Google Waveが何なのかというのが、非常に説明しづらい。Google Waveは、チャットにもメールにも掲示板にもWikiにもブログにも使える。しかも、これらがすべて、Waveという単一の仕組みで行える。
では、何が既存のサービスと違うのか。私が思うに、リソースを消費していると意識させない点にあると思う。
メールは、一度送ってしまうと、後から修正出来ない。修正したければ、別のメールを送るしかない。掲示板やブログは、後から書き換えられる機能を提供している実装もあるし、Wikiは、書き換えを前提としている。しかし、これら従来のプロトコルはどれも、書き換えという処理が、重い操作であるという印象をあたえる。
ここで、重いというのは、単にクライアントやサーバーのCPU時間やメモリ、ディスク容量を消費するという、具体的な話ではない。人間の意識として、リソースを食う、重い処理なのだ。
それゆえ、人は書き換えを避けたがる。記述時に、しっかり考え込んで、十分に問題のない文章を書く。後から書き換えるというのは、コストがかかるという意識があるからだ。
Google Waveでは、それがない。すべてはwaveという概念で扱われるが、自分のwaveは、いつでも書き換え可能である。また、自分が所属していて、書き込み権限のあるWaveも、いつでも書き換え可能である。しかも、書き換えは、実に自然に行うことができる。
従来のプロトコルでは、こうだ。まず、「編集」ボタンを押して、書き換える意志があることを示し、書き換える状態に移行する。編集し終わったならば、「編集の適用」ボタンを押して、編集し終わった意志を示さなければならない。
Waveでは、それがない。どの発言でも、単に編集しようとさえ思えば、いつでも、すぐに編集できる。しかも、他人の発言まで、自由に編集できる。これは、すばらしい。
また、従来のプロトコルでは、容量というものを、常に気にしなければならない。私のGmailには、つねにこのような言葉が表示されている。
You are currently using 99 MB (1%) of your 7420 MB.
つまり、容量には、制限があるということを、常に認識させられるのである。しかし、Gmailの容量は、常に増え続けている。私は有料オプションを使っていないが、私のGmailの利用では、消費量よりも、増加量の方が速い。つまりこれは、Gmailの容量増加が、今後も、現在の増加量で続くならば、私は一生、メールの容量に困らないことを意味する。
たとえ、そうだとしても、やはり、容量に制限があるというのは、気になる。たとえ、テラバイトでもペタバイトでも、制限は制限だ。
これは、メール以外のプロトコルにも言える。掲示板に、延々とスレッドを立てるのは、SPAMである。Wikiを、一文字づつ修正していくのは、SPAMである。内容の修正のため、メールを延々と送り続けるのは、SPAMである。たとえ、SPAMの意図がなかったとしても、たとえ、必要な編集であったとしても、これらはSPAMとみなされてしまう。
Waveには、それがない。Waveでは、最大容量などというものは、表示されない。自分は今、何MBの容量を消費していて、後何MB使えるのかということは、表示されない。また、一度書いた発言を、何度編集しようと、全く問題ない。
たとえ、現実的に使いきれない容量であったとしても、たとえ、実際に消費されるのは、サーバー側のリソースであり、クライアントには影響がなかったとしても、容量に制限があるという認識は、人をして積極的な利用を躊躇させる。Google Waveには、それがない。
もちろん、実際には制限がある。たとえば、アップロードできるファイルサイズは、ひとつにつき20MBまでである。ひとつの発言に、何MBのテキストを書けるかというのは分からないが、所詮コンピューターリソースが有限である以上、制限はある。しかし、ファイルをいくつまでしかアップロードできないとか、アップロードできる総容量が定められているなどということはない。したがって、制限を感じにくいのである。
制限を感じさせないというのは、非常に重要である。私は制限が嫌いだ。わたしがはてなダイアリーを使わない理由は、文章が勝手に改変されて、キーワードリンクが追加されるということもあるが、Javascriptが使えないということも大きい。いまどきJavascriptも使えないというのは、アホくさい制限にほかならない。
Twitterも嫌いだ。たったの140文字しか書けない。まあ、Twitterに関しては、この制限があるからこそ、むしろ逆に、その制限の中で工夫が生まれ、独特の文化が発展しているのだろう。それにしても、URL短縮化サービスは、邪悪だ。
Google Waveは、久しぶりに衝撃を受けたWebサービスである。これは間違いなく世界を変える。
ただし、Google Waveが、既存のプロトコルを駆逐するかというと、そうでもない。メッセンジャーが普及した今も、IRCは未だに広く使われている。MLも現役で使われている。2ちゃんねるは、非常に制限の強いサービスだが、衰える気配がない。あくまで、新しい方法にすぎない。
ふと思いついたのだが、もし私が、Google Waveの宣伝をせよと言われたら、十人ぐらいで、ひとつのWaveで遊んでいる光景をキャプチャして、Youtubeで公開するのが一番いいと思われる。次々に発言が現れ、他人のタイピングがリアルタイムで表示され、他人の発言であろうと編集できるというこの機能を使って、編集合戦をして遊んでいる光景を動画に撮れば、非常に面白く見えるはずだ。結局Waveの良さは、使ってみなければ分からないのだから。
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