著作権侵害を幇助したとの疑いをかけられていたWinny開発者の47氏(最初に2chに開発宣言をしたレス番が47であった)こと金子勇が、無罪になった。当然である。ソフトウェアを開発、公開しただけで犯罪になってはたまらない。
ただし、Winnyはその仕組みからして、問題がある。ネットワーク内にたった一人の著作権侵害ノードがあるだけで、全員が推定著作権侵害になってしまうのだ。
Winnyの機能に、中継というものがある。これは、ファイルをアップロードするノードとダウンロードするノードの間にたってデータを横から横へ流す、いわばプロキシとなる機能である。この中継機能は、ユーザー外としていないデータまで中継する可能性がある。さらに、Winnyはキャッシュという仕組みによって、中継されたデータを保持し、その後も送信可能な状態におく。これが問題となる。
もし、中継機能がなければ、すなわち自分が明示的にダウンロードを選択したデータのみ、アップロードすることになる。これは、取得と公衆送信に、著作権上問題のないデータであれば、全く問題ない。ただし、中継という機能によって、意図しない著作権侵害かもしれないデータをダウンロード、アップロードしてしまう。つまり、Winnyネットワーク上にひとつでも悪意あるノードがいて、その著作権上問題となるデータをダウンロードしようという別のノードがいれば、自分が中継する可能性がある。よって、Winnyネットワーク内にひとつでも悪意あるノードがあれば、全ノードが推定有罪になってしまう。Winnyネットワークへは誰でも参加できるので、当然問題となる。
当時取るべきだった方法は、この問題を認識して、修正するように働きかけることだったのだ。それを、著作権侵害幇助などというどう考えてもおかしい理由で逮捕、起訴して、無罪判決まで七年もかける。問題のソフトウェアは修正されないまま放置されている。Winnyネットワークは中央管理サーバーを持たないので、全世界に核による絨毯爆撃でもしないかぎり、止められはしないというのに。これだから日本からはイノベーションは生まれない。
とはいえ、もし当時逮捕がなかったとしても、Winnyプロトコルが標準規格になるのは無理だっただろう。本当に普及させたいならば、まず仕様を文章で公開し、リファレンス実装をオープンソースで公開すべきだったのだ。まあ、あの当時はまだこの分野の夜明けのようなものだったので、似たようなプロトコルが乱立した。今となっては、Winnyプロトコルは、古びた時代遅れのプロトコルと言わざるを得ない。そもそも、ファイル共有自体に、新鮮な面白みもない。あの当時と比べて、ハードウェアははるかに進化した。ファイル共有程度であれば、別にP2Pを用いなくたっていいのだ。Dropboxのようなサービスが、当時よりはるかに安価で提供されている。もっとも、日本ではオンラインストレージは違法だというトンデモ判決がでているのだが。
では、今注目すべき技術は何かというと、やはりNamecoinだろう。合衆国でSOPAが議論されている今、中央管理のDNSへの信頼性が揺らいでいる。本来、名前解決のサービスに検閲や規制などがあってはならないのだ。名前解決というのは、著作権侵害や犯罪とは何の関係もないからだ。Namecoinは、ドメイン名の名前解決を、Bitcoinと同じ方法で行うものである。すなわち、P2Pで中央管理サーバーを持たず、信頼性が計算力により保証されたシステムである。
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