2012-09-07

日本語の変化について憂う必要はない

身の振り方を考えるついでに、日本語について考えた - アスペ日記

自然言語は変化するものなのだから、その変化について憂う必要はない。たしかに、日本語は戦後大胆な改革があったが、それでもまだ、憂うには足りない。

実際のところは、戦後の日本語改革でも、特に日本語は簡単になってなどいない。日本語の難易度は、全然変わっていない。

また、昔の日本語との距離が薄れるというのも杞憂である。日本語は世界的に見てもなかなか下位互換性の高い言語であり、千年前の文章が普通に読める。事実、私などはもうまとまった量の現代文などまともに読んでいない。なぜならば、昔書かれて今なお残っている文章のほうが、圧倒的に質がいいことが保証されているからだ。

個々の言葉をみると、流行り廃れはある。それは自然言語として当然のことで、いまさら憂うに当たらない。

たとえば、今から150年ぐらい前に作られた白波五人男など歌舞伎の多くでは、了見という言葉が、勘弁するという意味で使われている。しかし、今誰も、「どうか御了見してくださいませ」などとは言わない。「勘弁してくれ」とか、「許してくれ」などと言う。これをみて、現代日本語が劣っているというのはあたらない。

閉じた環境で独自の言葉が発達するのはよくあることで、初期の2ch.netはネットスラングだらけだった。それが、2ch.netの利用者がしだいに増えていくにつれ、減っていった。これはなにも2ch.netの話ではなく、英語圏でも、インターネット初期はleet speakだらけだった。それが、インターネットの利用者が増えていくにつれ、減っていった。これらのスラングの収集や研究はすべきだが、スラングが死語になったからといって、悲しむにはあたらない。

そういえば、自衛隊は駐屯地や船という閉じた環境で生活しているためか、このような符丁が非常に多い。特に、隊員の中には、駐屯地や船から一歩も出ずに数年を暮らしている者までいるのだ。例を上げると、掌握(しょうあく:荷物を掌握する、人員を掌握する)、喫食(きっしょく:中国は何百年も前から略字として一般的に吃を使っていたので、吃食の方がむしろ正しいのではないかともひそかに思う)、各人(かくじん)、着眼(ちゃくがん:注目点)などといった単語だ。また、このような単語を使うときの助詞や助動詞も、どこか古めかしい。

また、IMEの特性上、漢字表記にランダム性が生じるとか、本来漢字表記すべきではないものも漢字表記されてしまうなどというのも、杞憂に過ぎない。というのは、IMEがなく筆で書いていた昔、漢字表記のばらつきはもっともっと甚だしかったからだ。たとえば、源平盛衰記では、一貫して、「さること」を「猿事」と書いている。当時はあまりにもひどい当て字が多かった。ましてや、一貫した仮名遣いなどは、本当にごく近年の話である。いま出版されている古文の本では、どれも自称「正しい歴史的仮名遣い」に直していると主張している。そんなもの、存在しないというのに。

ところで、「当時」といえば、本来は現在を表す言葉であるのに、あまりにも古文に当時当時と書かれすぎているためか、もはや過去を意味する言葉になっている。過去を意味する「往時」という言葉があるにも関わらずだ。これを日本語の乱れとみるのはあたらない。あまりにも使われすぎたために意味が変わってしまっただけだ。

リンク先に影響されて、特にまとまりのつかない文章を少々書いたが、特に気にする必要のないささいな問題にすぎない。

mozcは、ある点ではMS IMEやATOKより優れていると思うのに、別の点ではどうしてこんな誤変換をという、不思議な誤変換が多い。といっても、今GNU/Linuxで使えるIMEの中で、SKK信者を別にすれば、一番マシなIMEだ。

2 comments:

  1. > 日本語は世界的に見てもなかなか下位互換性の高い言語であり
    これは何を根拠にしているのでしょう。英語と比較すると日本語の変化の方がはるかに速いです。

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  2. まあ、昔の英語も綴りさえ現代風に直せば、だいぶ親しみやすい文章になりますが。
    いずれ英語の古文も読みたいと思いつつ、なかなか果たせていません。

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