フランスの国内情報中央局が、法的手続きを踏まずしてWikipediaの記事の削除権限をもつボランティアを呼びつけて脅迫し、記事の削除を強制させたそうだ。
[CC-BY-SA 2.0]
3月の初め、DCRI(フランスの国内情報中央局)がWikipediaをホストする非営利団体のWikimedia財団と連絡を取った。彼らはフランスの軍事基地関するあるフランス言語Wikipedia記事に軍事機密情報が含まれると主張し、即座に削除することを要求した。Wikimedia財団はこれを考慮し、彼らは十分な情報を提供していないと考え、彼らの要求を拒否した。 Wikimedia財団は国家組織に協調し法的な決定には従う。毎年数百件もの要求があり、十分な理由があれば、これに従っている。
財団の答えに不満足なDCRIは、4月4日にWikipediaのボランティアを彼らの事務所に呼びつけた。このページの削除が可能な権限を持つボランティアは、DCRIの事務所内で、従わない場合は拘束され検挙されると判断した上で、該当記事の削除を強制された。DCRIにWikipediaはそのように運営されるものではないと説明したものの、圧力の下、彼は記事を削除する以外の選択肢を持たなかった。彼は他のsysopに対し、記事の復帰はおそらく法的責任を負うだろうと警告した。
このボランティアはこれまで該当記事とか変わりがなく、DCRIの事務所に入るまでは、一度も同記事を編集したことがなく、また同記事の存在すら知らなかった。彼が選ばれて呼びつけられた理由は、彼がフランスにおけるWikipediaとWikimediaプロジェクトの啓蒙活動に頻繁に顔を出していたことにより、簡単に突き止められたからである。
Wikimediaフランスは、自由と知識を追求する人物に対し、脅迫と強制による手法を用いたことを理解しかねる。自由知識を支持するWikimediaフランスとして、フランス市民とWikipedia編集者に対しこのような検閲を行うことに抗議する。
Wikipediaを編集することがいつからフランス国内で法的に危険な行動となったのだ? DCRIは軍事機密の施行に、法的で、暴力的ではない方法を使えないのか?
同記事はその最後の数日を除いて長年、何の問題も起こさず存在してきた。脅迫は、フランスにおいて軍事機密を守るにあたって適切な方法ではなく、インターネットはそのような暴力的な方法で規制される場所ではない。DCRIは法律の施行にあたって、他の方法があったはずであると我々は信ずる。この問題を独立した調査により解決することを我々は望む。フランスは法治国家であり、国家安全をこのような方法で施行されるべき場所ではないのだ。
原文ではDCRIの事務所に呼びつけたのは、召喚(summon)となっているが、どうも記事の様子からすると、通常の召喚手続きを踏んで行われた法的拘束力のあるものではなさそうで、あるいはフランス語から英語に翻訳する際の誤りかもしれぬので、「呼びつけた」と訳しておいた。
どうやら、問題の記事はこれらしい。
Station hertzienne militaire de Pierre-sur-Haute - Wikipédia
ちなみに、記事は実際には消されていない。これはWikipediaは更新履歴をすべて保存しているし、管理者一人が消せる範囲は限られているためだ。
というわけで、記事は一時的に見えなくなっただけであり、すぐに復帰され、しかも今回のDCRIの検閲事実や、記事の内容のどこかに軍事機密を含むという記述まで追加されてしまった。さらに、記事に対応する他言語版が急速に増えつつある。多くの言語で、作成日時が、Wikimediaフランスが抗議声明を発表した以降の2013年4月6日以降の日付になっていることから、この事件を受けてから作成されたのだろう。
Redditで皮肉られているように、DCRIが次に規制すべき記事はストライサンド効果 - Wikipediaだろう。
追記:
ZDNetの記事によれば、該当のWikipediaの記事は、公開されているフランス軍人へのインタビュー動画やその他の公開情報をソースにして作成されており、Wikipediaの記事は単に散らばっている情報を集めただけに過ぎないという。
2013-04-08追記:
ピエール・シュール・オート軍用無線局 - Wikipedia
日本語版の記事も追加された。どうやら英語版からの翻訳のようだ。
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