諾を得ている方法でサーバーから著作物のデジタルデータをダウンロードしたとする。ということは、ダウンロードした著作物であるこのデジタルデータには、譲渡権が及ばないことになる。私はこのデジタルデータを、紙の本と同じく、他人に売り払ったり、他人に譲り渡したりできるはずである。したがって、10回ダウンロードしたならば、10回譲渡できるはずである。
はて、おかしい。何か解釈を間違えているのだろうか。
データは本と違って、譲渡したのはコピーであって、オリジナルデータが手元に残るからでしょう。
ReplyDeleteダウンロードしたデータを書き込んだ記録媒体ごと売ることだってできます。
ReplyDeleteこの場合、複製は行われません。
合法的にコピー(私的利用目的のコピー)したものを売ることは合法で、売ったり譲渡したりすることを目的にコピーすることは違法だったと思います。
ReplyDeleteぎりぎりいえば, 複製せずに「ダウンロードしたデータを書き込んだ記録媒体ごと売る」のは (少なくとも現時点では) 不可能だと思います... というか, どうやったら可能なんだろう.
ReplyDeleteあと, 「合法的にコピーしたものを売る」場合であっても無権利者であれば原則違法.
たとえば、購入したソフトウェアを自分で使う目的でパソコンにインストールして、後でパソコンごと売却したり譲渡したりしても合法だったと思います。
ReplyDelete解釈を間違えている、ということではないです。
ReplyDelete著作権者の権利がデジタルであるかどうかに関わらず保護されるように、司法府が解釈を創造する、ということになります。
(譲渡権の判例は知らないのですが、コピーし放題ということはないと思うので。)
立法府は条文を作りますが、それのみで法の内容が決まるということではないです。
>江添さん
ReplyDelete疑問に対する答えになってなさそうな上、以下ど素人の意見でお目汚しですが自分も気になったのでご寛恕ください…
http://civilpro.law.kansai-u.ac.jp/kurita/copyright/commentary/Act26-2.html
↑の法学者の方のウェブページでデータの譲渡権が消尽するかしないか考察されています。(改正前の法を参照して号数変わってますが、「著作物の公衆送信という形態で流通が今後盛んになることが予想されている」以下をお読み下さい。)この方は取引安全の観点から、ダウンロードは譲渡ではなく消尽しない可能性(A.)もあるとしています。
譲渡権の消尽は取引安全や円滑流通の確保の考えから規定された「政策的」なものらしいので、譲渡権者の利益圧迫になる消尽になるならば裁判所も「譲渡」と認めない可能性があるということ…でしょうか。腑に落ちませんが。
確かに日本の著作権法は公衆送信と言う形で明確に送信を分離しているから、「送信は有体物の譲渡じゃない」と言い切られる可能性があるかもしれない。判例は探しきれませんでした、済みません…
以下は↓プロパガンダwですが、
http://adv.yomiuri.co.jp/ojo/tokusyu/20100805/201008toku5.html
「電子書籍は、モノになっていないので消尽理論は適用されない。公衆送信権は、ずっとついて回ります。」って言い切ってます。だったら、消尽とか関係なく違法アップロードした奴をしょっ引けばいいだけなんじゃ(^_^;
http://www.businessweek.com/news/2012-02-07/citigroup-s-capitol-loses-bid-to-close-song-reseller-redigi.html
最近↑の報道がなされたのでそれにインスパイアされてこの記事をお書きになられたと思います(勘違いなら済みません)。この通り米国のある裁判官はデジタルデータの譲渡権も消尽するという判断しましたので、この国でもそういう判例が出来たら良いかなと他力本願で待っています(誰かが犠牲になるのを待つ…ヒドイ)勿論とっとと文化庁が立法化すればいいだけなのですが、譲渡権者は流通が混乱するとか、30条1項に基づく私的複製済みデータを全部消すなんて無理だろ…とか難癖つけて反対してもめてるうちに、時間だけ過ぎていくだろうな(検索エンジンの時みたいに)と諦めています。デジタル化の可搬性とネットというコスト安の流通経路使っておいて何をいまさら?と思いますが。
あとこれとは全く関係ないですが、プログラムの著作物の場合の「ふざけたEULA」で「これは貸与契約で売買契約(譲渡契約)じゃないんだ」とか言い切ってる奴もありますね(貸与権は消尽しないのでいけるんじゃないか、と考えてやるらしいですがこんな契約無効だ、とかなんとか)。
>惑星さん
そうですね、法解釈するのは司法です。…MYUTA事件の判決みたいなヒドイ法解釈まで出されるとホント困りますが(本件とは関係ありませんけれども)。