An empirical study of working speed differences between software engineers for various kinds of task
プログラマーの作業速度には差がある。作業速度が早いことだけをもって優秀なプログラマーとは限らない。そのソフトウェアの保守性が悪いかもしれないからだ。しかし、やはり作業速度の早いプログラマーは優秀と見られがちだ。特に、転職界隈では、優秀なプログラマーは、その作業速度の速さを形容して、「ニンジャ」とか「10倍プログラマー」などというタイトルで喧伝されている。さて実際には、プログラマーの作業速度は、全体としてどの程度違うのか。
プログラマーの作業速度が早いものと遅いものの比は、従来、28:1であると言われてきた。この数字には根拠となる研究がある。1967年にGrantとSackmanが公開した論文[1]で、実験をした結果、28:1であると結論しているからだ。
[1]: "E. Eugene Grant and Harold Sackman. An exploratory investigation of programmer performance under on-line and off-line conditions. IEEE Trans. on Human Factors in Electronics, 8(1):33–48, March 1967."
問題は、その実験内容というのが、たった12人の経験豊富なプログラマーの被験者に2つの問題を解かせただけなのだ。
たったの12人の結果など、真の結果からかけ離れている可能性も大いにある。しかし、この論文はあまり批判されることがなく、28:1という数字のみが独り歩きしてしまい、今日の10倍プログラマーなどという都市伝説を生み出している。
この論文は、十分なサンプル数を集めてみたところ、28:1という比を否定した。
そもそも、プログラミングには様々な種類の作業がある。この論文では、プログラミングを以下の作業に分類した。
- 保守(既存のコードの理解と変更と拡張)
- 理解(例、特定の質問に応えるなど)
- テスト/デバッグ(テストとデバッグ)
- レビュー(誤りがないかの確認)
- プログラミング(設計、実装、テスト、デバッグ)
- 設計
- コーディング(実装)
分類の判断に迷う場合は、プログラミングか保守に分類した。また、純粋なコーディング単体のみの作業はまれなので、分類上はプログラミングになっている。
結果としては、作業の種類によって、作業速度のばらつきには差が見られた。テスト/デバッグやプログラミングでは差が大きかったが、保守や理解では差が小さかった。レビュー作業の時間は差がとても小さかった。
結論として、プログラマーの作業速度の差は、4:1を超えることはめったにない。バラつきの大きい作業においても、大抵は2:1から3:1であった。
体感では、こういう短期間の実験では、乱数が相当に左右するのではないだろうかと思う。運悪くtypoをして何時間も悩むことがよくあるために。
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