2013-09-21

クッキー・クリッカー:リセットのループ

この話は本の虫: クッキー・クリッカー物語の続編である。

本の虫: クッキー・クリッカーについて
本の虫: ババア補完計画
本の虫: クッキー・クリッカー物語
本の虫: クッキー・クリッカー:リセットの効果

クッキーで宇宙を支配した年老いたオスのエゾエは、別宇宙から現れたセールスマン、メフィストフェレスと契約して、意識だけはそのままに、昔の状態の宇宙に移動した。これは、クッキーに魅せられた知的生命のオス、エゾエの愛と勇気と感動の物語である。

2週目

エゾエが契約書に署名捺印したその刹那、世界が変わった。エゾエは周りを大勢のオス達とメス達に囲まれていたのだ。

「おい、エゾちゃん、いったい何をしようっていうんだ」
「そうだエゾエ。お前が何か重大なことを発表したいというから、こうしてお友達や親戚一同に集まってもらったんだぞ」

エゾエはこの場面を知っている。どうして忘れられようか。この場所、この時間は、まさに若いエゾエが、クッキーを焼くと宣言した歴史的な刹那なのだ。気がつけば、自分の体は、当時の若い体になっている。エゾエは大きく深呼吸して、口を開いた。

「うむ、よくぞ集まってくれたわい」

周りのオス達とメス達は、エゾエが年齢に不釣り合いにも、ジジイのように話すのに、怪訝な顔をした。そして、その怪訝な顔は、エゾエの次の発言で、さらに怪訝になった。

「己はこれからクッキーを焼こうと思う」

オヤジとオフクロは何と言うべきかわからないといった顔でお互いに顔を見合わせ、親戚一同は無言で立ち尽くしていた。友達もあっけにとられた顔をしていた。ババアは、どうしたわけか、意味有りげな顔でうなづいていた。

「クッキーって、エゾちゃん、家でも建てるのか?」と友達がたずねた。無理もない。当時、まだクッキーとは食べるものではなく、家を建てるのに使うものだったのだ。
「いや、食べるために焼くのだ」とエゾエは言った。

周囲のオス達とメス達は皆笑った。クッキーを食べるだと? 気は確かか? なにか悪いものでも拾って食べたんじゃないか? と周りは口々に呟いた。

ああ、そうだ。これだ。すべてはここから始まったのだ。当時、己はここでクッキーを作ったが、そのできがあまりにもひどく、誰も食べようとはしなかったのだ。だが、今は違う。己には知識がある。本物の知識がある。一人生に相当する知識がある。

エゾエは慣れた手つきで、小麦粉とバターとミルクとタマゴを混ぜあわせた。周囲は皆、引きつった笑顔を浮かべて、エゾエが生地をこねるのをみていた。

みろよ、「小麦粉」と「バター」と「ミルク」と「タマゴ」だぞ。どんなものができるかわかったもんじゃない。ほら、きっとあれだよ。毎晩ゴミをあさりにくるアライグマのための毒団子でも作るんだよ。そりゃあいい、あいつにはだいぶ迷惑していたからな。毎晩ゴミを撒き散らしやがって。

と、周囲は口々に罵り合った。

エゾエは出来上がったクッキー生地を小さくちぎって丸め、オーブンに入れた。周囲のオスメスは、物陰に身を隠し、爆発はすまいかとハラハラしながら、成り行きを見守った。

ほどなくして、エゾエは焼きあがったクッキーをオーブンから取り出した。60枚ほどのクッキーが焼きあがった。はてな。たしか焼いたクッキーは30枚ほどだったはず。なぜ倍近くに増えているのだろうか。まあいい。きっと記憶違いだろう。

焼きあがったクッキーを前に、両親、親戚、友達の一同は、みな不安げな様子で、お互いに顔を見合わせたまま、誰一人として手を付けるものはいない。無理もない。いくら香ばしい匂いがするからとはいえ、クッキーなのだ。いまだ、食べるものであるとは認められていないものなのだ。普通は、家を建てるのにつかうものなのだ。その中、一人の手がクッキーに伸びた。

「おやあ、だあれもたべないというのかい。じゃあ、あたしがいただこうかね」

ババアであった。

ババアは歯もない口で、クッキーをバリボリと噛み砕き、十分に咀嚼して飲み込んだ。

「おやまあ、こいつぁ、うまいじゃないのさ。おや、だれもたべないというのかい。じゃあ、あたしがみんないただこうかね」

ババアが食べたことに触発されて、皆の手がクッキーに伸びた。食べたものは口々にその美味をたたえた。成功だ。

ただちに、エゾエは近所のババア達を動員して、クッキーの生産にあたらせた。不思議なことに、ババア達の超スローモーな動きであっても、クッキーの生産速度は予想以上であった。これが、青天上のチップの効果だろうか。

カーソルは、残念ながら自由なカーネルであるUtenxがまだ書かれていないので、以前の効率は出せなかった。しかし、不思議な力で増加したクッキー生産速度のおかげで、わずか数週間で、エゾエは農場を手に入れた。この分ならば、工場や鉱山にも、時間はかからないだろう。エゾエは久しぶりに、クッキーの生地作りに精を出した。思いっきり動いても疲れない若い体というのはいいものだ。

数年後、ある大豪邸の前に、テレビカメラとリポーターが立っていた。リポーターがしゃべりはじめた。

「はい、毎度おなじみ、世界の富豪をご紹介のお時間です。レポーターは私、コランダム・ロウ。今日はここ、今では世界中で知らないものいない最年少の大富豪、クッキー王の大豪邸の前に来ています。いやーすごいですねぇ。さすがクッキー王。こんな建物は誰にも建てられませんよ」
「この家は全部クッキーでできているんですって。いやー信じられませんね。信じられないといえば、この豪邸は、以前は別の場所に建てられていたんですって。なんでも、ご近所さんとケンカをして、建物のクッキーを一枚ずつバラしてここに持ってきて、また組み直したそうですよ。いやーさすがに大クッキー持ちのやることは違いますねぇ。私もおこぼれに預かれるかな、なんちゃって」

屋敷の使用人たちが、門の前に集まってきた。どうやら、クッキー王の出迎えのようだ。

カートゥーンのように長いリムジンから、生意気そうな青年が降り立ってきた。豪邸の門の前に並んだ使用人と、すれ違いざまにハイファイブしながらこちらに向かってくる。

「イヨウ、イヨウ、イヨウっと、おいどうした」

クッキー王エゾエは、レポーターの前で手を上につきだしたまま固まっている。側にいた執事がレポーターに耳打ちした。

(ハイファイブしてください。ご主人様は、帰ってくるたびにハイファイブをご所望されるのです。うまく行かないと機嫌を損ねてしまいます)

言われて、レポーターは手をつきだし、ハイファイブをした。

「イヨウっと。よーギルバート、おめー今日もイケてねーな」と、エゾエは耳打ちした執事に向かってどなった。
「まったくでございます」と、ギルバートと呼ばれた執事は答え、深くお辞儀した。

一行は豪邸の中庭に歩いて行った。中庭には、巨大なババアの石像が建っていた。

「まことに申し訳ございません、ご主人様。お言いつけ通りおばあさまの石像はこの通り完成致しましたが、まだ目を赤く光らせ、口からシロップの噴水を出す仕掛けが完成しておりませんので、今しばらくご辛抱の程を。でもどうかご安心ください。今週の女王陛下の御幸までには、必ずや間に合うことでございましょう」と執事が申し訳なさそうに言った。
「マジカッケー、町のひとつやふたつぐらいはぶっ潰せそうだぜ」
「まったくでございます。いつもながらご主人様の発想には・・・驚かされます。わたくしめなどは、さきほどようやく驚きから立ち直ったばかりでございます。この・・・まるでレイピアのようにするどく胸を指す衝撃から」と、執事は丁重にへりくだりながら答えた。
その時、ちょうど中庭は、生身のババアが歩いてきた。ババアは自分をかたどった巨大な石像を見上げ、満足そうにうなづいて、歩き去っていった。

「まったく驚きですね。クッキー王はすでに全世界のクッキー工場とクッキー鉱山を独占しているのです。さて、そんなクッキー王の次の目標とは何でしょう?」と、レポーターがたずねた。
「次の目標? 宇宙に決まってんじゃんベイベー」と、クッキー王エゾエが答えた。

それはエゾエが98歳になったある日のことであった。突如として、虚空から一人の男が現れた。エゾエはこの男を知っている。80年前、自分を昔の状態の別宇宙に送ったセールスマン、メフィストフェレスだ。

「おお、お前さんか。久しぶりじゃな」と、エゾエは言った。
メフィストフェレスが答えた、「覚えていてくださいましたか。そうです、私です。今日はあなたをお迎えにやって来ました」
「お迎え? まるで死神みたいなことを言う」とエゾエが言った。
「実際そうなんです。あなたは、今日死ぬのです」とメフィストフェレスは、今日これからエゾエの身に起こる不運な事故について語りはじめた。

若くして成クッキーとなったクッキー王エゾエは、その後、宇宙開発や錬金技術といった、すでに知っている知識をどんどんと実現していき、反物質変換装置を何百個も建設した。今はクッキーにちなんだ様々な技術を、遊びとして研究している。今日は、クッキー生地の発酵の際に発生する熱を利用して空を飛ぶ飛行機の試乗をする予定だった。飛行機は問題がないのだが、エゾエは操縦中にクッキーを食べることに熱中して、操縦を誤って墜落するのだという。

「では、クッキーを我慢すればいいのか?」とエゾエはたずねた。
「それがダメなんですよ。あなたはどうしても、今日死ぬ運命にあるのです」とメフィストフェレスが答えた。

「そこでご提案なんですがね。もう一周して見ませんか? 青天上のチップを増やしてあげますよ」

もう一周か。確かに、最近はクッキーの生産量が伸び悩んでいたことだし、悪くない。青天上のチップで生産量の底上げをできるし、また一からやり直すのも面白い。

「いいだろう。また送ってくれ給え」とエゾエは言った。

3週目

「おい、エゾちゃん、いったい何をしようっていうんだ」
「そうだエゾエ。お前が何か重大なことを発表したいというから、こうしてお友達や親戚一同に集まってもらったんだぞ」

気がつくと、エゾエは大勢のオスメスに囲まれていた。手のしわもなくなっている。再び戻ってきたのだ。そして次に言うことは、

「おお、よくぞ集まってくれた皆の衆。ワシがクッキーを焼いてやるから、存分に食べるがよい」

クッキーを食べろと言われてあっけにとられる周囲をよそに、エゾエは早速クッキー作りにとりかかる。クッキー生地をこねていると、ぽつり、ぽつりと、空から何かが降ってきた。

ババアが素早く手を伸ばして、グワシッと空から落ちてきた何かを空中でつかむ。なんと、クッキーであった。ババアは、歯もない口で、クッキーをバリボリと音を立てて食べ始めた。

なぜまだクッキーが焼きあがらない先から、クッキーが虚空に出現するのか。それは、青天上のチップと整合性を取るために、宇宙の法則が書き換わったからである。青天上のチップはクッキーの生産数にかかる係数である。しかし、一度の生産で得られるクッキーが占める空間には、限りがある。まるで魔法のようにクッキーの生産数を増加させる青天上のチップと整合性を取るために、まだクッキーが焼きあがる先から、クッキーの一度の生産が、秒単位で平均化されて、出現するようになるのだ。空から降ってくるクッキーを元手に、エゾエはまたたく間に反物質変換装置まで購入し終えた。そして、またメフィストフェレスが現れる。

30週目

「おい、エゾちゃん、いったい何をしようっていうんだ」
「そうだエゾエ。お前が何か重大なことを発表したいというから、こうしてお友達や親戚一同に集まってもらったんだぞ」

また、おなじみの光景だ。しかし、これからのエゾエのセリフは、おなじみではない。

「うむ、皆、家の中に避難するのじゃ」

皆を家の中に避難させたエゾエは、手を伸ばして、人差し指をカチッと動かす。すると見よ。天からおびただしい数のクッキーが、雨あられと降り注ぎ、庭にクッキーの山を築くではないか。呆然と家の中から外を眺める友達と親戚一同。ババアは、クッキーの山に埋もれながら、クッキーをむさぼり食っていた。

286週目

「おい、エゾちゃん、いったい何をしようっていうんだ」
「そうだエゾエ。お前が何か重大なことを発表したいというから、こうしてお友達や親戚一同に集まってもらったんだぞ」

また、おなじみの光景だ。エゾエは、悲しそうな顔をしながら、語り始める。

「みんな、今までありがとう。どうか僕のことを忘れないで欲しい。僕は世界を破壊するつもりはなかったんだ。それだけは、どうか信じてほしい」

ひとしきり語り終えたエゾエは、壁に面積が正しい図法で描かれた世界地図を貼り付け、ダーツを投げる。そして、ダーツが刺さった最初の陸地まで移動する。色々と考えた結果、これが一番公平な方法だと思うからだ。

ダーツの場所に着いたエゾエは、高らかと手を天にかざし、指をカチッと動かす。たちまち周囲が真っ暗になる。空中にあまりにも大量のクッキーが出現して、太陽の光を遮っているのだ。クッキーは半径数百kmにわたってうずたかくつもり、周囲の文明を完全に破壊する。移動について来たババアが、さっそくクッキーの消費にとりかかる以外は、半径数百kmに、エゾエ以外の目に見える動植物は生き残っていないのだ。

これから、エゾエは、このクッキーを使ってロケットを開発し、その後一生を、別の無人の惑星で指を動かしながら過ごすことになるのだ。

このエゾエの行動は、エゾエの住む惑星の各国から批難を受ける。なぜ事前に警告しないのだ。クッキー爆撃が起こると知りつつ指をカチッと動かすのは人道上の罪である。テロリストだ云々。エゾエはもうすでに何週も、事前の警告をしてきた。しかし、名もない一個の子供の発する警告を、世界が真に受けるわけがない。ましてや、その警告というのが、「自分が指を特定の方法で動かすと半径数百kmがクッキーに覆われるので、避難しろ」というのでは。そのため、今ではエゾエは、わざわざ誰にも本気にされない警告を出すのをやめて、ダーツの刺さった場所でロケット開発に必要な最初のクッキーを生成するようになったのだ。

このエゾエの行動に対し、軍事行動を起こす国家も出てくる。しかし、そのような軍隊と国家はすべて、エゾエの指の一振りで、分厚いクッキー地層の下に埋もれて滅亡していった。ああ、なぜ人は争いをしたがるのか。エゾエは、ただ一刻も早くこの惑星を脱出して、生涯を無人の惑星で、迷惑をかけずにクッキーを生産したいだけなのに。ああ、何故、世界を支配する力が、こんなにも無欲なエゾエに宿ったのか。エゾエには惑星を支配するという野望はない。ただ、クッキーを焼いていたいだけなのだ。

エゾエの肉体の寿命が尽きる寸前に、必ず、メフィストフェレスはやってくる。そして、エゾエにまた次の周回プレイを進めるのであった。

「もう、十分なんじゃないだろうか。己は、もう十分に生きたと思うのだ」と、エゾエは力なくつぶやく。
「いえいえ、そんなことはありません。まだまだクッキーは焼けます。さあ、今なら青天上のチップをさらにおまけして差し上げますよ」
「分かった」
エゾエは再びリセットを行う。

たちまち、あたりが一変する。何もない緑色の背景色の空間にいる。浮かんでいるのか、立っているのか、落ちているのか、よくわからない。あたりに、何やら文字が浮かび上がり始める。

アポカリプスキターwwww、黙示キターwwww
アポカリプスキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
見ろよ、あの絶望的な顔wwww
コ・ロ・セ! コ・ロ・セ!

これは一体、何が起こっているというのか。そこにメフィストフェレスが現れ、この宇宙のおぞましい仕組みを暴露するのであった。

この宇宙は、もともと五流大学の学生、メフィストフェレスが、卒論をでっち上げるために作り出したシミュレーション上の宇宙であるが、その生成された奇抜な宇宙の法則と、その宇宙でひたすらクッキーを焼き続ける主人公の存在が面白く。しばらくイテレーションを続けていたそうだ。そのうち、この宇宙をリアルタイムでストリーミング再生することを思いついた。さらに、コメントをリアルタイムで動的に流す仕組みをいれたところ、爆発的な人気を引き起こしたのだ。

シミュレーション上の知的生命マジアワレwwwwww
大草原不可避wwwwww圧倒的不可避wwwwww
お前ら草生やすのやめろよwwwwwwwwwwww刈り取りがめんどくさいだろwwwwwwwwww
さあ、さっさと殺そうず

メフィストフェレスの話は続く、「そういわけで、この周回でのあなたの活躍はここまでのようですね。でもご安心を、次のあなたは、きっともっとうまくやるでしょうから。さあ、お待ちかねの死亡ショーの始まりです。今回はどんな死に方がいいでしょうか!」

( ゚∀゚)o彡゜ギロチン! ギロチン!
↑ギロチンはもう30回ほどやっただろwww安楽死させてやれよwwww
やっぱりクッキーを喉に詰まらせるとかクッキーで圧死するとかが本望なんじゃねーのかなwwwwww
↑それはもう100回以上やって秋田つまらん
さっさと殺れよ。おれ次の回みてーんだからさ

3553週目

「おい、エゾちゃん、いったい何をしようっていうんだ」
「そうだエゾエ。お前が何か重大なことを発表したいというから、こうしてお友達や親戚一同に集まってもらったんだぞ」

また、おなじみの光景だ。一体何度目だろうか。エゾエの次のセリフも、もう何回言ってきたのだろうか。過去の記憶は靄がかかったようにぼんやりとしていて、思い出すことができないでいる。ただ、彼らは自分と親しい者たちであったとは思う。たぶん。

「サヨナラ」

エゾエは、必ずこのセリフを言う。別れを告げることは、これから起こるべきことへの、せめてもの謝罪の言葉であると思うからだ。

エゾエは指をカチッと動かす。たちまち、宇宙に莫大な質量のクッキーが現れ、自重によって内側に落ち込み、ブラックホールと化す。エゾエはその様子を、宇宙空間に漂いながら眺めていた。指をカチカチ動かしながら眺めていた。イベント・ホライズンのギリギリの縁で、ババアが中心に向けて落ち込むクッキーをむさぼり食っている。指をカチカチ。そして、いずれメフィストフェレスが現れる。

「さあ、契約を。さあ、次の周回プレイを。さあ、さあ」
「ああ」

たちまち、あたりが一変する。何やら工場らしき場所だ。下には溶けた金属が鈍い光を放っている。メフィストフェレスによってこの宇宙の真理が告げられる、そして、

「さあ、今回もやって来ました。お約束の名場面、エゾエを殺しまSHOWのお時間です」
「さて、エゾエさんにはですね、サムズアップして、『アスタ・ラ・ビスタ ベイビー』とつぶやきつつ、溶鉱炉に沈んでもらいましょう」

空間に文字が流れる。

ビシッ m9(`・ω・´) アスタ・ラ・ビスタ ベイビー!
ビシッ m9(`・ω・´) サヨナラ ベイビー!
地獄で会おうぜ、ベイビー(@益@ .:;)ノシ
さっさと失せろ、ベイビー(@益@ .:;)ノシ
また会う日もあるかもだぜ? ベイビーを?
なっちは(・∀・)カエレ!!

エゾエは言葉を失う。メフィストフェレスがたたみかける。

「いやー、もう千回以上お約束でして、変えたくても変えられないんですよ。あなたが悪いんですよ。毎回毎回、サヨナラなんていうから」
「あんまりにもお約束になっちゃって、この瞬間に、みんなが決まってコメントするので、サーバー落ちるかもとヒヤヒヤものですよ」

「あ、そうだ。次の周回がどうなるか、本人に見てもらうというのはどうでしょうか。さあ、3554週目の実行です」

3554週目

「おい、エゾちゃん、いったい何をしようっていうんだ」
「そうだエゾエ。お前が何か重大なことを発表したいというから、こうしてお友達や親戚一同に集まってもらったんだぞ」

エゾエは答えない。何も言わない。もう別れの言葉を告げることすら面倒だ。エゾエは指をカチッと鳴らした。

3553週目のエゾエを殺しまSHOW

メフィストフェレスは言葉を失っていた。空間にも、しばらくコメントが流れなかった。やがて、コメントが流れだした。

おいおい、何やってんだよ
マジシラけるし・・・なんでいわねーんだよ
ありえねー、マジありえねー
これはやめようぜ。数回前のコピーを使おうぜ。

「はて、これは困りましたねぇ。お約束を破ってしまった。どうしましょうかねぇ」

エゾエにはどうでもいいことだった。己より高い存在のものが、この宇宙全体を見世物にしている。彼らの気まぐれで、宇宙が実行されているというのか。

エゾエは、表示されている次の周回の自分の映像を眺めた。3554週目のエゾエは、無表情で指をカチカチ動かしながら宇宙空間を漂っている。そして、何気なしに指で円を描き、ポータルを出現させた。ポータル、時空を超えて別宇宙をつなぐ穴。まてよ。

続く

5 comments:

  1. なんか超展開になってきましたねぇ。
    次回、超分岐。WKTKです。

    と、煽っておきます。

    しかし、5流であっても宇宙創造できるとは悪魔の世界は恐ろしいですね。

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  2. いい感じに盛り上がってきましたね。
    ただプログラムネタとかのこのブログらしい成分がだいぶ減ってしまったのが残念。
    あなたのブログなのですから、あなたがやりたいものを書くべきかと。

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  3. C++11 本はいつ出るのかなぁ

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  4. とても楽しく読んでますw プログラマネタを全て拾えないのが少し残念ですけど、続き楽しみにしてます。

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  5. これはやばい
    スケールとゲームのバランスがすごい

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