2012-02-07

著作物の定義

たまたま、著作物について面白いニュースが二つ会ったので紹介する。

You Can’t Copyright Porn, Harassed BitTorrent Defendant Insists | TorrentFreak

アメリカ合衆国で、ポルノを違法ダウンロードした者が著作権侵害で訴えられたもので、反論として、そもそもポルノには著作権は認められないと主張している。

これは、合衆国の憲法が、著作権について、

To promote the Progress of Science and useful Arts, by securing for limited Times to Authors and Inventors the exclusive Right to their respective Writings and Discoveries

科学と有用な技術の発展を促進するため、その作者と発明者に期間を限定した排他的な権利を保証する

としているため、そもそもポルノはこの憲法の定義に当てはまらず、故に著作権は主張できない。著作権が主張できないのだから、著作権侵害など存在しない、という論法らしい。

もっとも、なぜか違法ダウンロードをしたとされている日時が、問題の映画の公開一ヶ月前で、そもそもダウンロード不可能であったらしい。

ちなみに日本ではどうかというと、著作権法では、

著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

とされている。日本では、憲法で著作権を規定しているような記述がちょっと見つからない。著作権法に著作物が規定されている。

これを考えるに、「思想か勘定を創作的に表現したものではない」か、「文芸、学術、美術、音楽の範囲に属さない」のであれば、それは著作物ではないということになる。

さて、わいせつ物は美術だろうか。四畳半襖の下張事件の上告棄却の判決文によれば、

なお、文書のわいせつ性の判断にあたつては、当該文書の性に関する露骨で詳細な描写叙述の程度とその手法、右描写叙述の文書全体に占める比重、文書に表現された思想等と右描写叙述との関連性、文書の構成や展開、さらには芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の程度、これらの観点から該文書を全体としてみたときに、主として、読者の好色的興味にうつたえるものと認められるか否かなどの諸点を検討することが必要であり、

と書いてある。「さらには芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の程度」ということは、わいせつ物は芸術性、思想性によって緩和されるものらしい。ということは、わいせつ物自体には芸術性も思想性も認められないのではないだろうか。芸術性も思想性も認められないのであれば、わいせつ物、すなわちポルノは著作物ではないということになる。いや、これは言葉遊びだろう。わいせつ物が、その自身の芸術性、思想性によって緩和されるのだから、わいせつ物にも芸術性、思想性はあるはずである。

ただし、日本でわいせつ物だと認定されれば、それを頒布する行為は、刑法175条によって禁じられている。すると、同様な訴訟が日本であったとしても、わいせつ物に著作権が認められたとしても、わいせつ物であると訴えて、認められれば、相手も刑事罰を食らうのだろうか。わいせつ物であるかどうかというのは、裁判所が判定することである。なにも警察のOBが天下っている団体によって判定されるわけではない。あれはあくまでレーティングであって、わいせつ物ではないというお墨付きを得たわけではないのだ。なにしろ、警察がわいせつ物であるかどうかを判断してしまうのは検閲に当たる。わいせつ物の判断は裁判所によってなされねばならないはずだ。

ちなみに、この訴訟は、アメリカではお決まりの、「お前は著作権侵害をしたはずだ。今すぐ数千ドルを払えば訴えないでおいてやる」という、推定有罪の通告に対し、「そもそも俺はやってねーよ」と主張して反訴したものである。

Oracle sues Google for Java patent, copyright infringement

これは古いニュースだが、興味深かったので考えてみる。OracleはGoogleがJavaの著作権と特許を侵害したとして訴えている。

私の理解する所では、日本では、プログラミング言語を解説した文書や、実装には著作権が与えられるが、プログラミング言語自体には著作権は認められない。同様に、プログラミング言語自体の特許も認められない。日本から見ると、アメリカは不思議な国だ。まあ、Flashを参照するURLを記述するembed要素に特許が認められる国なのだから、なんでもありか。

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