BitKeeperは最初の分散ソース管理システムである。今後はオープンソースのApache 2.0ライセンスとして提供される。
BitKeeperは高速で、エンタープライズレディな、分散ソースコード管理であり、大きなプロジェクトから小さなプロジェクトまでスケールする。
「最初の」という主張には語弊があるが、DVCSの歴史を考えると、あながち間違いでもない。
DVCS(分散バージョン管理システム)を最初に実装したのは、Sun WorkShop TeamWareである。
Sun WorkShop TeamWare - Wikipedia, the free encyclopedia
これは名前通り、Sun Microsystemsによって開発されたDVCSで、その主要な開発者として、Larry McVoyがいる。
Larry McVoy - Wikipedia, the free encyclopedia
Larry McVoyはその後独立してBitMover社を立ち上げ、BitKeeperというDVCSを開発する。BitKeeperは2005年までLinuxカーネルの開発に使われていた。
BitKeeper - Wikipedia, the free encyclopedia
Larry McVoyは、1990年台前半に、Sun MicrosystemsはSunOSをオープンソース化すべきであると主張していた。
The Sourceware Operating System Proposal
もし実現していれば、Linuxは今日の興隆を見なかったかもしれず、我々はSunOSを使っていたかもしれない。
そもそも、Sunの生い立ちたるや、IBMのメインフレームのような巨大で高価なコンピューターに対して、より小型で安価なUnixワークステーションを販売して成功したというものだ。とすれば、次は個人でも所有できる、さらに小型で、さらに安価なPCが流行するというのは、自身の成功体験から予測できたはずである。PC用のハードウェアを売る商売でSunは儲けられたはずであり、OSは自由にできたはずだ。我々はIBM PC互換機ではなく、Sun PC互換機を使っていて、WindowsやGNU/LinuxのかわりにSunOSを実行していたかもしれない(Sunのユーザースペースツールは使いづらいのでGNUはまだ残っていたかもしれない)。
にもかかわらず、Sunは近視眼的な判断によってSunOSをオープンソースにはしなかった。
さて、1993年にSunOSのオープンソース化を主張したLarry McVoyは、残念ながらその主張を実践しなかった。BitMover社を立ち上げてBitKeeperを開発したが、BitKeeperはプロプライエタリであった。2005年まで、Linuxカーネルの開発に使われていたが、無償版で提供されていない機能を実装したLinuxカーネル開発者であるAndrew Tridgellの行為に激怒してコミュニティへのBitKeeperの提供を辞めた。
そして、gitが生まれることになった。gitは圧倒的な速度でDVCS市場を独占していき、BitKeeperなど誰も相手にしなくなった。そして今日に至る。
残念ながら、BitKeeperのオープンソース化は、10年遅かった。もう手遅れだ。
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