闘会議2016のアナログゲームのインスト要員として2日間運営スタッフとして入っていたので、その感想を書く。
筆者は江添亮、ドワンゴにエンジニアとして雇われている。ドワンゴのボードゲーム同好会のメンバーでもある。今年の闘会議でも、アナログゲームは設置される。もちろんカタンもある。カタンのインストをするために運営スタッフとして参加した。
今回の闘会議には不安が大きかった。なにしろ、今回のアナログゲームエリアには、30卓ほど立てるという予定である。1卓にスタッフを2人配置するとして、60人必要になる計算だ。60人ものボドゲがインストできるスタッフをどこから集めてくるというのか。あまりにも無謀すぎる。私が一切関わっていない会社の企画するイベントが失敗するのは私の知ったことではないが、カタンのインストが失敗し、カタンに悪い印象を与える事態だけは、ガチのカタンプレイヤーとして見過ごすことはできぬ。そこで、カタンのインストのために運営スタッフとして参加した。
今回の闘会議では、ドワンゴのエンジニアには動員がかからなかったので、社内からはボドゲをインストできるスタッフがせいぜい5,6人程度しか出なかった。60人ものインスト要員をどうやってまかなうつもりなのだろうか。
私「そもそも必要なだけの頭数はいるのか?」
企画「5,60人ほどいます」
私「そのうちボドゲ経験があってインストができる人は?」
企画「3分の1ぐらい・・・コネで集めました」
私「残りは?」
企画「派遣バイトです」
嫌な予感しかしない。
ボードゲームの上手なインストは、ある程度のボードゲーム経験とインスト経験を必要とする。経験が全てではないが、最低限のボードゲーム慣れ、場慣れする必要がある。派遣バイトの中にボードゲーム経験のある人間がどのくらいいるだろうか。第一、どうやって募集しているのだ。「闘会議、アナログゲームエリアでボードゲームの解説と、場合によってはプレイヤーとしても参加して場を盛り上げてもらうお仕事です!」といった具体的な告知があれば、まだボードゲーム経験のある人間や、説明慣れしている人間が集まりやすそうではある。しかし、もし単なる「闘会議イベントの運営スタッフです!」程度の告知であったならば、イベントの運営スタッフ慣れしている人は応募するだろうが、ボードゲーム経験は望めそうにもない。
「で、バイトは前日のリハーサルに来るの?」
企画「全員来ます」
「すると前日のリハーサルで我々がバイトにインストして、翌日にインストしてもらうのか」
企画「そうです」
大丈夫なのだろうか。初対面の人間に複雑なルールの説明をする作業というのは、人によっては不得意な作業である。思うに、必要なのは少しの経験による場慣れだと思うのだが、今回は、その少しの経験を詰むほどの時間もない。
そして極めて絶望的なことに、この会話が行われたのは、闘会議までもう数えるほどしか日数がない時点である。根本的にスケジュールがおかしい。
そして前日リハーサル。私は今年木場に引っ越したので、闘会議の会場である幕張メッセのある海浜幕張までは、だいぶ近くなった。東西線で西船橋まで行き、JRに乗り換えて、武蔵野線で南船橋に行き、京葉線で海浜幕張に行く。タイミングが良ければ、西船橋から直通運転で一本で海浜幕張まで行けることもある。
私は予定通り西船橋で降りて乗り換えた。そして南船橋まで着いたが、何故か電車がホームに止まったまま、なかなか発車しない。しばらく待った結果、とうとう発射したが、なんともと来た線路を戻っていくではないか。しまった。これは南船橋が終点で西船橋に折り返しているのだ。こうして、予定より遅れて会場に到着した。
さて、肝心の派遣バイトだが、やはりボドゲ経験のある人は皆無であった。ボードゲームによっては、日本語の説明書が付属していないものまである。ボドゲのインストを始めるが、やはり完全にボドゲ未経験では、マニュアル読み上げのような説明になってしまいわかりづらい。
カタンは、私の他にもう一人、カタンを5,6回ぐらいプレイしたことがある人間がインストをするようだ。カタンは最低100回ぐらいはやらないと感覚がつかめない。
さて闘会議1日目の朝、私は正しい電車の乗り換えに成功して会場に着いた。小雨が振っており極めて寒い。異様なほどに寒い。ここまで寒いと客足が遠のくのではないかと思われるぐらい寒い。幕張メッセの中は、強力な暖房に温かいのだが、外は死ぬほど寒い。
開場して人がなだれ込んでくる・・・かと思いきや、それほどの人数ではない。やはり天候が客足に影響を与えているのだろうか。それとも、今回は借りているホールが多いので、相対的に人が少なくみえるのだろうか。
去年に引き続き、麻雀は人気だ。すぐに卓が成立する。ボドゲの成立には少し待たねばならない。程なくしてボドゲ卓も埋まった。
カタンのルールをすべて口頭で説明すると30分ほどかかる。それに、口頭で説明されたことをすべて覚えられるわけがない。そこで、基本的なルールだけ教えて、後はプレイしながら教えていく方法を取った。これならば最初の何もしない状態での説明は5分か10分ほどですむ。
また、今回のカタンのインストを通じて、カタンでは初期配置が非常に重要だという認識を新たにした。ダイスの確率の説明は最初に行っているのだが、やはりカタンは数百回ほどやらないと感覚がつかめないのか、初心者は確率の極めて悪い場所に初期配置しようとする。去年の闘会議では、極端に確率が悪い場所に設置したものだけ助言をしていた。その結果、プレイヤーによって初期配置に極端な差が生まれ、トップを妨害する暇もなく30分ほどでゲームが終了してしまうことがたまに見られた。
今回は、何百回もカタンを対戦している筆者の感覚で、確率、資源バランス、港、目かぶり、他プレイヤーの影響まで含めた初期配置を強力に助言した。その結果、なんと初心者が4人集まった卓であっても、中盤から終盤にかけてのトップ阻止のどんでん返しが何度も起き、ガチ勢が経験するものと同じ極めて熱い戦いになった。
なるほど、カタンは初期配置が極めて重要なのだ。一人でも初期配置が悪いプレイヤーがいると、あるプレイヤーが極端に有利になりすぎてバランスが崩れ、張り合いのないプレイに成り下がってしまう。1番手、2番手に本来残るはずのない良い2件目の建設場所を与えてしまったり、3番手4番手に本来残るはずのない1件目の建設場所を与えてしまったりする。
ちなみに、一回だけ、カタンを所有していて家でよく遊んでいると主張する母と息子の親子2人で参加しておきながら、筆者の助言を聞かず、「置きたいところに置けばいいじゃない」とつぶやきながら、親子揃って悪い配置をした親子がいたが、親子揃って終盤まで全く伸びずに勝ち目がなかった。プレイ中の建設戦略も極めて悪く、序盤から意味もなくThe Longest Roadだけを狙って無駄な建設したりしていた。The Longest RoadとThe Largest Armyは補助的な点数であって、序盤から無理に狙いに行くものではないのだが、この辺の感覚は、強いプレイヤーと数百回の対戦をしないとわからない。カタンを所有していてよく遊んでいるとはいえ、適切な上達者の指導がなく、弱い初心者同士が狭い世界で戦っていると、こういう袋小路に陥る。大抵のゲームにありがちの問題だ。
さて、小学生ぐらいの子供が卓に着いた。子供にカタンのルールを教えるのは難しい。カタンはそれほど難しいゲームではないが、6面ダイスを2つ振った出目の合計値の確率から、戦略や得点方法まで、様々な馴染のない要素を理解させなければならない。将棋やチェスのような有名なボードゲームならば、戦略書がすでに山ほど出ていて、ある程度まで強くなるには、先人が考えぬいた結果の定石の暗記とパターンマッチだけですむのだが、カタンなどのボードゲームの場合、ルールをその場で聞いて理解し、自分で与えられたルールの範囲内で柔軟に戦略を考えなければならない。ただし、筆者の経験では、闘会議のアナログゲームの上級エリアにわざわざ来るぐらいの子供は、そういう処理も得意であるようだ。この子はどうだろう。
筆者「カタンはやったことあるかな?」
子供「はい、去年の闘会議ではじめてやりました」
筆者「何、ひょっとして私がインストした?」
子供「はい、そうです」
なんと、去年私がカタンを教えた子供が今年もやってきてカタンをするというのか。
うおおおおおおおお!!!!! 自分は今猛烈に感動している。
しかも、去年より遥かにうまくなっているし、結果として勝利したではないか。圧倒的にいい話だ。
1日目の最後は、人が集まらなかったので筆者もプレイヤーとして参加した卓で、閉場までの時間が残り僅かしかない状態で猛烈なトップへの妨害と勝利争いになり、最終的に筆者が勝利した。このゲームは極めて劣悪な盤面で、鉄が固まっているが、8鉄以外は確率が悪く、麦が不作であった。筆者は8土と土港を序盤で確保して、勝利を確信したのだが、当然残りの3人の注意を惹きつけてしまい、序盤の盗賊の標的にされた上に、中盤では8が全く振られることがなかった。終盤でトップの勝ちを阻止するためにThe Longest Roadの激しい奪い合いになり、また終盤の最後で、これまでの不足分を取り返すかのように8が出始めて巻き返し、中盤は盗賊と8が振られないことにより完全に死んでいたことから妨害の注意がそれていたために勝利した。
こうして闘会議の1日目が終わり、寒さに震えながら帰路についた。帰り道が同じであった自転車好きの同僚と自転車について話をしていて、自宅から職場まで5kmなので、十分に自転車通勤が可能な距離であるが、自転車を買う決心がつかないため、いまだに自転車通勤できていないことを話すと、「ぜひ自転車通勤するべきだ。まずは安い20万ぐらいの自転車を買って始めるといい」と言われた。自転車に20万も出すとは。しかもそれが安いだと。住んでいる世界が違う。ゲームPCの値段であれば安いのだが。
帰路、海浜幕張から南船橋で乗り換えようとして、別のホームに向かってしまい、発射直前の列車にろくに確認もせず飛び乗った結果、海浜幕張に逆戻りしてしまった。また、帰りの電車で傘をなくしてしまった。
闘会議2日目
朝に木場から海浜幕張に向かう。西船橋で乗り換えをして乗った電車は、何か違和感がある。行き先を見ると市川塩浜駅となっている。これは逆方向だ。南無三、また間違えたか。市川塩浜駅で降りて、逆方向の列車に乗ることで、海浜幕張まで一本で到着した。
2日目も1日目と同様にカタンのインストをした。帰りの電車は間違えなかった。
去年の感想。
本の虫: 闘会議2015のアナログゲームエリア、とある運営スタッフの感想
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14 comments:
良い経験をしておられますね。少々うらやましいですよ。
こういう初心者見下し上級者様がジャンルを衰退させる。大抵のゲームにありがちの問題だ。
100回やらなければあなたの思う楽しさが分からないというのは、名作にあるまじき問題ですね。
初心者同士のイベントですから、楽しむためには仕方ないのかもしれませんが、自分でいろんなことを試していくのも初心者の楽しみだと思うので……ちょっと残念です。
負けても過程を楽しめる人なら、問題ない
負けると、自分の戦略ミスを反省するのは、まさにあるべき姿だろう
ただ、負けると、くそげー、運げーと連呼する人が多いから困るってだけだ
競技カタンが全てではないが、「初心者だから」「知らないから」を掲げるのもみっともない
それだけの話ではなかろうか
電車の乗り方のインストが必要
あんたみたいな初心者見下してばかりの自称上級者が居るんだったら少なくとも俺はやりたくないね
それに日記の内容見る限りあんたのインストが上手いとは到底思えないしね
勝ったり長くゲームを続けることが初心者にとって楽しい事とは限らないし、ガチな指導が欲しいと思ってるとも限らないと思います。
「自分の思い通りに動かないからこの人はダメ」みたいな言い方もどうかと思いますし、筆者の様な方がプレイヤーを減らす原因になるんじゃないですかね。
気の置けない友達と笑いながら、楽しみながら時に勝ったり負けたりしながらゲームを通して憩いの時間を送るということが無かったのですかね。
効率を優先して負けるか勝つかでしかカタンをプレイ出来ないなんて不憫だなぁと感じました。
自称上級者さんかもしれませんが、私は一緒にプレイしたくないです…
まさかのええ話や・・。
> エンジニアには動員がかからなかった
よかった、焼きそばを焼かされたエンジニアはいなかったんだ
初心者が上級者が味わっている楽しさを知らないまま、言い換えればそのゲームの真価を知らぬままになるのはもったいない。私は読んで問題を感じなかった。
果たして上級者の言う通りに駒を置かされて、ゲームの「真価」とやらが分かるのかね?
ゲームってのは勝つことでも、ましてや他人の作った台本で熱戦を演じることでもなく、
自分の頭で考えるのが楽しいんじゃないか。
というか、定石というか、コツというかそういうの知らないでゲームにならないのは初心者にも辛いと思うんだけどな……。
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