2017-03-27

C++標準化委員会の文書: N4643-N4661

また新たなC++標準化委員会の文書が公開された。

[PDF] N4643:National Body Comments for PDTS 19216, C++ Extensions for Networking

ネットワークライブラリに対するNBコメント

[PDF] N4644: National Body Comments for PDTS 21425, C++ Extensions for Ranges

レンジに対するNBコメントコメント

[PDF] N4645: WG21 Telecon Minutes

電話会議の議事録。

[PDF] N4647: Working Draft, Extensions to C++ for Modules

#includeに変わる機能、モジュールのドラフト

[PDF] N4648: Editor's Report for the Module TS

モジュールのドラフトの変更点。さほど変更はない。

[PDF] N4649:Working Draft, Technical Specification on C++ Extensions for Coroutines

軽量な実行媒体、コルーチンのドラフト。

[PDF] N4650: Editor's report for the Coroutines TS

コルーチンの変更点。目新しい変更はない。

[PDF} N4651:Working Draft, C++ Extensions for Ranges

レンジのドラフト。

N4652: Editor’s Report for the Ranges TS

レンジのドラフトの変更点。だいぶ変更があるようだ。

[PDF] N4653: 2017-02 Kona Record of Discussion ISO/IEC

内容はN4654とほぼ同じだがなぜか標準化委員しかみられないようにBASIC認証がかかっている。

[PDF] N4654:WG21 2017-02 Kona Minutes

Kona会議の議事録。

[PDF] N4656: Working Draft, C++ Extensions for Networking

ネットワークライブラリのドラフト。

[PDF] N4657:Networking TS - Editor's Report

ネットワークライブラリの変更点。それほど大きな変更はない。

[PDF] N4658:Alternative accommodation (student residence) for the 2017-07 Toronto WG21 Meeting

2017年7月のトロント会議のために近くのホテルに割引を交渉した。

Pros: 安くて近い。

Cons: クーラーがない。7月のトロントは暑くなります。

[PDF] N4659:Working Draft, Standard for Programming Language C++

ドラフトC++規格

[PDF] N4660:C++17 DIS Ballot Document

C++ DIS(Draft International Standard)。もうこれ以上の変更はほとんどないはず。これが実質C++17となる。

N4661 Editors' Report -- Programming Languages -- C++

C++ドラフトの変更点。std::byteが入った。

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CC BY-ND 4.0: Creative Commons — Attribution-NoDerivatives 4.0 International — CC BY-ND 4.0

2017-03-23

4Kディスプレイを買った

出社中にふと思い立って秋葉原に立ち寄って27インチの4Kディスプレイを買った。今や、4Kディスプレイは5万円で買える時代だ。通勤途中にふらっと衝動買いできる程度の値段でしかない。

そして設置して今に至るが、もっと早く、10万円を切った頃に、いや買えるようになった時点で即座に4Kディスプレイを買っておけばよかったと後悔している。4Kディスプレイによってもたらされる圧倒的に快適な作業は素晴らしい。結局、我々健常者はコンピューターからの出力を目で得ているので、眼球にできるだけ多くのピクセルをぶち込むのが最も効率的な出力なのだ。

筆者の今使っているラップトップに内蔵のディスプレイは4Kなのだが、物理的な画面サイズが12.6インチしかなく、あまり4Kの恩恵を実感できていなかった。たしかに高いPPCMによりフォント描画は素晴らしい。フォントサイズを小さくしても、ピクセル数が多いので読むことは可能だ。しかし、物理的なサイズには限界がある。

そこで、今回は27インチとやや大きめのディスプレイを買うことにした。本当は33インチぐらいのディスプレイが欲しかったのだが、そのサイズのディスプレイは10万から15万ぐらいするのでやめておいた。

それにしても、10年前はひたすら高PPCMのディスプレイを待ち望み、サイズが小さくてもいいから高PPCMのディスプレイがほしいと思っていたのだが、まさかPPCMはもう十分だからサイズの大きなディスプレイがほしいと思う時代が来るとは思わなかった。

とにかく、27インチの4Kディスプレイを得たことでC++の規格書の閲覧がはるかに楽になった。C++の参考書執筆のためには必要な自己投資だ。

Ubuntuがブート時にmanual fsckが必要だとしてinitramfsで止まった時

Ubuntuが塊操作不可能になったのでREISUBでリブートしようとしたら、以下のようなメッセージを表示して止まった。

/dev/mapper/ubuntu--vg-root contains a file system with errors, check forced.
Inodes that were part of a corrupted orphan linked list found.

/dev/mapper/ubuntu-vg-root: UNEXPECTED INCONSISTENCY; Run fsck MANUALLY.
    (i.e., without -a or -p options)

fsck exited with status code 4.
The root file system on /dev/mapper/ubuntu--vg-root requires manual fsck

これはエラーメッセージの通りファイルシステムに不整合な問題が発生している。おそらく原因は先程正しくunmountできなかったためで、ストレージの故障ではないだろう。おそらくBを早く押しすぎたのだ。

この問題を解決するには、そのまま、fsck /dev/mapper/ubuntu--vg-root とコマンドを入力すればよい。そしてaと入力すると、運が良ければファイルシステムの不整合が修正される。

2017-03-20

パラノイアで遊んだ

最近、有名なTRPGのパラノイアを遊んでいる。すでに3回遊んだ。次はGMをやろうとルールブックを読んでいるところだ。この休みの月曜日を使ってだいぶ読み込んだので、パラノイアのGMがやれそうな気がする。パラノイアの世界観はだいぶ頭に叩きこんだが、TRPGのGMの経験はないので、まずは練習が必要だ。

私がパラノイアを遊んだ時のGMは、残念ながらパラノイアのルールブックを熟読してはいなかった。彼らの他の楽しくないTRPGでは十分なGM経験を積んではいるが、真に楽しいTRPGであるパラノイアのGMとしては未熟だった。ルールブックを確認するといかに彼らのプレイスタイルが極端なZapスタイルであったかわかる。

私が遊んだパラノイアでは、自分のセキュリティクリアランスより上の色を触ると即座に監視カメラが捉え、天井に設置されたレーザーにZAPされるルールになっていた。これは1,2時間の短いセッションならば面白いのかもしれないが、ゲームの大半は色の確認と色の迂回に用いられた。

さて、現在、私の手元にはパラノイアの25周年記念のトラブルシューターとインターナルセキュリティとレッドブックの日本語訳がある。アマゾンでインターナルセキュリティとハイプログラマーの原書を注文した。トラブルシューターの原書は、現在アマゾンでとても高いのでやめておいた。

古くてもいいのでサプリメントのルールブックやミッション集も欲しいところだが、なかなか入手が難しい。

2017-03-09

新しいラップトップRazer Blade Stealthの2016年版を中古で買った

タイトル通り、会社の同僚が買ったまま持て余していたRazer Balde Stealthの2016年盤を中古で買った。大まかなスペックは以下の通り。

  • 12.5インチ
  • 4Kディスプレイ
  • Skylake Core i7
  • DDR4 8GB
  • SSD 256GB
  • HDMIx1, USBx2

さっそくWindowsを無慈悲に消してUbuntuを入れる。特に問題なく入った。

Ubuntuの動作には問題がないので、後はこのラップトップのハードウェア的な評価になる。

まず4Kディスプレイなのは今更言うまでもない。もはや4Kディスプレイ未満の解像度のディスプレイの使用は基本的人権の侵害であり幸福で文化的な最低限度の生活を満たさない。

ディスプレイのサイズが12.5インチというのは一長一短がある。PCを持ち運んで様々な場所で作業したい場合、この大きさは悪くない。しかし、一カ所にとどまって長時間作業する場合、このサイズはやはり小さい。これでも4Kディスプレイなので、むしろppcmは大きい。したがってフォント描画もとても綺麗だ。それにしても人間の目には限界がある。物理的にディスプレイが小さいとつらい。

メモリ量は、VMを立ちあげず、主にターミナルエミュレーター上でvimを使ってテキストを編集するのであれば問題のない量だ。

外部ポートが乏しいのもつらい。Ethernetポートがないのはつらい。できれば外部画面出力は2つほしいし、USBポートも4つぐらいはほしいところだ。EthernetやUSBはUSBハブを使えばいいのだが、USBハブを持ち運ぶのは面倒だ。

充電はUSB Type-Cで行う。これによりACアダプターの紛失や破損の際に代替品をすぐに用意できるという利便性があるが、USB Type-Cの規格に準拠した充電器やケーブルの入手は一苦労すると聞いている。世の中には規格違反の粗悪で危険なケーブルが出回っている。

また、このラップトップの元持ち主によれば、Windowsで使っていたところ頻繁に熱によりCPUがダウンクロックされてスペック通りのパフォーマンスがでないのと、12インチという小ささと、8GBというメモリの少なさと、GPUを積んでいないことによりグラフィックパフォーマンスの悪さにより、使いみちがなく持て余していたそうだ。

多少の不満はあるものの、現在使っているIvy Bridgeのとても重たいゲーミングラップトップを置き換えるには十分だ。流石にこの2017年にIvy Bridgeを使うのは無理があり、あまりにも遅いため日々の作業にも支障が出ていたので、12インチという難点はあるが、この際メイン環境として置き換えることにした。

これで現在、筆者が日常的に使うラップトップは3台。Razer Blade Stealthと、Toshibaのdynabook T95/NGと、DellのLatitude E7470だ。

Toshibaのdynabook T95/NGは、中古で9万なので購入した。4Kディスプレイが付いていて比較的最近の製品なのにこの値段なのは、ディスプレイに縦一直線に常時白点灯ピクセルがあるからだ。とりあえず白背景にして黒文字でテキストを編集するとあまり気にならないので自宅で使っている。不思議なのは、東芝のWebサイトのスペック表を見ると、GPUにAMD Radeon R9 M265Xを使っているらしいのだが、Ubuntuからは認識されず、GPUはHaswell Mobileと表示される。HD GraphicやIrisなどではない不思議な表記だ。ただしlspciをしてみると、

01:00.0 Display controller: Advanced Micro Devices, Inc. [AMD/ATI] Venus PRO [Radeon HD 8850M / R9 M265X] (rev ff)

と表示される。factorioでしばらく遊んでいるとカーネルがエラーメッセージを吐いて停止する。ブラウザーでWebGLを動作するぐらいでは問題が無いようだ。

DellのLatitude E7470は私の所有物ではなく、会社の支給PCだ。私はこれにUbuntuを入れて使っているが、どうも具合が悪い。マウスやキーボードやタッチパッドといった入力を度々取りこぼす問題がある。内蔵のキーボードとタッチパッドが悪いのかと思い、他の環境で正常に動作するマウスやキーボードを繋いでみても、やはり入力を取りこぼす。ハードウェアかLinuxカーネルかXに問題があるように思われる。Unityは使えたものではなくGnomeだとだいぶマシになるが、やはりたまに入力を取りこぼす。Ubuntu 17.04のDaily buildをいれてLinux kernel 4.9を試してみたが、多少改善された程度でやはり入力を取りこぼす。4.10はまだ試していない。

私の理想のラップトップは、15インチ、4Kディスプレイ内蔵、USキーボード、メモリ16GB以上、内蔵Ethernetポート、ディスプレイ出力が2ポート、USBポート、ストレージが交換可能なこと、nVidiaのGPUを積んでいないこと、高パフォーマンス高消費電力なGPUを積んでいないこと、なのだが、なかなか条件にあったラップトップが見つからない。

5万円もするヘッドフォンATH-DN1000USBを買った話

オーディオテクニカのATH-DN100USBというヘッドフォンを買った。5万円した。

きっかけは、使っていた安物のヘッドフォンが壊れたことだった。そのヘッドフォンは値段を正確に覚えていないが、せいぜい5,6千円で買ってきた安物だったはずだ。故障は断線だ。断線が判明してから数週間ほど、だましだまし使っていたが、やはりたえられなくなったので新しい物を買うことにした。

筆者は長く金のない生活を送っていたせいか、あまり金を使わない生活をしている。たまには贅沢をしてもいいだろうと、ある程度の金を使うつもりでいた。思うに、ヘッドフォンは数年は使うものであるから、1万か2万の金をつぎ込んでもいいだろう。また、今のPCのマザーボードに内蔵のオーディオデバイスはあまりよろしくないので、新しいオーディオデバイスを買ってもいいかもしれない。オーディオデバイスにはPCIe接続のサウンドカードと、USB接続のオーディオデバイスがある。筆者はUSB接続の方が優れていると考えている。というのも、タダでさえノイズの多いPCのケース内にオーディオデバイスを設置するのは馬鹿げているからだ。

筆者は音楽をほとんど聞かない。聞くのはゲーム内の音と音楽だ。すると、USBオーディオとヘッドフォンが一体化したものでもいいのではないか。調べてみると、Bluetooth接続のヘッドフォンはたくさんあるが、USB接続のヘッドフォンはほとんどなかった。オーディオテクニカのATH-D900USBとATH-DN1000USBぐらいなものだ。ATH-D900USBは普通にUSBオーディオデバイスとヘッドフォンが一体化したものだ。これは安い。ATH-DN1000USBは変わっている。USBオーディオデバイスとして振る舞うヘッドフォンであることは変わらないのだが、その仕組みが変わっているのだ。

通常、音を鳴らすには、まずPCMデータを電流に変換してその電流で振動板を動かす。ATH-DN1000USBは、PCMから直接振動板を動かす。振動板は4つあり、PCMからどの振動板を組み合わせて動かすかを決定して動かすそうだ。

さて、実際に店頭に行っていろいろとヘッドフォンを聞いてみると、ATH-DN1000USBの音が気に入ってしまった。音が正確に聞こえる気がする。しかし値段は5万円。買うしかない。

帰宅後、まずはGNU/Linux機に接続してみる。何も問題なく使えた。ただし、PulseAudioの設定がデフォルトでは16Bit 48kHzだ。このUSBオーディオデバイスは24bit 192kHzまでの入力をサポートしているので、より良い音源を生成する場合には、PulseAudioの設定を買える必要があるだろう。どうやら/etc/pulse/daemon.confの内容を変更すればいいようだ。以下をコメントアウトして内容を変更する。

; default-sample-format = s16le
; default-sample-rate = 44100

いろいろと試してみると、ひどく圧縮された音源を再生すると、ホワイトノイズが聞こえる。これはアナログのヘッドフォンでも聞こえるのだが、このヘッドフォンでは特によく聞こえる気がする。

さて、不自由なWindows機に接続してみると、動かなかった。どうやら専用のドライバーをインストールする必要があるようだ。Windowsは実に不便だ。

新しいヘッドフォンでゲームをしてみると、音楽がくっきり聞こえる気がした。

たまには散財するのもいいだろう。

2017-02-28

C++標準化委員会の文書: P0550R0-P0601R0

興味深いものだけ解説。

[PDF] P0550R0: Transformation Trait uncvref

decayとよく似たtraits、uncvrefの追加。

uncvref<T>::typeはTからCV修飾子とリファレンスを取り除いた型になる。decay<T>::typeとは違い、配列からポインター、関数から関数ポインターへの変換は行わない。

あるべきだ。

[PDF] P0551R0: Thou Shalt Not Specialize std Function Templates!

std名前空間内の関数テンプレートはユーザーが特殊化してはいけないというルールを作ろうと言う提案。関数テンプレートはC++11から特殊化できるようになったので、これまで考慮されてこなかった問題が出てきた。

[PDF] P0552R0:enable_if vs. requires

既存のenable_ifを利用した関数テンプレートに制約を与えるコードを、Concept Liteのrequires実装に置き換えてみたところ、Conceptによる制約付きテンプレートは、制約なしテンプレートよりもpartial orderingで優先されるため、オーバーロード解決の結果に違いをもたらすという警告。

文書では、std::swapをenable_if実装とrequires実装したものを比較して既存のテストに失敗したときの挙動の違いが驚きだったとしている。

既存のコンセプトを使わないコードにコンセプトを使うコードを混ぜると思わぬ挙動の違いに出くわすかもしれない。

P0553R0: P0553R0: Bit operations

ビットイテレーターが提案されているが、それを実装するために必要な基礎的なビット操作関数の追加。

rotl, rotr, popcount, countl_zero, countl_one, countr_zero, countr_oneの追加

rotlとrotrは左右へのロテート。popcountは1のビット数のカウント。countl_zeroは左から連続した0のビットのカウント、_oneは1のビットのカウントcountrは右から。

P0556R0: P0556R0: Integral power-of-2 operations

符号なし整数型に対して適用できる2の累乗に関係したフリー関数を追加する提案。

ispow2, ceilpow2, floorpow2, log2の追加。引数は符号なし整数型でなければならない。

ispow2(x)はxが2の累乗である場合trueを返す。ceilpow2(x)はx以上の最小の2の累乗数を返す。floorpow2はx以下の最大の2の累乗数を返す。log2は2が底のxの対数を返す。小数部は切り捨てられる

[PDF] P0557R0:Concepts: The Future of Generic Programming

Bjarne Stroustrupによるコンセプトの解説。軽く解説(briefly explain)と言っておきながらこの分量はどうなのか。

[PDF] P0559R0: Operating principles for evolving C++

C++標準化の原則のガイドライン。

[PDF] P0562R0:Initialization List Symmetry

クラスのメンバー初期化子の末尾に余計なコンマがあっても許す提案。enumと似ている。

class C
{
    int a, b, c ;
public :
    C( int x, int y, int z ) :
        a(x),
        b(y),
        c(z), // 最後に余計なコンマが付いているが許す
    { }
}

まあ、入れてもそれほど問題にはならないだろうが、今更入れるべきことだろうか。

[PDF] P0563R0:Vector Front Operations

今は昔、賢者たる男女らは非効率的なコードを書く定めの卑しき我らを救い給うために標準テンプレートライブラリを作り給いき。しかるに、賢者は長生なる魔法使いにのみ許されたる危うげなる魔術を我らの前から隠し給いき。天旋り日転じて、田舎の若人に至るまで幾年もの魔術の鍛錬を積むこと久しく、まさに黒魔術をつまびらかにせんとする日、来たれり。何をいいたいかというと、vectorのpush_frontとpop_frontのことだ。

vectorにpush_frontとpop_frontがない理由は、O(N)の非効率的な操作だからだ。vectorへの先頭へのinsertやeraseは、残りの要素をすべて1つづつずらす必要がある。

ところで、最近のハードウェアの事情はすっかり変わってしまった。もはや見かけ上のオーダーより、データの局所性の方が重要になってしまった。局所性のあるデータを隣接するメモリにずらす操作より、メモリ確保の方がはるかにコストのかかる処理となってしまった。

実際、マイクロベンチマークでも先頭へのinsertやeraseは、vectorの方がlistやdequeより速い。

そこで、もはやvectorにpush_frontやpop_frontを付けない理由はない。

ちなみに、vectorにpush_frontとpop_frontをつけると、std::queueの内部コンテナーとして使うことができる。

P0564R0: P0564R0: Wording for three-way comparisons

operator <=>の文面案。

[PDF] P0565R0:Prefix for operator as a pack generator and postfix operator[] for pack indexing

pack-like(パック風)なものを生成するfor式と、packの中からインデックスで要素やサブパックを取り出す式の提案。


template < typename ... Types >
void f( Types ... args )
{
    // 4つめのパラメーターを取り出す
    std::cout << args[3] << std::endl ;
}


int main()
{
    // f(1,2,3,4,5,6,7,8,9)と同じ
    f( for( int i = 1 ; i != 10 ; ++i ) i... ) ;
}   

便利だ。最近、パラメーターパックを第一級市民として扱おうと言う提案が多く見られる。

P0572R0: p0572r0: bit_sizeof and bit_offsetof

ビットフィールドメンバーのビット数を取得できるbit_sizeofとビットフィールドメンバーのクラスの先頭アドレスからのオフセットを取得できるbit_offsetの提案。


struct Foo {
   uint8_t A : 2;
   uint8_t B : 4;
   uint8_t C : 1;
   uint8_t D : 1;
};

int main()
{
    bit_sizeof(Foo::B) ; // 4
    bit_offsetof(Foo::B) ; // 先頭アドレスからのビット数のオフセット
}

ほしい。

P0573R0: abbreviated lambdas

lambda式を使いやすくするために3つの機能を追加。

まず=> expr

// []( auto && x ) -> decltype(expr) { return expr ; }
// と同等
[]( auto && x ) => expr ;

引数の型名省略

// []( auto && x ) => x 
// と同等
[]( x ) => x ;

オーバーロード不可能な単項演算子>>

// static_cast<decltype(x)>(x)
// と同等
(>>x) ;

これはstd::forwardを楽に書くための記法。

[PDF] P0577R0:Keep that Temporary!

一時オブジェクトの寿命を延長するための機能の提案。registerキーワードを再利用する。

この提案は、register exprというregister式を追加する。register式によって、式の結果の一時オブジェクトの寿命はその書かれている文脈のブロックスコープの終わりまで延長される。register式はブロックスコープ内にしか書けない。

以下のようなコードが可能になる。


std::mutex mtx ;

void f()
{
    register std::lock_guard(mtx) ;
    std::string_view = register std::to_string(42) ;
}

lock_guardは変数を束縛するかムーブ代入しておかないと、一時オブジェクトの寿命が尽きてmutexがunlockされてしまう。問題はその変数自体は使わないので冗長な記述が必要になってしまう。

auto ref = std::lock_guard(mtx) ;

to_stringの結果は一時オブジェクトだが、これをstring_viewで受けてしまうと、直接参照で束縛したわけではないので、寿命が尽きてしまう。register式が役に立つ。

一時オブジェクトの寿命を延長する機能は以前にも提案されたが、ライブラリの実装にしか役に立たない仕組みだった。これならばユーザーも使うことができる。

[PDF] P0589R0:Tuple-based for loops

tupleの各要素にrange-based forの文法でアクセスできる機能の提案。ループというよりは展開だ。tupleコンセプトを満たしたものがrange-base forで展開可能になる。

今のConcept Liteが気に入らない。

P0592R0: To boldly suggest an overall plan for C++20

明らかにスタートレック信者が書いたらしきC++20の計画。以下の項目について注力する。

  • モジュール
  • コンセプト
  • レンジ
  • ネットワーク

筆者はコンセプトLite提案を気に入っていないのでコンセプトについては懐疑的だ。

そんなことよりUnicode対応が必要だと思うのだが。

P0593R0: What to do with buffers that are not arrays, and undefined behavior thereof?

mallocで確保したメモリにオブジェクトを構築したものは配列ではないので配列としてアクセスするとC++の規格上未定義の動作になるが、実際そのような処理は書かれている。どうすべきかという問題提起。

P0595R0:The "constexpr" Operator

constexpr演算子の提案。コンパイル時に評価されているかどうかを見分けることができる。

例えば、コンパイル時にはポータブルなコードで計算しないといけないが、実行時には実装依存の高速な方法で計算できるような処理があった場合に、constexpr演算子によってコンパイル時評価されているかどうかで条件分岐できる。


constexpr double power( double d, int x )
{
    if ( constexpr() )
    {
    // コンパイル時評価されているのでポータブルな実装
    }
    else
    {
    // 実行時に評価されているので最適な処理を実行時ライブラリに任せる
        return std::pow( d, static_cast<double>(x) ) ;
    }
}

P0596R0:std::constexpr_trace and std::constexpr_assert

コンパイル時printfとしてのconstexpr_traceとコンパイル時assertとしてのconstexpr_assertの提案。コンパイル時に評価された時にコンソールにメッセージを出力する方法が提供される。

constexpr_assertの存在理由はよくわからない。static_assertがあれば十分ではないか。

P0597R0: std::constexpr_vector<T>

コンパイル時計算の中でも使えるmutableなconstexpr_vector<T>の提案。もちろんpush_backもできる。

[PDF] P0599R0:noexcept for Hash Functions

std::hashの数値、ポインター、標準ライブラリに対する特殊化は例外を投げるべきではないのでnoexceptにしろというアメリカNBからの要求コメント。わかる。

[PDF] P0600R0:applying [[nodiscard]] for C++17

[[nodiscard]]を追加する標準ライブラリの策定。malloc, async, launder, allocateにつける。

これで興味深い文書はすべて解説した。リフレクション周りの文書は無視した。

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CC BY-ND 4.0: Creative Commons — Attribution-NoDerivatives 4.0 International — CC BY-ND 4.0

2017-02-23

C++標準化委員会の文書: P0501R0-P0549R0

タイトルの範囲で興味深い文書だけ紹介。

[PDF] P0506R0: use string_view for library function parameters instead of const string & / const char *

string_viewで既存の標準ライブラリのstringやchar const *を引数に取る部分を全部置き換える提案。これにより規格の文面も標準ライブラリの定義もかなり短縮される。

ABI互換をぶち壊しそうだがそれに対する考察がない。

[PDF] P0515R0: Consistent comparison

operator <=>の提案。

これまで、様々な種類の比較(strong/weak/partial orderingやequality)について、それぞれstrong_order_less_thanとかweak_order_less_than

operator <=>はthree-way comparisonを提供する。

a <=> bを評価した結果の値rは、a < bの場合 r < 0。a > bの場合r > 0。a == bの場合r == 0となる。

operator <=>によって、比較の種類の問題が解決できる。戻り値の型によって種類を表せばよい。例えばある型がstrong orderingをサポートしている場合は、以下のように書く。

class X
{
    int a ;

public :
    friend std::strong_ordering operator <=>( X const &, X const & ) = default ;
} ;

weak_orderingしか対応できない型の場合は、以下のように書く。例えば、大文字小文字を区別しない文字列型は、weak orderingしか提供できない。


class CaseInsensitiveString
{
    std::string s ;
public :
    frined std::weak_ordering operator <=>( CaseInsensitiveString const & a, CaseInsensitiveString const & b )
    {
        // 大文字小文字を区別しない比較を行う関数
        return case_incensitive_compare( a, b ) ;
    }
} ;

比較の種類を型システムに載せることで、より強い比較を無理やり提供しようとするとコンパイルエラーになる。


class X
{
    CaseInsensitiveString s ;
public :
    // コンパイルエラー
    friend std::strong_ordering operator <=> ( X const &, X const & ) = default ;
} ;

同様に、partial orderingにしか対応できない型は、std::partial_orderingを返す。また、大小比較を提供できず、等価比較しか出来ない場合は、std::strong_equalityやstd::weak_equalityを返す。

さて、残りの比較演算子は、すべてoperator <=>から生成できる。

operator <=>をユーザーが使うこともできるが、通常はその必要はない。というのも、a < bを実現するには、(a <=> b) <0と書かなければならないからだ。

これは今までの提案よりだいぶマシな提案だ。

[PDF] P0533R0: constexpr for <cmath> and <cstdlib>

<cmath>と<cstdlib>の関数の内constexpr実装できるものの基準の考察

[PDF] P0534R0: call/cc (call-with-current-continuation): A low-level API for stackful context switching

call/ccを実現するライブラリの提案。

P0535R0: Generalized Unpacking and Parameter Pack Slicing

これは興味深い提案。

パラメーターパックのスライシングができる機能の提案。

template < typename ... pack >
struct X
{
    // 1番目のパラメーター
    using t1 = [0]pack ;
    using t1a = []pack ; 

    // 2番目のパラメーター
    using t2 = [1]pack ;
    
    // 最後のパラメーター
    using t_last = [-1]pack ;
    // 最後の一つ前のパラメーター
    using t_before_last = [-2]pack ;



    // 3番目から6番目までの3つのパラメーターを持つ新たなパラメーターパック
    using t3 = std::tuple<[2:5]pack> ;
    // 2番目から最後までのパラメーターを持つ新たなパラメーターパック
    using t4 = std::tuple<[1:]pack> ;
    // 1番目から5番目までの4つのパラメーターを持つ新たなパラメーターパック
    using t5 = std::tuple<[:4]pack> ;
    // packと同じパラメーターパック
    using t4 = std::tuple<[:]pack>
} ;

また、以下のような使い方もできる。


struct X
{
    int a ;
    int b ;
    int c ;
} ;

X x ;
[0]x = 1 ; // x.a = 1
[1]x = 2 ; // x.b = 2
[2]x = 3 ; // c.c = 3

興味深いし便利だ。

P0536R0: Implicit Return Type and Allowing Anonymous Types as Return Values

匿名型を関数の戻り値の型に記述できる提案。

struct { int id ; double value } f() ;

この関数の宣言に対して、後から定義を書く際には、以下のように書ける。


decltype(return) f()
{
    return { 123, 5.0 } ;
}

decltype(return)はすでに宣言された関数の戻り値の型を示す。したがって、以下のような例はエラーとなる。


int f(int) ;
float f(float) ;

// エラー、すでに宣言された関数と一致しない
decltype(return) f( double d )
{
    return d ;
}

すでに、関数の戻り値の型推定があるので、以下のようには書ける。


auto f()
{
    struct { int id ; double value ; } result( 123, 5.0 ) ;
    return result ;
}

この提案は、関数のシグネチャをあらかじめ宣言しておけるという機能を提供する。

どうもこのまま受け入れるには問題の多い曖昧な提案だ。

P0538R0: A Qualified Replacement for #pragma once

#pragma onceの機能を標準に追加する提案。

#pragma onceとは主要なC++コンパイラーが実装している非標準機能で、#pragmra onceを書いたヘッダーファイルの#includeを一回のみにする機能だ。

ヘッダーファイルの多重includeを防ぐために、伝統的に以下のようなinclude guardと呼ばれる方法が用いられてきた。

// foo.h
#ifndef _MYLIB_FOO_H_INCLUDED
#define _MYLIB_FOO_H_INCLUDED
...
#endif // _MYLIB_FOO_H_INCLUDED

今回提案されている#onceディレクティブは、ユニークな識別子が必要となる。

#once identifier [ <whitespace> version ]

識別子は::で結合することができる。これは名前空間的に使うことができる。また、識別子の後に空白文字に続けてバージョン番号を記述できる。

すでに一度#includeしたヘッダーと同じ識別子を使っている#onceディレクティブは、残りのヘッダーが無効化される。


// foo.h

#once mylib::foo

提案では、#forgetというディレクティブも提案している。これは既存の識別子を忘れることで、#onceの書かれたヘッダーを多重includeできるようにする機能だ。必要性が理解できない。

結局、一言でまとめれば、提案されている機能は伝統的なinclude guardのシンタックスシュガーだ。

P0539R0: A Proposal to add wide_int Class

wide_int<bytes, signed>型の追加。

long long int型の追加で、64bit長の整数型は表現できるようになったが、それ以上のビット長の整数型を扱いたい場合に標準で表現することが出来ない。そこで、ライブラリで任意のバイト長の整数型を表現できるものを入れようと言う提案。

template<size_t Bytes, bool Signed> class wide_int;

P0540R0: A Proposal to Add split/join of string/string_view to the Standard Library

split/joinをstringとstring_viewとregexに提供する提案。

splitとjoinはメンバー関数という形で提供される。

splitには3種類ある。splitsとsplitfとsplitcだ。これらはセパレーターを引数に取る。文字列をセパレーターで分割する。

セパレーターは、文字、文字列、regexのいずれかだ。セパレーターの文字数がゼロもしくはnull文字ひとつの場合、文字型ひとつづつでsplitされる。

int main()
{
    using std::literals ;
    auto str = "aaa bbb\nccc ddd"s ;

    auto r1 = str.splits(' ') ;
    // r1は{"aaa", "bbb\nccc", "ddd"}

    auto r2 = str.splits("bbb") ;
    // r2は{"aaa", "\nccc ddd"}

    auto r3 = str.splits( std::regex(R"(\s)") ) ;
    // r3は{"aaa", "bbb", "ccc", "ddd"}

    auto str2 = "abc"s ;
    auto r4 = str2.splits("") ;
    // r4は{"a", "b", "c"}
}

splitsは結果をvector<string>で返す。コンテナーをハードコードしている理由は、簡単なライブラリにしたいためだ。splitvは結果をvector<string_view>で返す。こちらは文字列をコピーしないでstring_viewの参照で返す。

vector<basic_string<CharT, Traits> > splits(const basic_string_view<CharT, Traits> &Separator) const
vector<basic_string_view<CharT, Traits> > splitsv(const basic_string_view<CharT, Traits> &Separator) const 

splitfは分割した文字列を関数オブジェクトに渡す。

template <class F>
void splitf(const basic_string_view &Separator,F functor) const

以下のように使う。

int main()
{
    using std::literals ;
    auto str = "a b c" ;
    str.splitf( ' ', []( auto s ) { std::cout << s << '\n' ; } ) ;
}

splitcは分割した文字列をコンテナーにemplace_backしていく。これにより、vector以外のコンテナーを使いたい場合に使える。

int main()
{
    using std::literals ;
    auto str = "a b c" ;
    std::list<std::string> c ;
    str.splitc( ' ', c ) ;
    // cは{"a", "b", "c"}
}

このコンテナーへのリファレンスを取る既存の標準ライブラリに似つかわしくないデザインについて提案著者に質問したところ、お手軽に使いたいからとのこと。あまりよろしくない動機だ。

P0543R0: P0543R0: Saturation arithmetic

C++で符号なし整数は演算結果が最低値、最大値を上回る場合、アンダーフロー、オーバーフローするが、最低値、最大値になって欲しい場合がある。そのためのsaturation演算を提供する提案。

具体的にはコードを見ると一目瞭然。

int main()
{
    // 7
    auto r1 = satadd( 3, 4 ) ;
    // 3
    auto r2 = std::numeric_limits<unsigned int>::max() + 4 ;
    // std::numeric_limits<unsigned int>::max()
    auto r3 = satadd( std::numeric_limits<unsigned int>::max(), 4 ) ;
}

便利だ。

多くのアーキテクチャのSIMD命令は、saturation演算を提供している。

P0544R0: User Injection of Filesystems

std::filesystemにユーザー側が独自の実装を追加することができる昨日の提案。

ユーザースペースによるファイルシステムの実装、例えばアーカイブファイルをファイルシステムとして扱うとか、メモリ内キャッシュをファイルシステムとして扱うような場合に、std::filesystemの実装をユーザー側が提供したいことがある。そのためにstd::filesystemの実装を追加できるようにする機能が必要だ。

また、filesystemの意図的にエラーを発生させることによるエラー時の処理のテストにも使える。

P0545R0: Supporting offsetof for Stable-layout Classes

クラスのメンバーのクラスレイアウト上のオフセットを求めるoffsetofは、standard layout classにしか使えない。しかし、standard layout classは制限が厳しすぎる。例えば、派生やコンストラクターやコピー代入演算子などがあるだけでもstandard layout classから外れる。

しかし、クラスのレイアウトを決定するのに、コンストラクターやコピー代入演算子の存在の有無が影響を与える必要はない。実際、Itanium ABIやWindows x64 ABIはそのようになっている。offsetofを適用できるクラスを増やすために、クラスのレイアウトがコンパイル時に決定できるstable layout classを新たに定義しようという提案。

ある型がstable layout class型となるためには、

  • virtual基本クラスを持たない
  • virtual関数を持たない
  • 非staticデータメンバーはスカラー型かstable layout型か、そのような型の配列型か、リファレンス型であること
  • 非stable layout classを基本クラスに持たない

virtual関数についても、主要な実装方法では、隠しデータメンバーとして実際の関数へのオフセットを保持するvtableを持つ。このメンバーのサイズと位置は固定なのでレイアウトはコンパイル時に計算できる。実際、GCC, Clang, MSVCではそうなっている。しかし、今回の提案では、virtual関数を持つ型がstable layout classを満たすことについてはconditionally supportedに留める。将来的には緩和を考える。

virtual基本クラスはvirtual関数と同じように隠しデータメンバーとして持つ。virtual関数とは違いそのサイズと位置は可変だ。最終的な最も派生されたクラス型がわかっているならばコンパイル時にレイアウトの計算ができるが、一般的にはコンパイル時に計算できないので、サポートしない。

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2017-02-22

アンチウイルスソフトウェアの利用者は過失が問われるべき

Google and Mozilla's message to AV and security firms: Stop trashing HTTPS | ZDNet

GoogleとMozillaの調査によれば、世の中のほとんどのアンチウイルスソフトウェアは通信内容を傍受するためにブラウザーに対してMITMを仕掛けている。

MITM(Man In The Middle)とはTLS(HTTPS)接続の証明と暗号を無効化するための方法で、中間者攻撃とも呼ばれる。

HTTPSにはふたつの役割がある。通信内容の暗号化と、通信相手と通信内容の証明だ。

通信内容が暗号化されていない場合、秘密の情報(クレジットカード番号など)が途中で通信を傍受している悪意ある攻撃者に筒抜けになってしまう。それを防ぐために通信を暗号化したいところだが、それだけでは不十分だ。

まず、通信相手が本人である保証がないし、通信内容は本人のものである保証もない。通信経路の途中で傍受できるということは、当然書き換えもできるはずだ。

通信相手が本人であり、通信内容が途中で改変されていないことを示すための証明方法がある。これで問題は全て解決したかというと、そうでもない。

通信をしたい二者の間に中間者が挟まって、二者のどちらにもHTTPSで使われている証明を行うことで、どちらとも相手と通信しているように錯覚させることができる。これを中間者(Man in the middle)攻撃という。

ただし、この中間者攻撃というのは、通常はうまくいかない。何故ならば、中間者の証明書を信頼しなければならないからだ。

ところで、アンチウイルスソフトウェアは、コンピューターの中で管理者権限で動くソフトウェアである。アンチウイルスソフトウェアは自分の証明書を信頼させることができる権限を持っている。すると、アンチウイルスソフトウェアはMITMができる。

なぜアンチウイルスソフトウェアがMITMをするかというと、通信内容を傍受して、悪意あるソフトウェアが紛れ込んでいないかを監視するためだ。そのため、アンチウイルスソフトウェアの中間者攻撃の意図に悪意はない。しかし、その実装は雑である。

多くのアンチウイルスソフトウェアは、中間者攻撃の実装に不具合や脆弱性を抱えている。その結果、ユーザーのセキュリティが弱められる。

さらに、アンチウイルスソフトウェアは管理者権限で動作し、カーネルも含む他のソフトウェアにコード注入する。これも脆弱性をうみだす。

ましてや、現代の悪意あるソフトウェアは単にパターンマッチやヒューリスティックによる検出で対応しきれない。

アンチウイルスソフトウェアを実行することはセキュリティを高める事にはならず、逆に下げることになる。したがって、アンチウイルスソフトウェアを使った結果セキュリティを弱め、コンピューターに悪意あるコードの実行を許し、他人に被害を与えた場合、アンチウイルスソフトウェアを実行している人間は過失が問われるべきである。

アンチウイルスソフトウェアは詐欺なので直ちに使用を中止すべきである。

2017-02-15

C++標準化委員会の文書: 2017-02のまとめ

2017-02 Pre-Kona mailingsが公開されている。

#MAILING2017-0: ISO/IEC JTC1/SC22/WG21 - Papers 2016

参考書の執筆に注力したいため、この記事では改訂版の提案のうち興味深い文書を取り上げる。

[PDF] N4637: Working Draft, Extensions to C++ for Modules

モジュールのドラフト

[PDF] N4640: Working Draft, Standard for Programming Language C++

現在のドラフト。変更点はeditorial上のものにとどまる。valarrayの文面が最新の用語を使って書き直された。

[PDF] P0045R1:Qualified std::function signatures

constなstd::functionにconstではない関数オブジェクトを代入するとconstなオブジェクトが変更できてしまう問題がある。

struct delay_buffer {
int saved = 42;
int operator () ( int i ) { return std::exchange( saved, i ); }
};
// Small object optimization — no heap allocation.
const std::function< int( int ) > f = delay_buffer{};
assert ( f( 1 ) == 42 );
assert ( f( 5 ) == 1 );

この問題への対処として、std::functionのテンプレート実引数にconst修飾を書けるようになる。既存のconstなstd::functionは[[deprecated]]を利用してdeprecated扱いであることを明示した上でconst_castを使う

std::function< void() > const f = []() mutable {} ;
f() ; // [[deprecated]]警告付きで動作する

// コンパイルエラー
std::function< void () const > const g = []() mutable {} ;

これは便利だ。

[PDF] P0052R3: Generic Scope Guard and RAII Wrapper for the Standard Library

汎用RAIIラッパーライブラリ、だいぶ仕様が固まってきたので、これ以上大きな変更はなさそうだ。

[PDF] P0059R3: A proposal to add a ring span to the standard library

固定長リングバッファーを実装するring_spanの提案。ring_spanはストレージを管理せず、コンストラクターでcontiguous iteratorで渡されたストレージを使う。

この提案では、ring_spanからイテレーターを得るbegin/endが削除された。ring_spanはストレージを所有しないため、イテレーターを提供するのは好ましくないとのことだ。

[PDF] P0082R2: For Loop Exit Strategies (Revision 3)

繰り返し文を条件式がfalseになって抜けたのか、break文で抜けたのかによって、繰り返し文を抜けた後で条件分岐したいことがある。しかし、C++ではそれを直接表現する方法がないので、極めて冗長かつ非効率的な方法で書かなければならない。

bool did_break = false ;

for ( ... )
{
    if ( ... )
    {
        did_break = true ;
        break ;
    }
}

if ( did_break )
    ... ;
else
    ... ;

この提案はC++に繰り返し文のあとにbreakで抜けたかどうかで条件分岐する文法を追加するものだ。この改訂版では、既存のキーワードを使い回すのではなく、新しいキーワードを追加する設計に改められた。


for ( int i = 0  ; is_completed(i) ; ++i )
{
    if ( is_error() )
        break ;
}
on_complete
    do_normal_things() ;
on_break 
    do_abnormal_things() ;

キーワードはon_complete/on_breakだ。

だいぶわかりやすくなった。

P0091R4: Template argument deduction for class templates (Rev. 7)

deduction guideをdelete定義できるようにする提案。まあ、必要になる場合もあるかもしれない。

P0103R1: Overflow-Detecting and Double-Wide Arithmetic Operations

オーバーフローが検出できる整数の四則演算と左シフト演算のライブラリの提案。オーバーフローの有無がbool型の戻り値で、演算結果が実引数に渡したポインター経由で得られる関数と、ひとつの型で返す関数がある


template <typename T> bool overflow_add( T* result, T a, T b );

1つの型で返す関数の方は、split_lowerとsplit_upperで上位下位に分けることができる。

P0104R1: Multi-Word Integer Operations and Types

固定長整数ライブラリの提案

template<int words> multi_int;
template<int words> multi_uint;

演算子がオーバーロードされていて普通に組み込みの整数型のように使える。問題は、現在の文面では、1ワードが何バイトなのか実装依存だということだ。

P0105R1: Rounding and Overflow in C++

浮動小数点数の丸め方とオーバーフローの挙動を指定して演算できるライブラリの提案。

P0237R5: Wording for fundamental bit manipulation utilities

整数型をビットのコンテナーとみなしてビットへのイテレーターなどのアクセス方法を提供するアダプターライブラリの提供。おそらく規格に入る。

[PDF] P0267R3: A Proposal to Add 2D Graphics Rendering and Display to C++,

2Dグラフィックライブラリのドラフト。よくもここまでまとめたものだ。文字列描画機能はないようだ。

P0275R1: A Proposal to add Classes and Functions Required for Dynamic Library Load

shared libraryやWindowsのDLLのように、動的に関数やクラスの実装をプログラムにロードして使えるライブラリの提案。果たして標準化できるのだろうか。

P0316R0: allocate_unique and allocator_delete

指定したアロケーターでストレージを確保してunique_ptrを構築するライブラリallocate_uniqueの提案。すでにshared_ptrに対するallocate_sharedはあるので、その補完。

[PDF] P0352R1: Smart References through Delegation (2nd revision)

operator .ではなく派生を使ってスマートリファレンスを実装できる機能の提案。operator .よりよほどマシな文法と意味だ。こちらが採用されるべきだ。

P0355R2: Extending <chrono> to Calendars and Time Zones

<chrono>を日付に対応させる提案。これでようやくCライブラリを使わずにC++で型安全に日付が扱えるようになる。



int main()
{
    using namespace std::chrono_literals;
    auto date = 2016y/may/29;
    cout << date << "\n";
    // 2016-05-29
}

便利だ。

[PDF] P0447R1: Introduction of std::colony to the standard library

flat_mapと同じくらい注目している新しいコンテナーの提案、colony。

colonyはvectorのような連続したストレージ上に構築される要素に順番の概念があるシーケンスコンテナーだが、中間要素への削除が定数時間ですむ。

どのように実装しているかというと、要素の数だけのビットマップを持っていて、それぞれの要素が有効かどうかの情報をビットマップで保持している。これにより、要素をずらす処理が必要なくなる。そして、中間への挿入も無効な要素がたまたまあれば定数時間で終わる。

これはほしい。

P0479R1: Attributes for Likely and Unlikely Statements

分岐先が実行されると期待できる場合と期待できない場合にその情報をコード中に記述できる属性、[[likely]]と[[unlikely]]の提案。


if ( is_unexpected_error() ) [[unlikely]]
{
    // まず発生しないエラーの処理
}

while( is_program_exit() )
[[likely]]{
// 終了することがほとんどないプログラムの処理
}

深いパイプラインを持つ近代的なプロセッサーでは、分岐予測を外した時のペナルティは大きい。もし、プログラム中のある分岐先がほとんど確実に実行される、あるいは実行されないことがコンパイル時にわかっている場合、プロセッサーによっては分岐予測にヒントを与える命令を使うことによって分岐命令のパフォーマンスを上げることができる。そのような情報をソースコードに付加するための属性。

if, while, do while, for, range-based forに記述できる。

既存の提案の改訂版を片付けた。あとは新しい提案のうち興味のあるものだけをさっと解説して参考書の執筆に戻りたい。

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2017-02-09

高度に発展した特許業界はヤクザと見分けがつかない

Azure IP Advantage – intellectual property protection | Microsoft Azure

Microsoft AzureがAzure IP Advantageなるサービスを始めた。

特許ゴロによる大量のゴミ特許を抱えたうえでどれかに抵触しているだろうと当たりをつけて手当たりしだいに革新的な製品、サービスを提供しているものに訴訟を仕掛ける商売はいい儲けになっている。

そのような特許ゴロ訴訟に対抗する手段としては、こちらでも大量のゴミ特許を抱えておき、特許侵害を訴えられたら相手も自分のゴミ特許のどれかに抵触しているだろうとあたりとつけて特許侵害で逆提訴するというものだ。訴訟は技術を全くわかっていない弁護士と裁判官が何年も言葉遊びを弄した挙句、和解に終わるという泥仕合を繰り広げる。

といっても、そんなことができるのは大量の特許を保有できる資本力のある世界的に有名な大企業だけであり、大多数の実際に世界に技術革新を起こしている中小企業としては、訴訟の費用と特許利用料を天秤にかけると、訴訟をしないほうが安上がりになることが期待できるので、特許利用料を支払ったほうがマシという納得できない選択が最善の状態になってしまう。

今回Microsoftが始めた商売というのは、特許ゴロ訴訟を起こされた場合、Microsoftが大量に保有するパテント・プールをもって特許ゴロを叩くというものだ。

しかしこれは、何か見覚えのある商売のように思えてならない。

世の中にはヤクザと呼ばれる圧倒的な暴力を保有した複数の団体がいる。ヤクザは暴力を行使してあなたから金を巻き上げていく。あなたはヤクザの一つにみかじめ料を支払うことによって、他のヤクザの暴力に暴力で対抗して守ってもらう。

ヤクザを特許ゴロに、暴力を特許に置き換えるとどうだろうか。不思議なほどの一致を見るではないか。これでは特許ゴロとヤクザの見分けがつかない。ヤクザのような見た目でヤクザのように鳴くならばそれはヤクザである。

そして今回のタイトルに繋がる。「高度に発展した特許業界はヤクザと見分けがつかない」

ヤクザのシノギを作り出すだけで技術革新を阻害する特許制度は廃止すべきである。

2017-02-07

「目撃!ドキュンはドキュンをバカにし過ぎでひどくない」と妻は言った

「目撃!ドキュンはドキュンをバカにしすぎでひどくない?」と妻は言った。

僕はその言葉の解釈に数秒悩んだあと、おもわずこみ上げる笑いこらえるのに苦労した。

それは午前二時の真夜中のことであった。僕と妻は非常に腹を空かせていたが、あいにくと冷蔵庫にはごぼうと生姜とにんにくしかなかった。さすがの僕でも、ごぼうの生姜とにんにくの炒め物などという何の腹の足しにならない料理を妻に提案することはしなかった。我々が村上春樹の信奉者であれば、ここでパン屋を襲撃しに行かなければならないところだが、幸い我々は村上春樹がそれほど好きではなかった。

家のすぐ近くにはすき家があるが、我々夫婦はすき家に行くのは最終手段であると考えていた。というのも、夜中に寝巻き姿で夫婦揃ってすき家に行くのは、いかにもDQNのやることであり、文化的に生きる我々にははばかられる種類の行いであるように思われたからだ。

しかし腹は空いた。食べるものが家にない。コンビニにめぼしい物も売っていない。残念ながら、今夜は最終手段としてDQNに成り下がる必要がある。

我々夫婦は最低限の防寒具を着て、DQNのようにすき家に向かった。

「何、DQNの語源を知らないのかい?」

妻はDQNという言葉を知っている上によく使うにもかかわらず、DQNの語源を知らなかった。DQNとはドキュンと読み、かつての2ちゃんねるで使われていたネットスラングが定着した言葉である。今はDQNと書くことが多いが、当時はドキュンとかドキュソと書くほうが一般的だったはずだ。そもそもの語源は、昔「目撃!ドキュン」というテレビ番組があり、いかにも教養のない家庭環境に問題を抱えている下層階級の親子を放送していたので、そのような低俗な人間を指す言葉としてDQNが使われるようになったのであった。

「・・・そういうわけで、ドキュンは2ちゃんねるで使われていたスラングだけれど、もともとは目撃!ドキュンというテレビ番組が・・・」

「なにその番組名? ドキュンをバカにしすぎでひどくない?」と妻は言った。

僕はすき家の中で、おもわずこみ上げる笑いこらえるのに苦労した。

「それは逆だよ。目撃ドキュンという番組名が作られたとき、まだドキュンはオノマトペとしての意味しか持っていなかったんだ。」

言葉の変遷とは不思議なものだ。語源によって新たに創りだされた言葉の影響で語源の意味が変わってしまう。

2017-01-31

GDBがC++コード注入をサポート

C++ Support Added To GCC's libcc1, Benefiting GDB - Phoronix

C++ support in libcc1: A comprehensive update – RHD Blog

最新のGCC 7では、GDBがC++のコード注入をサポートするようになった。

GDBは、デバッグ中のプログラムにC言語のコードをその場でコンパイルしてコード注入して実行する機能を持っている。これにC++が対応した。

この機能はlibcc1.soを通じてGDBとGCCが強調動作することによって実現されている機能だ。

CとC++は似ている言語ではあるが、名前空間など名前検索のルールが異なるので、シンボル名を探すにもGDBにC++の名前検索を実装しなければならない。また、テンプレートにも特別な対応が必要だ。

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2017-01-30

xkcdで最近面白かった話

xkcd: Wifi

縦軸:来客がWiFiに接続できる確率

横軸:来客の技術力

グラフ中の表記、左から:

技術力低い:WiFi設定が見つけられない

技術力普通:使える

技術力高い:「ファームウェア」に原因がある

titleテキスト:右端を超えると正しく使える。ただし、その理由には「ファームウェア」が関係している"

筆者も今使っているラップトップの一台のWiFiの調子がUbuntuで悪くて苦労している。

xkcd: 職場チャット

2004年:うちの部署はIRCでやり取りしている

2010年:うちの部署はほぼSkypeを使っているが、一部の同僚はまだIRCを使っている。

2017年:ほぼ全員がSlackに移行した。しかし3人だけIRCをやめるのを拒否してIRCゲートウェイ経由で接続している。

2051年:宇宙シンギュラリティによりすべての知的意識は統合された。ただし一人だけIRCクライアント経由で参加している奴がいる。
「俺は自分の好きなようにやりたいんだ。わかるだろ?」
やれやれ

titleテキスト: 2078年:奴はようやくscreenとirssiからtmuxとweechatに移行しやがった。

たしかにこの2017年では職場内のチャットはSlackが独占した感がある。

もっと訳そうと思ったが飽きたのでこの辺で。

2017-01-24

GCCの実験的なfilesystemを使う方法

C++17には<filesystem>が追加される。GCCは実験的な実装として<experimental/filesystem>を実装している。

これを使えば、例えば以下のようにディレクトリを列挙できる。

#include <experimental/filesystem>

namespace fs = std::experimental::filesystem ;

int main()
{
    fs::directory_iterator iter("/usr/bin"), end ;
    std::copy( iter, end, std::ostream_iterator<fs::path>(std::cout, "\n") ) ;
}

GCCのfilesystemは、実験的な実装であるので、ヘッダーファイルが<experimental/filesystem>であることに加え、デフォルトではライブラリがリンクされない。

GCCのfilesystemを使うにはライブラリとして、libstdc++fs.aとリンクしなければならない。これは、gccに-lstdc++fsオプションを渡すとよい。また、libstdc++fsにshared library版はないので、安全のためにコマンドラインオプションの最後に書くべきだ。


g++ -std=c++1z その他のオプション... -lstdc++fs

libstdc++fsについては、極めてわかりにくい場所に申し訳程度にドキュメントがある。

Linking

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2017-01-22

最も日本人を多く殺す職について考察した結果、反医療主義という結論に至った

概要:この記事は最も多くの日本人を殺す職業について考察したうえで、最終的に意外だが確実に多くの日本人を殺している職業を特定したので書いた。結論を書くと反医療主義なのだが、考察の過程をたどっていこう。

今週の土日は何も予定がなく、かつ面白い本もPCゲームも見当たらないため、非常に暇である。そこで、最近執筆が滞っているブログのリハビリを兼ねて、何の意味もない文章を書いてみようと思う。お題はこれだ。

人を殺せる職につきたい

間接的に多くの日本人を殺せる職につきたい

絶望的に人望がないので政治家や起業家は難しい

スキルはITエンジニアの経験のみ

このクソみたいな人生の鬱憤を晴らすためだけに間接的に日本人を大量にぶち殺したい

どうすればいいのだろうか

なるほど、まず考察する内容を整理しよう。

  • この匿名ダイアリーの筆者を仮に増田とする
  • 増田は人を殺せる職につきたい
  • 人とは日本人である
  • 政治家と起業家以外の職である
  • 殺す人数は多くしたい

まず、「殺す」の意味を考えてみる。お題の文章を解釈すると、増田が自ら刃物や銃といった武器を使って人を殺す必要はない。間接的な殺人でよいのだという。すると増田は他人に殺人を命令する立場でもよいし、増田の意思決定の結果人が死ぬという状況でもよい。

死刑執行人はそれほど人を殺していない。日本で年間に行われる死刑執行の数は極めて少ない。大抵の年は0かひと桁であり、まれにふた桁の執行数があってニュースになるぐらいだ。

人を殺す機会のある職業と言われて警察、自衛隊、海上保安官を思い浮かべる読者もいるかもしれないが、これらの職業はあまり人を殺していない。自衛隊は国内の治安維持に出動した実績はまだなく、せいぜい訓練中に自衛隊員同士で殺しあったとか、事故の結果人を殺したことはあるとしても、あまりにも殺人数が少なすぎる。警察とて、治安維持に出動して暴徒と殴りあったり、犯人と交戦するような警官はほんのわずかであり、大多数の警官は窓口で非暴力的な一般市民と応対したりデスクワークをしたりしている。あとは「間接的」という言葉をどこまで拡大解釈するかの話でしかない。殺人をした警官を管理する立場にあるものは間接的に殺人をしたといえるだろうか。日本人を殺した警官の給与計算に関わっていた会計部署の警官も間接的に人を殺したと言えるのだろうか。すると、警察庁長官は警官による殺人の全件に関与したといえるのだろうか。この論法が行き着く先は内閣総理大臣が最も多くの殺人をしているということだ。いや、国家の象徴であり内閣に承認を与える天皇は内閣総理大臣を含む国内のすべての殺人を間接的に行っていると考えることはできるだろうか。しかし、現状では天皇は国民の総意と内閣の決定に従わなければならず自分の意志を表明することができない。それに、増田はおそらく天皇の職を得ることはできない。

間接的という言葉はいくらでも拡大解釈できる。

例えば、ラーメンは栄養のバランスが悪く、脂肪と塩分が過剰であり、健康に悪い。健康を損ねると人は死ぬ。すると、ラーメンの店主は殺人に貢献したことになるのだろうか。問題が塩にあるとすれば、塩の製造や販売を行う職業は殺人に関わっているのだろうか。

間接的をここまで拡大解釈していいとすると、結局日本人が最も摂取しているビールの販売元はどこか、タバコ農家は誰かということになってしまう。本来麻薬であり違法となるべき健康を害するたばこを製造、販売しているJTは極めて多数の日本人の殺害に貢献している。するとJTの多数の労働者を管理する人事部に職を得るべきだろうか。

しかし一般に、空腹の人間にラーメンをおごったり、アルコール分解能力がありビールを飲みたがっている車両を運転する予定のない人間に一杯のビールをおごったり、健康を損ないたがっている喫煙バカにタバコを一本差し出したりすることは殺人とみなされていない。

間接的な殺人を考えると、健康保険の範囲内の治療を定める職は、その意思決定によって大勢の日本人の生死を左右するだろう。政治家も間接的な影響力が大きい。しかし、これらの職は増田がつきにくい職業である。それに、これらの職業はできるだけ殺人を減らす目的があるので、判断を誤って殺人数が増えたとしても、全体的には殺人を減らす方向に貢献してしまう。

避妊具は妊娠を防ぐことによって本来生まれるべきであった人間を生まれさせないため、殺人とみなせるのではないか。すると増田は日本で最も売れている避妊具製造メーカーに勤務すべきである。しかしそのような間接的な可能性の殺人を考えるのであれば、避妊具が存在しないことによる間接的な殺人数も考えなければならない。

もし避妊具が存在しなければ、多くの望まれない子が生まれ、貧困で劣悪な環境で育てられることになる。避妊具の存在によって、そのような子供が成長して、人を殺す可能性が消されるので、避妊具は殺人件数の減少に貢献している。避妊具による未来に存在したはずの可能性の殺人を考えるのであれば、未来に存在したはずの殺人減少を差し引かなければならない。

事実、アメリカでは中絶が合法化されてからしばらくして、殺人件数が大幅に下がっている。

多くの職は、日本人の死亡に貢献している以上に、日本人の死亡を防ぐことにも貢献してしまっているのだ。

例えば、餅は毎年100人ほどの日本人を救急搬送しているが、餅を食べることは飢え死にを防ぐので日本人を生かしている。それに、窒息死の原因は餅ではなくおかゆのほうが多い。というのも、窒息死する日本人の多くは咀嚼力の著しく低下した人間であり、咀嚼力の低下した人間は日常的にお粥を食べているからだ。

そういう意味で、車も日本人を殺していない。交通事故では年間4000人ぐらいの日本人が死んでいるが、もし車がない場合、日本の物流は止まり、現在の人口を支えることができず、より多くの日本人が死ぬ。したがって、車の製造や販売の職業についた場合、殺した日本人の数より助けた日本人の数が大幅に上回ってしまう。

では非合法な職はどうか。この際、収入さえ発生していれば職業と認めてもいいだろう。例えば暴力団はどうか。残念ながら暴力団はあまり人を殺していない。というのも、日本における暴力団構成員が殺人、殺人未遂の容疑で検挙された件数は一年間にせいぜい200から300件程度なのだ。容疑者ですら3桁しかない。もちろん、検挙されていない殺人もあるだろうが、この程度の数では話にならない。コンビニ店員として酒と煙草と避妊具を売っていたほうがまだいくらか日本人の殺人に貢献できる。

とはいえ、日本全体の一年の統計上の殺人件数が1000件程度であることを考えると、暴力団による殺人は割合が高い。警察が認知する殺人件数に間接的に関わることを目的とするのであれば、やはり暴力団には所属しているべきだろう。しかし、警察に逮捕されて、勾留、懲役、禁錮の扱いを受けてしまうと、その最中はさすがに殺人に間接的にでもあれ関与したとはみなせないだろう。

警察に逮捕されずに暴力団との関係を続けて間接的に殺人に関与するには、増田は暴力団に脅されてやむを得ず金品をゆすり取られ続けるとか、暴力団の関与する高利貸しから金を借りて利子を支払うなどすればいいのではないか。こうすれば、増田は被害者であるので警察に逮捕されることはない。増田の提供した金銭は暴力団の利益となり、間接的に殺人にも使われる。しかし、これは職業ではない。しかもこのような状況は極めてクソであり人生の鬱憤を晴らすどころかますます鬱憤をためるだけだろう。

ここまで、具体的な統計を出さずに筆者の頭の中だけで考えていた。そのようなデータに基づかない考察を離れて、具体的な死因を見ていこう。

厚生労働省:死因順位(第5位まで)別にみた年齢階級・性別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合

日本では、1年間に120万人ほどの日本人が死んでいる。死因の上位に来る理由を生じさせる原因となる職業につけば、最も効率よく日本人が殺せるだろう。

まず、0歳から4歳までの死因の第一位は、「先天奇形、変形、及び染色体異常」である。第二位以降もほとんどが病気によるものだ。

その後、10代の頃は病気が多い。

20代から30台になると自殺が死因のトップになる。

その後の死因のトップは癌だ。

なるほど、このことから、日本人の死亡に最も貢献できる職業が判明した。

反医療主義者である。

書籍や新聞やテレビやインターネットといった大衆に届く情報媒体を使い、反医療主義を煽って金を儲ける職業につけばよい。

乳幼児の死亡率を上昇させるためにワクチン摂取に反対する。がん死亡率を高めるために科学に基づかない、臨床試験で効果も認められていない代替医療を推奨する。

ホメオパシー、カイロプラクティック、菜食主義、反ワクチン、宗教、占い、何らかの植物やキノコを摂取すると癌が治るとの主張、タバコ、アルコール、これらの反医療主義を煽る本を書いて、テレビに出てさも効果があるかのように吹聴する職業。このような職業は実際に存在している上に、うまくやれば稼ぎもよい。

しかも、現代日本では、これらの行為を行うほとんどの職業は犯罪者とみなされていない。最悪の場合で薬事法違反程度の軽い罪だ。というのも、癌の治療を拒否するのは拒否した本人の責任であるし、抗癌剤の重い副作用について解説するのは違法ではないからだ。あとは薬事法に触れないように気をつければよいだけだ。増田は日本人さえ多く殺すことができれば、逮捕されたり懲役を受けることにはむとんちゃくかもしれないが、懲役を受けるとそれだけ反医療主義を煽ることができなくなる。

考察を始めた当初は、とてもくだらない記事になることを危惧したが、どうやらなかなか啓蒙的な結論に達することができた。この記事の教訓としては、反医療主義は危険だということだ。

2017-01-21

HoloLensを体験したが10年早かった

MicrosoftのHoloLensが日本でも入手可能になったようだ。さっそく入手した人が身近にいたので体験させてもらったが、結論をいうと、10年早かった。

HoloLensは、一見するとバカバカしいまでに巨大で無骨なサングラスだ。そのレンズに投影することにより、あたかも空間上に物体があるかのように錯覚させることができる。空間上のある場所にウインドウや3Dモデルを設置すると、その場所に固定される。HoloLens装着者は空間に固定された表示物を好きな距離、好きな角度から見ているように錯覚する。

HoloLensがどのように空間を把握しているかというと、主に赤外線による深度センサーを用いて回りの深度を把握しているようだ。それにしても装着者の動きに追随する性能がすばらしく、ズレを一切感じさせない。

HoloLens風のコンピューターの性能が上がれば、通常のコンピューターの補助的に使うのはありではないかと思う。つまり、椅子に座って通常のコンピューターを操作している中で、HoloLensも装着して、周囲に作業中に参照するひつようのあるドキュメントを貼り付けておく。回りを見回すとドキュメントを読むことができる。これの何がいいかというと、物理的なディスプレイがいらないということだ。物理的なディスプレイは物理的な空間を専有する。しかもコンピューターにはディスプレイの枚数分、物理的な出力ポートが必要だ。HoloLens風のディスプレイであれば、これがいらない。

ホロレンズの操作はハンドジェスチャーで行う。しかし、ジェスチャーを正しく認識させるのはなかなか大変だった。それに、VRでさんざん学んだことだが、人間はよほど鍛えていない限り、腕を心臓より高く上げたままの姿勢を長時間続けることはできない生き物である。これは大変に深刻な問題で、筆者は数十年後、VRが普及して普通のコンピューターのディスプレイがVRになった未来の採用面接では、エリートの求職者は体育大体操部出身のマッチョで、面接ではその鍛え上げられた肉体美を披露しつつ、「はい、私はこのようによく体を鍛えているのでVR作業を3時間連続でこなすことができますフンヌー」などと自己アピールをしているのではないかと予想している。

結論から言うと、ハンドジェスチャーは面倒で疲れる。Bluetoothが付いているそうなので、キーボードやマウスを接続することはできるのではないか。将来的には、HTC Viveのように物理的な入力装置を使う方向に進むのではないか。

HoloLensの残念な点としては視野が極めて小さいということだ。目の前に腕を伸ばして両手で長方形を作った程度の視野しかない。しかも、頭に固定したHoloLensがずれるとその視野の長方形が移動してしまう。

HoloLensを体験していると、かつてOculus RiftのDK1を体験した時のことを思い出す。荒削りではあるが未来を感じさせる先進的な技術だ。Oculus Rift DK1は、この2017年の標準では、もはや犬も食わないほどのガラクタに成り下がってしまった。かつ、Oculus VR社の方針は邪悪かつ排他的であり、HTC Viveに性能面でも劣っている負け犬と成り下がってしまった。

もうひとつ思い出すのは、Microsoftは一時期タブレットに注力していたということだ。まだ実用的なタブレットが夢物語の時代に、極めて無骨な弁当箱のような厚さのタブレットを開発していた。結果として、Microsoftはタブレットでは負けたが、HoloLensでも同じことになるのではないかと思う。初期の技術研究には多大な資金を継ぎ込むも、結局競合他社にあっさり負けてしまう、そんな未来が見える。

結局、HoloLensは荒削りな開発評価機という印象を受けた。10年後に期待したい。

2017-01-17

GCCのSVN trunkをビルドする方法

GCC 7がC++17のコア言語機能を完全に実装したので、ようやく参考書のサンプルコードが検証できるようになった。

C++ Standards Support in GCC - GNU Project - Free Software Foundation (FSF)

しかし、GCC 7はまだリリースされていない。少し試すだけならばwandboxが使えるが、本格的に使うにはローカルにほしい。

[Wandbox]三へ( へ՞ਊ ՞)へ ハッハッ

そこで、GCCを自前でビルドすることにした。ビルドは以下の手順に従う。

Installing GCC - GNU Project - Free Software Foundation (FSF)

GCCのコンパイルに必要なソフトウェア

Prerequisites for GCC - GNU Project - Free Software Foundation (FSF)

GCCのコンパイル環境を整えるには、有名なGNU/Linuxディストリビューションを使うのが最も手っ取り早い。筆者はUbuntuを使っている。

GCCはC++98で書かれているためにC++98コンパイラーが必要になる。ある程度最近の安定版バージョンのGCCを使うのが最も手っ取り早い方法だ。

POSIX互換シェルが必要だ。これにはGNU bashを使えばよい。

awkが必要だ。GNU awkの最近のバージョンを使っておけば問題ない。

GNU binutilsが場合によっては必要だ。とはいえ、GNU binutilsが入っていない環境でGCCを使いたいとは思わないだろう。

gzip, bzip2, GNU make, GNU tar, Perlが必要だ。

GCCはオプショナルではあるが、デフォルトで4つのライブラリを使う。GNU GMP、MPFR, MPC, islだ。DebianとUbuntuでは以下のようにして入手できる。

apt-get install libgmp-dev libmpfr-dev libmpc-dev libisl-dev 

この4つのライブラリは、主要なGNU/Linuxディストロならば十分に最近のバージョンがパッケージ化されているだろうが、GCCのソースコードには./contrib/download_prerequisitesというスクリプトがある。これを実行すると、4つのライブラリのソースコードをダウンロードしてGCCのビルド時にビルドして使うようにもできる。

flexが必要だ。GCCのリリース版のソースコードには、.lファイルからflexで生成したファイルは含まれているのだが、SVN trunkには含まれていない。configureスクリプトはflexが存在しないことを警告してくれないのでハマる。

GCCのソースコードのダウンロード

Downloading GCC - GNU Project - Free Software Foundation (FSF)

GCCのソースコードは様々な方法でダウンロードできる。最新のSVN trunkのソースコードを入手するにはSubversionを使うのが最も手っ取り早い。

svn checkout svn://gcc.gnu.org/svn/gcc/trunk gcc-trunk

一度チェックアウトしたソースコードから最新版への差分をダウンロードするには、svn updateを使う。

他にも、gitミラーやtarで固められたスナップショットもある。

Configure

Installing GCC: Configuration - GNU Project - Free Software Foundation (FSF)

GCCのビルドは、configureスクリプトを実行してMakefileを生成してmakeするという古典的な方法で行われる。configureスクリプトの実行は、GCCのソースディレクトリとは別の場所で行うことが強く推奨されている。そこでそのようにする。


svn checkout svn://gcc.gnu.org/svn/gcc/trunk gcc-trunk
mkdir gcc-build
cd gcc-build
../gcc-trunk/configure オプション

configureスクリプトには、いくつかのオプションを渡す。

今回、GCCをビルドする目的はC++17のコア言語機能を試すことだ。したがって、言語はCとC++しか必要がない。GCCはCとC++の他にも、Ada, Fortran, go, 醜悪なobjective-C, 太古の忌まわしきObjective-C++に加えて、LTOとJITも言語としてサポートしている。

言語をCとC++に限定するには、

--enable-languages=c,c++

をオプションに指定する。

この2017年では、ほとんどの読者はx86-64アーキテクチャのコンピューター上で自由なOSを実行しているはずだ。x86-64アーキテクチャは複数のビルドターゲットがある。GCCでは、32bitコードをm32、64bitードをm64、アドレスは32bitだがその他は64bitなコードをmx32としている。今回の目的はC++17のコア言語を試すことなので、複数ターゲットのコードを吐くことにしか興味がない。なので、multilibを無効にする。

--disable-multilib

GCCのビルドは、他のよくあるソフトウェアと違い、ややこしい。というのも、GCCはかつてCで、今はC++で書かれているからだ。システムのC++コンパイラーでGCCをビルドしたとして、システムのC++コンパイラーが壊れている場合、ビルドしたGCCも壊れてしまう。この問題を発見するため、GCCのビルドは3-stage bootstrapと呼ばれる方法で行われる。

  1. システムのコンパイラーでstage-1 GCCをビルドする
  2. stage-1 GCCでstage-2 GCCをビルドする
  3. stage-2 GCCでstage-3 GCCをビルドする
  4. stage-2とstage-3を比較して挙動に差がないことを確認する
  5. stage-3コンパイラーでランタイムライブラリをビルドする

今回はC++17コンパイラーを手っ取り早く試す目的なので、3-stage bootstrapは無効化する

--disable-bootstrap

結果として、configureスクリプトは以下のように実行する

configure --enable-languages=c,c++ --disable-bootstrap --disable-multilib

GCCのビルド

Installing GCC: Building - GNU Project - Free Software Foundation (FSF)

configureが成功したならば、configureを実行したディレクトリにMakefileが生成されているので、あとはmakeするだけでよい。

最適化を有効にして並列コンパイルもできる。

make BOOT_CFLAGS='-O' -j4

GCCのインストール

Installing GCC: Final installation - GNU Project - Free Software Foundation (FSF)

無事にビルドが終わればインストールできる。

make install

デフォルトではインストール先が/usr/local/下になっているので権限が必要だ。

筆者の体験では、flexをインストールしていない状態でconfigureが通り、makeに失敗した後、flexをインストールした後も途中からのmakeは失敗した。

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2017-01-13

GCCがC++17のコア言語機能を実装完了

Hacker Newsで話題になっていて知ったのだが、GCCがいつのまにか、C++17の現ドラフトの全コア言語機能を実装している。

C++ Standards Support in GCC - GNU Project - Free Software Foundation (FSF)

とうとう、なかなか実装されなかったクラステンプレートのコンストラクターからの実引数推定も試すことが出来た。

#include <iterator>


template < typename T >
    struct X
    {
        X( T t ) { }
        template < typename Iterator >
        X( Iterator first, Iterator last ) { }
    } ;
// deduction guide
template < typename Iterator >
    X( Iterator, Iterator ) -> X< typename std::iterator_traits<Iterator>::value_type > ;


int main()
{
    // X<int>
    X x1(0) ;
    
    int a[] = {1,2,3} ;
    // X<int>
    X x2(std::begin(a), std::end(a))  ;
}

これが動く。感動だ。

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2

2017-01-10

ボルダリングを初めて2年がたった

ボルダリングを初めて2年がたった。最初は7級すら苦労していたのだが、今は全く苦労せずに登れるようになった。現在のグレードは4級で、1ヶ月以上取り組み続けて簡単な3級が落とせる程度だ。

ボルダリングを初めてから体重が増えた。これは筋肉が増えたこともあるが、脂肪も明らかに増えている。運動により食事量が増えたためだろうか。ボルダリングを始める前は60kgであった体重が、いまは73kgほどになっている。体が重いと登りにくい。減量のため、食事量を意識的に減らし、通勤を電車から徒歩に切り替え、自宅から会社までの5kmほど歩くようにしている。5km歩くと50分ほどかかる。しかし電車で行くにしても自宅は駅から遠く、かつ乗り換えが発生するので結局40分かかる。通勤時間が10分しか変わらないのであれば、歩いてもよいということになる。一週間ほど徒歩通勤を続けたところ、体がなれたので特に疲れることはなくなった。一ヶ月ほど続けているが、痩せない。

ボルダリングでは特別な靴を使う。しかし未だに納得のいく製品に出合っていない。これまでは主にスポルティバの靴を履いてきたが、スポルティバの靴は3ヶ月ぐらいで潰れてしまう。スポルティバの中では、Geniusが一番気に入った製品だった。Geniusは9ヶ月履くことができた。今はFive TenのQuantumを履いている。この靴はFive Tenには珍しく、幅広の足でも履くことができる。3ヶ月ほど使ったが、つま先のソールが大分削れてきた。あと3ヶ月は持たないだろうと思う。Five TenのQuantumは相当に気に入ったので、次の靴もこれにするかもしれない。

ところで、クライミングジムでは、たまに白髪交じりの齢六十はとうに越していようと思われる翁が極めて動的な動きをしてグレードの高い課題を登っている。それをみて、なるほど、ボルダリングというのは歳をとっても問題なくできるスポーツなのだなと老後も頼もしく考えていると、ある人から、「果たしてそうだろうか。あの歳でなおあれだけ動ける強者のみ生き残っているだけではないだろうか」と生存者バイアスの可能性を指摘された。確かにそうだ。

2017-01-05

GoogleがGoによるPython実装、Grumpyを発表

Googleが既存の社内のPythonコードをGoで実行するためのPython実装を公開している。

Google Open Source Blog: Grumpy: Go running Python!

google/grumpy: Grumpy is a Python to Go source code transcompiler and runtime.

Googleの発表によれば、YouTubeのフロントエンドサーバーとYouTube APIはほとんどPythonで書かれているという。現在、YouTubeのフロントエンドはCPython 2.7で実行されているが、CPythonの制約により効率化には限界があるのだという。

GrumpyはPython 2.7のコードをGoのコードに変換するツールgrumpcの実装だ。grumpcはPythonで実装されていて、astモジュールでPythonをパースして、Goコードを吐く。Python 2.7系なのは、Google社内の既存のコードを実行するためだ。また、execやevalのようなインタープリター実装ならではの極めて動的な一部の機能は実装されていない。

Pythonの標準ライブラリのほとんどは、Pythonによって実装されているため、そのままGoコードに変換されてそのまま動く。

GrumpyにはGlobal Interpreter Lockが存在しない。リファレンスカウントのかわりにGoのGCにオブジェクトの生存管理を任せている。この設計のため、C extension moduleは使えない。この設計により、GrumpyはCPython実装よりスケールすると主張している。

Grumpyはインタープリターではない。Grumpyによって生成されたGoのコードは通常通りGoによってコンパイルされる。これにより開発やデプロイの柔軟性は下がるが、ネイティブコードへのコンパイルと静的解析により、より効率のよいコードを吐くことができるようになる。また、Grumpyで実行されるPythonコードは、Goのモジュールをimportして使うことができる。

興味深いツールだ。

2017-01-03

ディストピア小説のネタとして使える実話

事実は小説より奇なりとはよく言ったもので、ディストピア小説を超える実話が世の中に溢れている。

Automated book-culling software drives librarians to create fake patrons to "check out" endangered titles / Boing Boing

East Lake Country図書館のシステムは、貸出記録から人気のない本を破棄するようになっている。この図書館の司書は、フェイクの利用者情報を登録して、司書がお気に入りの破棄されてほしくない本を守るために、多数の貸出記録を捏造した。

Healthcare workers prioritize helping people over information security (disaster ensues) / Boing Boing

ある病院の医療システムのセキュリティは、一定期間の入力がないとパスワードの入力を要求する仕組みになっている。このために、看護師の医療システムの利用時間の大半は、パスワードを入力することに費やされている。刻一刻と病状が悪化する患者の情報を即座に入手しなければ患者の生死に関わる状況では、パスワードの入力にかかる時間は致命的である。そのため、ある病院では、新米の看護師を医療システムのキーボードを一定期間ごとに押し下げる係に割り当てている。

このような話をネタにしたディストピア小説が読みたいものだ。例えば監視社会で観測データから社会に不要な人間が自立型の機械によって自動的に破棄されていくディストピア世界において、人類の大半が破棄された荒廃とした世界で、生存のために観測データの捏造を続ける人類。

あるいは、電力や食料の生産が完全に自動化された世界において、生産量の調整のためにひたすら入力を一定間隔で叩き続ける不毛な仕事。

そういえば、年末にPixivのアカウントに対して大規模な他所から流出したIDとパスワードの組み合わせによるログイン試行が行われ、結果として何が行われたかというと児童ポルノ画像のアップロードだったという。これは、児童ポルノというのは法律で所有が違法なことにより、画像を投稿できるWebサイトに対する最も手っ取り早い嫌がらせの手段であるのだという。この事件から、児童ポルノを武器として利用するディストピアネタを思いついた。

例えば、児童ポルノは存在が違法であり、児童ポルノを記録するストレージも違法である。そこですべてのコンピューター機器はRFC 3751ストレージは児童ポルノを検出すると自動的に自己破壊し、また児童ポルノを検出して破壊する自律型ロボットがそこらじゅうを徘徊している。大規模な児童ポルノをばらまくマルウェアの影響によりコンピューターの大半がOmniscience Protocolにより文鎮化した世界で人類が生き残りをかけて児童ポルノを武器にロボットと戦う。児童ポルノが武器になる理由としては、児童ポルノだと判定されるものををロボットに観測させるとロボットはOmniscience Protocolを発動して自己破壊を行うからだ。

2016-12-26

誤り:paizaの問題はC++17でも成り立つ

この記事は間違っていた。

この変更では、インクリメント演算子の副作用のコミット順序はまだ規定されていない。

paizaが以下のような質問を出している。

問題は、int i = 0 ;であるとき、以下の式を評価した結果が1になるのはどれかという問題だ。
  1. i++ + ++i
  2. ++i + ++i
  3. i++ + i++
  4. ++i + i++

C言語では、この式を評価した結果は未定義である。

C++14までは、この式を評価した結果は未定義である。

C++17では、サブ式の評価順序が固定されたことにより、この式は以下のように評価されることが規格上保証されている。

C++17でも未だに未定義。§1.10 p18に書かれている。

  1. 2
  2. 3
  3. 1
  4. 2

参考:

[PDF] P0145R3: Refining Expression Evaluation Order for Idiomatic C++

P0400R0: Wording for Order of Evaluation of Function Arguments

現在、Clang 4.0 headがP0145R3とP0400R0を正しく実装している。GCC 7 headはP0145R3の実装を謳っているが現時点ではバグのため、2番目の式の評価が4になるようだ。

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2016-12-09

freeeの保有する特許5503795について読んで解釈を試みたがやはり新規性も技術的価値もわからないしゴミだったのでfreeeのエンジニアは早くfleeするべき

freeeが特許侵害でマネーフォワードに訴訟を起こしたそうだ。freeeのプレスリリースでもその事実を記載している。

特許権侵害訴訟の提起について | プレスリリース | freee株式会社

これによると、マネーフォワードが侵害したとfreeeが主張している特許は、特許第5503795号だそうだ。他の特許については触れていないのでこの特許を読んでみることにする。

特許 第5503795号 会計処理装置、会計処理方法及び会計処理プログラム - astamuse

この特許は本当にゴミなのだが、私の解釈した限りで、この特許を使った技術的な実装とは以下のようなものだ。ここで、この特許が主張している文脈やアイディアは無視して、単なる根本的な実装のみを書いている。

ユーザーの利用している金融機関やクレジットカードの取引の履歴データ(何をどこからいくらで買った、売ったという取引情報)をWeb上からスクレイピングする。

会計処理では、取引情報は、勘定科目という様々な名目に仕訳しなければならない。勘定科目とは、例えば費用の項目では、仕入とか接待交際費とか消耗品費とか賃借料といったものである。スクレイピングした取引履歴情報には、勘定科目はない。勘定科目というのはその文脈に依存する。例えば、鉛筆を購入したとして、その鉛筆を自社の社員が業務のために使うのであれば名目は消耗品費だ。鉛筆を更に第三者に販売するのであれば名目は仕入だ。

勘定科目は人間がその文脈に基づいて分類しなければならないのだが、ある程度の推測はできる。例えば、鉛筆の購入費用は、水道光熱費とか保険料にはまずならない。大方は消耗品費か仕入だろうし、大抵の場合は消耗品費だろう。したがって取引履歴情報から「鉛筆」というキーワードを抽出して、キーワードと勘定科目の対応テーブルを参照して、自動的に勘定科目の仕訳を行うことができる。

自動で仕分けた上で、人間に仕訳結果を見せて、間違いは修正させる。

とまあ、基本的にはこのような実装だ。

ちょっとまてよ、そんな分類作業は会計や簿記といった概念が発明されて以来行われている極めて一般的な既知既存の作業ではないか。キーワードで勘定科目を推定することに新規性などあるのか。

この特許は、極めてバカバカしい、人をけむにまくような、ポストモダンもかくやと思われるような言葉遣いをして、このような人間が何千年も行ってきた作業を再発明している。

まず、請求項1の冒頭を読んでみよう。

請求項1

クラウドコンピューティングによる会計処理を行うための会計処理装置であって、

「クラウドコンピューティング」とは一体何を意味する言葉であろうか。一般的に考えればAWSとかAzureのようなプラットフォームのことを言うのであろうか。クラウドだろうが非クラウドだろうが本質的には大差ないし、第一肝心の処理を実装するソフトウェアのみかけの実行環境は古典的なコンピューターと全く変わらない。クラウドは既存のソフトウェア資産を使えるように大変な努力をしているからだ。

気を取り直して、続きを読んでいこう。

ユーザーにクラウドコンピューティングを提供するウェブサーバを備え、

おや、「クラウドコンピューティング」とはユーザーに提供するものなのか。ということはAWSとかAzureなどではないということになる。freeeは自ら「クラウド会計ソフト」と名乗っている。すると、エンジニアがインフラとして使う意味のクラウドコンピューティングではなく、ユーザー側ではなくサーバー側で処理を行うことを「クラウドコンピューティング」と称しているのだろうか。こちらの意味であれば、例えばGMailはクラウド電子メールソフトであるし、Google Docsはクラウド表計算ソフトということもできる。

この特許の前文を検索しても、「クラウドコンピューティング」なる用語の定義が出てこない。ただし、

本発明はウェブ明細データを利用する点で、現時点では、中小企業及び個人事業主のうち、その恩恵を受けることができる割合が限られている。すなわち、我が国の企業におけるクラウドコンピューティングの利用率は、非特許文献1に記載されているとおり、9.1%に過ぎない、つまり大部分においてウェブ上のリソースが活用されていないのである。本発明は、中小企業及び個人事業主に初めて焦点を当てた上で、かつ、今後のクラウドコンピューティングの利用率向上を見越してなされたものであり、そこに大きな先進性がある。

この非特許文献1というのは、総務省、平成23年通信利用動向調査(企業編)、31頁のことで、以下から入手できる(ただしHTTPなので改変されていない保証がない。)

http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/pdf/HR201100_002.pdf

これによれば、クラウドコンピューティングの定義はしていないが、どうやら処理の一部をサーバー側で行い、ユーザー側のクライアントにWebブラウザーを使うソフトウェアのことを意味しているようだ。

しかし、「Web上のリソースが活用されていない」という表現は謎である。まるですでに持っている資産を使わずに放置しているような書きようだが、サービスを使う契約すら結んでいないのに、活用していないとは一体なんだろうか。例えば東京には流しのタクシーが多数走っているが、タクシーにほとんど乗らない東京人は、「公道上のタクシーリソースを活用していない」と言えるのだろうか。

そして、先進性というのも疑問だ。というのも、GMailは10年以上前に公開されているし、それ以前にもWeb上でメールを管理、送信できるようなWebサイトは、クラウドという言葉の登場以前にも存在していた。企業が使いたいかどうかということに先進性があるのだろうか。より使いやすいUI、管理しやすい機能、セキュリティなどは、別にいまに限った話ではない。

なぜ筆者が「クラウドコンピューティング」なる用語の定義にこんなに細かく考察しているかというと、この特許では、「クラウドコンピューティング」なる用語を多用しているからだ。特許の文章中に13回使われている。例えば、

ウェブサーバが提供するクラウドコンピューティングによる

クラウドコンピューティングによる会計処理を行うための会計処理装置

ユーザーにクラウドコンピューティングを提供するウェブサーバ

Webブラウザーをクライアントとして使いサーバー側の処理に依存するソフトウェアが、Webブラウザーではないソフトウェアクライアントと比べて技術的に何か先進性があるようには思われない。特許のクラウドコンピューティングをクライアントサーバー型サービスに変えても別に何の違いも内容に思われる。

クラウドコンピューティングという用語の使い方だけで謎であるし新規性のかけらも感じられない。

特許では、さも当たり前の人間が何千年もやっている作業が、まるで先例なく画期的な思いつきによって発明されたかのように書かれている。

例えば、キーワードには表記ゆれがある。ANAはエー・エヌ・エーと書かれるかもしれないし、エーエヌエーと書かれるかもしれない。このようなひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット、ハイフンの有無、マイナス、長音記号などの表記ゆれを補正して同じキーワードとして扱うようにする処理が、あたかも画期的な思いつきで実施したところ効果があったかのように書かれている。

また、「モロゾフ JR大阪三越伊勢丹店」のようにキーワードが複数ある場合、JR大阪三越伊勢丹店のJRというキーワードで勘定科目を推定すると旅費交通費だが、モロゾフという洋菓子店で推定すると、贈答品を購入したので接待費だと推定できる。このように複数のキーワードがある場合、キーワードの種類によって優先度を設けることで、正しい判定ができる。この優先度として、品名は取引先より優先させた方が推定の制度が上がることが画期的なひらめきにより発見されたなどとしている。そんな複数のキーワードに優先順位をつけることは人間が何千年も行ってきたことであるし、コンピューターの発明以後即座に行われただろうに、どういう新規性があるのだろうか。

ちなみに、この特許は一度却下されているのだが、この優先順位という請求項を付け加えることで認められている。

この特許は、会計処理は発生主義の原則に基づいて「デイリーベース」(1日単位でという意味か?)で行われているが、個人や中小企業などの場合、期日までに会計処理を終わらせればよく、自動的に仕訳をした上で、ユーザーにWebブラウザー上で候補を表示して修正させる方法で、一括して仕訳を行うので、新規性があるとしている。

これもよくわからない話だ。というのも、人間が行う金の動きなのだから、その日のうちに申請し忘れて期日ギリギリに会計処理を行うことなど大企業であってもよくあるだろうし、コンピューターが今のように高性能になる前は、バッチ処理といってデータを一括で一気に処理していたものだ。すると、バッチ処理をしていた頃のコンピューターシステムで、キーワードに対応した分類を行うもので、更に会計処理をする先例が存在すれば、この特許は無効になる。そのような先例は探せばあるのではないかと思われるし、会計処理に限定したところで何か技術的に変わるとも思えない。

この特許は、とにかく人間が文字と数学を発明して以来、数千年も行ってきた会計処理という既存の作業をコンピューターでやったという他なく、しかもそのコンピューターというのが、クラウドコンピューティングとかWebサーバーとかWebブラウザーとか極めて限定的な範囲になっている。いくら範囲を狭めたところで、技術的に何か新規性のある発明には思えない。

さて、こんなゴミ特許は一体誰が発明したのか。特許に記載の情報によれば、佐々木大輔、横路隆、平栗遵宜が発明者になっている。

freeeのWebサイトの会社概要によれば、

会社概要 | freee株式会社

佐々木大輔は創業者で代表取締役。「形式的で非効率なことは大嫌い」とあるが、こんなゴミ特許を形式的で非効率的なゴミ特許を取得した上で、競合他社を極めて短い交渉期間でまるで妨害するかのように訴訟を起こす形式主義と非効率性は持ち合わせているようだ。

横路隆はCTOで共同創業者。「テクノロジーでスモールビジネスのありかたを再定義していきます」とあるが、技術ではなく特許で競合他社を妨害するビジネスを定義中のようだ。定義といえば、クラウドコンピューティングなる謎の用語も定義していただきたい。

平栗遵宜は開発本部長。「ユーザーに価値を届けるために必要なのは技術力と気合」とあるが、技術力ではなくゴミ特許で競合他社を妨害することで他の価値を抹消した上で唯一の価値を独占して届けるようだ。まさに気合が必要とされる。

創業者で代表取締役、共同創業者でCTO、開発本部長といった、役職キーワードから推定して会社の運営や技術の方向性の最終的な判断をする役割の人間が技術で勝負せず、くだらないゴミ特許を恥ずかしげもなく申請して同業他社に特許訴訟を起こすとは、freeeの技術的な先行きが危ぶまれる。

freeeのエンジニアは早くfleeするべきではないか。

2016-12-08

freeeのゴミのような特許の新規性が全く理解できない

freeeが特許侵害でマネーフォワードを提訴したというニュースが流れている。

freeeがマネーフォワードを提訴、勘定科目の自動仕訳特許侵害で | TechCrunch Japan

肝心の特許は、以下のものらしい。

特許 第5503795号 会計処理装置、会計処理方法及び会計処理プログラム - astamuse

読んでみたが、何の新規性もあるようには読めない。やたらとクラウドコンピューティングなる言葉が出てくるが、この特許でAWSとかAzureとかGoogle Apps Engineのようないわゆるクラウドかそうでない従来のサーバーかで何か違いがあるとは思えないし、その他のことも、人間が有史以前からやってきた分類作業であるようにしか読めない。数千年も存在する既存の概念をコンピューターで行うというだけのゴミ特許が乱立しているが、どうやらそのコンピューターを更に細分化してクラウドコンピューティングとかウェブサーバーとかのバズワードを追加しただけで、範囲をいくら狭めようと分類は分類でしかない。

特許制度は消え去るべきだ。

そして、歴史的に、このような特許ゴロ訴訟をしだす企業というのは4パターンある。

  • 何も具体的な特許技術を利用した現物を提供していないが、ゴミのような特許権だけ保有していて、わずかでも抵触している可能性のある企業団体個人に対して特許利用料を支払え、さもなくば訴訟だと迫るもの
  • 大量のゴミ特許を保有している大企業が小遣い稼ぎに、お前はうちの膨大な特許プールのどれかを侵害している可能性があるので特許使用料を支払え、さもなくば訴訟だと迫るもの
  • 競合相手に対し自由市場による競争をしたくないため存在を妨害するためにゴミ特許を振りかざして利益が出ないほど法外な利用料を要求して訴訟を行うもの
  • 時代についていけない死に体で破産寸前の企業が昔取ったゴミ特許を振りかざして最後の小遣い稼ぎを試みるもの

この特許は本当に新規性のかけらもない。

2016-12-07

江添ボドゲ会@12月24日

12月24日に私の自宅でボードゲームを遊ぶ会を開催することにした。参加方法と会場の場所は以下の通り。

江添ボドゲ回@12月24日 - connpass

参考書に昔の技法を書くべきか:C++17のコンパイル時分岐

今、C++17のライブラリの参考書を書いているのだが、C++14時代の、今は現役だが、もうすぐ古代の技術になる技法を紹介すべきかどうか迷っている。

問題はコンパイル時分岐だ。たとえば、イテレーターがランダムアクセスイテレーターかどうかで、最適な処理が異なるアルゴリズムがあったとする。以下のように書けばいいだろうか。

template < typename Iterator >
void algorithm( Iterator first, Iterator last )
{
    if ( std::is_same<
            std::random_access_iterator_tag,
            typename std::iterator_traits<Iterator>::iterator_category
        >{}
    )
    {
        // ランダムアクセスイテレーターに特化した高速なアルゴリズム
        first + 1 ; // ランダムアクセスイテレーターの処理の例
    }
    else {
    // Forward Iteratorにも対応できるアルゴリズム
    }
}

残念ながら、このコードにランダムアクセスイテレーター以外を渡すとコンパイルエラーになる。その理由は、イテレーターと整数をoperaotr +に渡しているからだ。これはランダムアクセスイテレーターしか提供していない操作だ。

コンパイルエラーを防ぐには、あるテンプレートコードが条件次第で実体化される措置が必要だ。つまり、コンパイル時分岐が必要になる。

C++14でコンパイル時分岐を実現する方法はふたつある。関数テンプレートのオーバーロードを使う方法と、テンプレートの特殊化(部分的特殊化)だ。

関数テンプレートのオーバーロードを使うには、以下のようにiterator_tagでオーバーロード解決を行う。


template < typename Iterator >
void algorithm_impl( Iterator first, Iterator last,
    std::random_access_iterator_tag )
{
// ランダムアクセスイテレーターを必要とする処理
}

template < typename Iterator >
void algorithm_impl( Iterator first, Iterator last,
    std::bidirectional_iterator_tag )
{
// 双方向イテレーターを必要とする処理
}

template < typename Iterator >
void algorithm( Iterator first, Iterator last )
{

    algorithm_impl( first, last,
        typename std::iterator_traits<Iterator>::iterator_category{}
    ) ;
}

テンプレートの特殊化は特にひねりはない。

template < typename T >
struct algorithm_impl
{
template < typename Iterator >
static void process( Iterator first, Iterator last )
{
// 前方イテレーター以上が必要な処理
}

} ;

template  <>
struct algorithm_impl< std::random_access_iterator_tag >
{
template < typename Iterator >
static void process( Iterator first, Iterator last )
{
    first + 1 ;
}

}

template < typename Iterator >
void algorithm( Iterator first, Iterator last )
{

    algorithm_impl<
        typename std::iterator_traits<Iterator>::iterator_category
    >::process( first, last ) ;
}

このようにコンパイル時分岐は実現できるのだが、C++17ではconstexpr ifが入ったことでこのような技法は古臭いハックに成り下がってしまった。

template < typename Iterator >
void algorithm( Iterator first, Iterator last )
{
    using iterator_category = typename std::iterator_tratis<Iterator>::iterator_category ;

    // ランダムアクセスイテレーターの場合の処理
    if constexpr ( std::is_same< iterator_category, std::random_access_iterator_tag >{} )
    {
        first + 1 ;
    }
    // 前方イテレーター以上
    else
    {
    }
}

constexpr ifがあれば、昔の泥臭いコンパイル時分岐ハックはいらなくなる。とすれば、参考書にわざわざ昔のハックを書く必要はない。

とはいえ、それはC++17が普及してからの話だ。C++17が制定されるのにまだ1年かかり、GCCやClangの規格準拠のC++コンパイラーの安定版がリリースされるまでに数年かかり、普及には更に時間がかかる。

とはいえ、歴史を振り返れば、かつてのenumハックがstatic constな整数型のデータメンバーになり、今ではstatic constexprなデータメンバーになっているのを考えると、わざわざ昔のハックを載せる必要はないように思える。

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2016-12-01

AWSのアクセスキーをハニートークンとして使うアイディア

Early Warning Detectors Using AWS Access Keys as Honeytokens

この発想はなかった。

AWSのアクセスキーはハニートークンとして使える。

ハニートークンとは、普段使用しないものが使用されたことを検知して、意図しない利用を検知するトリックである。例えば、通常ならば使われないメールアドレスをパスワードとともに、自分しかアクセスできないストレージに格納しておく。その状態で、もしメールサーバーにログインされた場合は、自分しかアクセスできないはずのストレージに他人がアクセスして、マヌケにもメールアドレスとパスワードをストレージ上に保存しているのを発見して、利用を試みたということになる。つまり、侵入を検知できる。

AWSのアクセスキーは、ハニートークンに使うことができる。AWSに権限を持たないユーザーを追加して、そのユーザーでアクセスキーを発行する。アクセスキーの使用を検知してログをとったりアラートを飛ばしたりするために、AWSのCloudTrail/CloudWatchを設定する。あとはこのアクセスキーを自分しかアクセスできないはずの秘密の場所にばらまいておけばいい。たとえば、

  • サーバーのストレージ、特に ツールが慣習的に使う~/.aws/credentialsなど
  • 自分のローカルのコンピューターのストレージ
  • アプリケーションとかsystemdの設定ファイルの中
  • GitHubのプライベートレポジトリ

その後、アクセスキーが使われた場合、自分以外の誰かが自分以外には本来アクセスできないはずのストレージにアクセスしたということだ。

この方法の素晴らしいことには、AWSのインスタンスは立ち上げないため、金がかからないということだ。アクセスキーは無料でいくらでも発行できる。

2016-11-15

C++標準化委員会の文書: P0480R0-P0489R0

P0480R0: Explicit type checking with structured bindings

構造化束縛に型を制約できる機能を追加すべきではないかという提案。

我々は変数の型に制約をかけられる。

SpecificType var = func() ;
// 間に長いコード
process( var ) ;

このように書いた場合、funcの返す型はSpecificTypeに変換可能であり、processはSpecificTypeを受け取るという制約を書いたことになる。後にfuncやprocessの定義が書き換わって、このコードが通らなくなった場合は、コンパイル時に発見できる。

auto var = func() ;
process( var ) ;

このように書いた場合、型に制約がかからない。

構造化束縛では、型に制約をかす方法がない。ライブラリである程度の制約をかすことはできるが、そのためには冗長なコードを書かなければならない。構造化束縛で型に制約をかける機能が必要ではないか。

[PDF] P0481R0: Bravely Default

デフォルトのコピーコンストラクターがあるならば、デフォルトのoperator ==を生成しようという提案。

そして、operator ==が定義されていて、operator !=が定義されていないならば、デフォルトのoperator !=を生成する。

コピーは等価と深く結びついているので、この挙動は問題がないという主張。

なお、タイトルはスクエアエニックスから出された3DSのゲームが元ネタだという。タイトルは完全に意味不明だが、この提案に不思議と合っているから使ったという。

P0482R0: char8_t: A type for UTF-8 characters and strings

UTF-8文字型であるchar8_tの提案。

UTF-8文字列リテラルの型もchar8_t[]型になる。

移行のために、char8_t[]からchar[]への暗黙の型変換を追加する。この暗黙の型変換を追加するには標準変換の細かいルールを変更しなければならないので、最初からdeprecated扱いで入れるのもありだ。

std::u8stringからstd::stringへの暗黙の変換も提供する。

必ず入れなければならない。

[PDF] P0483R0: Extending Memory Management Tools, And a Bit More

T型の値を参照するイテレーター[first, last)を受け取り、未初期化のメモリを参照する出力イテレーターoutに対して、T型がnoexceptなムーブを提供していればムーブ構築を、そうでなければコピー構築を行うアルゴリズム、uninitialized_move_if_noexcept(first, last, out)の提案。

実装は簡単だがあっても困らないだろう。

[PDF] P0484R0: Enhancing Thread Constructor Attributes

C++のスレッドライブラリを使わず、実装依存の独自拡張のスレッドを使う理由に、スレッドに対して様々な実装依存のオプションを指定したいという需要がある。

オプションというのは、例えばスレッドの優先度、アフィニティ、スケジューリング戦略、スタックサイズ、スタック拡大の有無などだ。

これらのオプションをどうやって指定するか。実装がサポートしていない無効なオプションを渡した時にどう通知するか。実装がサポートしているオプションをクエリーする方法などについて、どのように設計すればいいのかということについて軽くまとめている。特に提案はない。

[PDF] P0485R0:Amended rules for Partial Ordering of function templates

テンプレートのpartial orderingの文面に考慮漏れがあり、パラメーターパックが関わった時に、関数テンプレートのテンプレートの実体化が曖昧になる問題を修正。

[PDF] P0486R0: for_each_iter algorithm proposal

参照する値ではなくイテレーターを得るfor_each_iterアルゴリズムの提案。

std::vector<int> v = { 1,2,3,4,5 } ;
for_each_iter( begin(v), end(v), [](auto && i )
    { std::cout << *i << '\n' ; } ) ;

ありそうでなかった。

P0487R0: Fixing operator>>(basic_istream&, CharT*) (LWG 2499)

以下のコードはバッファーオーバーフローの危険性がある。

char buffer[32] ;
std::cin >> buffer ;

C11でgetsが廃止されたように、operator >>( basic_istream &, charT * )も廃止しようという声がある。このオーバーロードは廃止すべきだが、以下のように変更してはどうか。

template<class charT, class traits, size_t N>
  basic_istream<charT, traits>& operator>>(basic_istream<charT, traits>& in,
        charT* scharT (&s)[N]);

これでバッファーオーバーフローの危険性はなくなる。

ついでにstd::arrayにも対応させよう

template<class charT, class traits, class arrayT>
  basic_istream<charT, traits>& operator>>(basic_istream<charT, traits>& in,
        charT*arrayT&& s);

という提案。安全のために採用されるべきだ。

[PDF] P0488R0: WG21 Working paper: NB Comments, ISO/IEC CD 14882

現在のドラフト規格の文面に対するNBコメント集

[PDF] P0489R0: WG21 Working paper: Late Comments on CD 14882

NBコメントの締め切りまでに提出が間に合わなかったコメント集

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2016-11-14

C++標準化委員会の文書: P0471R0-P0479R0

P0471R0: Single argument std::inserter

引数が1つのinserterを追加する提案。

vectorの要素をすべてsetにコピーする場合、inserterを使うと便利だ。

std::vector<int> vector ;
std::set<int> set ;

std::copy( begin(vector), end(vector), std::inserter( set, begin(set) ) ) ;

問題は、inserterの第2引数は、この場合何の意味も果たしていないということだ。第2引数はbegin(set)でもend(set)でも挙動は変わらない。ならば、inserterに引数を1つしか取らないオーバーロードを追加すべきではないか。

引数を1つしか取らないinserter( Container c )は、inserter( c, c.begin() )と同じ意味になる。

これは入るべきだ。

P0472R0: Put std::monostate in <utility>

<variant>にあるstd::monostateを<utility>に移動する提案。

monostateは1値を表現する型である。monostateは1種類の状態しか取らない。monostateは比較演算子をサポートしている。この特性は汎用的に便利なので、variant以外の場面でも使いたい。monostateだけを使うのに<variant>に依存させるよりは、<utility>に移したい。

利用例としては、テンプレートコードがうっかり型独自の操作に依存しているかどうかを調べるテストの入力として、futureなどで値を持たないことを意味するためにvoidを渡しているが、voidは特殊な特性があり扱いづらいため、voidの代わりとして渡すことが上げられている。

voidは完全型にする提案が上がっているが、まあ、別にutilityでもいい気はする。

P0473R0: + for std::vector concatenation

operator +とoperator +=でvectorを連結できる機能の提案。まるでbasic_stringのようだ。

int main()
{
    std::vector<int> v1 = { 1, 2, 3 } ;
    std::vector<int> v2 = { 4, 5, 6 } ;

    auto v3 = v1 + v2 ;
    v3 += v1 ;

    // v3の中身は{1,2,3,4,5,6,1,2,3}
}

いまさら? 確かに、vectorの連結はよく行う処理ではあるので、簡単にかけるのは便利なのだろうが。

P0474R0: Comparison in C++: Basic Facilities

partial, weak, total orderの3種類の比較を提供する関数群の提案の文面案

P0475R0: LWG 2511: guaranteed copy elision for piecewise construction

C++17でコピー省略が必須になったので、CopyConstructible要件を付けなくて良くなった箇所から要件を取り除く提案。

P0476R0: P0476r0: Bit-casting object representations

ビット列を指定した型として解釈するライブラリ、bit_cast<To>(From)の提案。

ビット列を型として解釈するには、reinterpret_castやunionがよく使われるが、これには未定義の挙動の問題がある。規格に詳しいプログラマーはstd::aligned_storageとmemcpyを使うが、memcpyはconstexprではない。そこで、constexprなビット列キャストライブラリを追加する。

[PDF] P0477R0: std::monostate_function<>

関数ポインター、メンバー関数へのポインターのラッパーライブラリ、std::monostate_functionの提案。


void f() { }

struct X
{
    void f() { }
} ;

int main()
{
    std::monostate_function<&f> f1 ;
    f1() ; // fを呼び出す

    std::monostate_function< &X::f > f2 ;
    X x ;
    f2( x ) ; // X::fを&xをthisとして呼び出す
}

C++17から新しく入った非型テンプレートパラメーターに対するautoを使っているので、テンプレート実引数には値を指定するだけでよい。


template < auto Callable >
struct monostate_function
{
    template < typename ... Types >
    constexpr
    auto operator () ( Types ... args )
    noexcept( std::invoke( Callable, std::declval<Types>... ) )
    {
        return std::invoke( Callable, std::forward<Types>(args)... ) ;
    }
} ;

なぜこんなライブラリが必要なのか。関数ポインターを呼び出したければそのまま呼びだせばいいのではないか。一見するとそう思うかもしれない。このライブラリの目的は、非型ではなくて型を受け取るテンプレートに関数ポインターを渡すためのものだ。

当然ながら、関数ポインターは値である。値は型ではない。型ではないものは型テンプレートパラメーターには渡せない。

たとえば、setの比較関数に独自のcompare関数を使いたいとする。以下のように書ける。


struct UserData { /* データ */ } ;
// UserData型を比較する既存の関数
bool compare_UserData( UserData const & a, UserData const & b ) ;

int main()
{
    std::set< UserData, decltype( &compare_UserData )> set( &compare_UserData ) ;
}

これは甚だ冗長だ。かならずcompare_UserDataを呼び出す型ががあれば、setのコンストラクターに関数ポインターを渡す必要はない。そこで、以下のように書ける。

struct call_compare_UserData
{
    bool operator ()( UserData const & a, UserData const & b )
    {
        return compare_UserData( a, b ) ;
    }
} ;

int main()
{
    std::set< UserData, call_compare_UserData > set ;
}

しかし、これでは関数ごとにクラスをつくって引数を転送するだけのボイラープレートコードを書かなければならない。そこで、monostate_functionの登場だ。

std::set< UserData, std::monostate_function< compare_UserData > > set ;

このように簡単に書ける。

また、unique_ptrにデリーターをわざわざ書かなくても、引数さえあうのであれば、monostate_functionが使える。例えば、mallocで確保したメモリはfreeで解放しなければならないが、monostate_functionを使えば、以下のようにunique_ptrのデリーターが書ける。

int main()
{
    std::unique_ptr<int, std::monostate_function<&std::free> >
        ptr( reinterpret_cast<int*>(malloc(sizeof(int))) ) ;
}

なかなか悪くない。

[PDF] P0478R0: Template argument deduction for non-terminal function parameter packs

Variadic Templatesが最後のテンプレートパラメーターではなくても、実引数推定を行えるように制限を緩和する提案。

以下のように書けるようになる。

template < typename ... A, typename B > struct A { } ;
template < typename A, typename ... B, typename C > struct B { } ;

Variadic Templatesはテンプレート内に1つでなければならない。

これにより、パラメーターパックの最後の要素を取得したり、引数の順序に自由度が出せたりする。

これは当然入るべきだ。

P0479R0: Attributes for Likely and Unlikely Branches

条件分岐の分岐が実行される頻度をヒントとして与える属性、[[likely]]と[[unlikely]]の提案。

条件分岐で、どちらかの分岐がほぼ実行されることが事前に予測できる場合、これをコンパイラーに伝えると、よりよいコードを生成できる。また、現在の深いパイプライン、高度な分岐予測になったアーキテクチャ上でも、条件分岐の結果があらかじめ予想できるのは都合がいい。

GCCとClangには、__builtin_expectedという拡張機能がある。これを使って、ある分岐の選択が期待できるかどうかをコンパイラーにヒントとして与えることができる。既存のコードを調べたところ、__builtin_expectedを使うコードのほとんどは、

#define likely(x) __builtin_expect(!!(x), 1)
#define unlikely(x) __builtin_expect(!!(x), 0)

このふたつのマクロだけで用が足りる。現在、likelyとunlikelyを最も使っているのはおそらくLinuxカーネルで、likelyを3000回以上、unlikelyを14000回以上使っている。他にも、Mozillaはlikelyを200回以上、unlikelyを7000回以上使っている。chromiumも数百回以上likelyとunlikelyを使っている。

そこで、分岐が選ばれることが期待できる[[likely]]と、分岐が選ばれないことが期待できる[[unlikely]]というふたつの属性を追加する。これにより、コンパイラーにヒントを与えることができる。

この属性は、conditionに記述できる。

// エラーは通常起こらない
if ( [[unlikely]] check_error() )
{
    do_error_log() ;
}

// 計算は通常ならばすでに終わっている。
if ( [[likely]] is_calculation_completed() )
{
    show_result() ;
}

入るべきだ。

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CC BY-ND 4.0: Creative Commons — Attribution-NoDerivatives 4.0 International — CC BY-ND 4.0