保元物語、為義最期の事
山野の獣、江河の鱗に至るまで、命を惜しむ慣らいなり。まして、人間には、命に過ぎて思ふ宝は何かある。独身なる犯科人の思い置く事なきだにも、手足をもがれ、形をばやつさるれども、一日の命を賜べとは降は乞ふ。況や、為義法師、争でか命を惜しまざらん。
何か、況やの部分で違和感がある。為義は命を惜しまなかったのだと読めて仕方がない。と思っていたら、注釈として、曰く、「況やは、……をや、……や、で結ぶ用法が本来であるが、中世になると、必ずしもそれは守られなくなる」とあった。そうだ、況や……と始まれば、……をや、……や、で終わるのが普通だ。違和感はこれだった。
司馬遼太郎の、この国のかたちの十三世紀の文章語を思い出した。
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