2018-05-03

LLVMで5番目に貢献の多い開発者、LLVMの最近のSJW運動に反対して開発をやめると表明

One Of LLVM's Top Contributors Quits Development Over CoC, Outreach Program - Phoronix

[llvm-dev] I am leaving llvm

Rafael Avila de Espindolaは2006年からLLVMに対して4300以上もコミットした開発者で、現在LLVMの全Authorの中で第5位のコミット数を保有する開発者である。Rafaelは最近のLLVM Code of Conductと今年のアウトリーチプログラムへの参加を、「社会不正義」(Social Injustice)だと吐き捨ててLLVMの開発をやめる声明を出した。

LLVMのCode of Conductは以下の通り。

LLVM Community Code of Conduct — LLVM 7 documentation

  • 仲良く辛抱強くやれよ
  • 新参は歓迎しろよ
  • 迷惑かけんなよ
  • 尊敬しろよ
  • 言葉遣いには気をつけるのと、あと親切にしてやれよ

Code of Conductは、過去に様々な自由ソフトウェアコミュニティが取り入れて、その結果政治的な問題を引き起こしてきた歴史がある規約だ。そもそも存在自体が政治であるものを入れると純粋な技術から遠ざかり、些細な言葉遣いのような揚げ足取りの政治に終始するのは当然であると言えよう。

アウトリーチプログラムというのは現在コミュニティでマイノリティである属性を持った開発者を新規に確保するための優遇措置だ。属性というのは主に性別で、具体的には女性のことだ。しかしこれは純粋な技術力ではない性別のような条件で人を優遇するということであり、これはまさに性差別そのものである。これをやりだすと人物が純粋な技術力で評価されず、たまたまマイノリティの性や宗教や門地のような属性を持っていたというだけで優遇される。

私がさる理由はコミュニティの変化のためだ。現在のライセンス変更の議論は私がGCCの開発をしていた頃の自由ソフトウェア財団の政治を彷彿とさせるものがある。これだけではまだ去るほどの理由ではない。コードと同じように、LLVMはまだ最適なライセンスを選択しているし、コミュニティの変化というのがライセンスの変更だけであれば、まだ続けることもできた。

私が受け入れられないコミュニティの変化は社会不正義運動がはびこっていることだ。私がLLVMに参加したとき、誰も私の宗教や政治信条について疑問を呈するものはいなかった。我々は皆、良きコンパイラーフレームワークを作ることに注力していた。

ここ最近、Code of Conductやらが採用された。これによれば、コミュニティはすべての「政治信条」を歓迎するよう務めるとある。しかし、Code of Conductの存在に反対する政治信条を持つ者は歓迎できない。そして、カンファレンスに参加するにはCode of Conductへの同意が必要であるからして、私はもはや参加することができなくなった。

トドメの一撃は、LLVMがある団体と手を組んだことで、この団体は公に性別や門地による差別を行っている。これは私の倫理と真っ向から対立するものであり、私はこの手の輩と一緒くたにされないために、プロジェクトを去る必要がある。

RafaelのMLへの投稿は、最後に"So long, and thanks for all the bugs,"(さよなら、いままでバグをたくさんありがとう)と締めくくっている。銀河ヒッチハイクガイドへのリファレンスのようだ。

12 comments:

Anonymous said...

アファーマティヴ・アクション

Anonymous said...

アウトリーチーさんはたしかに公然と逆差別唱えてるアカン感じの団体なのだが、Code of Conductに関しては「技術力があっても口が悪いやつは無理ね」とするか「技術力があっても暴言耐性のない人は居辛くて現実的に居れない」のどちらを取るかという悩ましい問題よなぁ
今は前者にするのがトレンドなのだがフリーソフトウェア界隈の大物に口が悪い人が多めというのがまた問題難しくしてる感

Anonymous said...

私はIT業界で働くことを目指して挫折し、見事に経済的理由から実家を離れられない30・40台になってしまった「元」プログラマーです。

経営問題で世を騒がせた某社で「うちでは女性は採らない」と宣告される以外にも、性別を理由に色々嫌な思いばかりしてきました。
10年ほど粘って実際にITでは1円も金を稼ぐことができなかったのでほぼネット上の体験ですが、まず女性であると身元を明かしただけで、他のワナビーとほとんど同じことを(しかし格段にお行儀よく、礼儀正しく)しても格段に風当たりの強いあしらいを受けました。些細な間違いを情熱的に叱責してくださる方が大勢いらして、技術的な内容のコメントやブログを投稿すれば全く無視されるか、すぐに近年で言うところの炎上状態に発展するかのどちらかでした。
ブログブームが一息ついた今でもたまに「勉強途中のことを積極的にアウトプットしていくだけで飛躍的に成長できる」メソッドをもてはやす方を見かけますが、私や他の女性が体験したことを思えば信じられません。

こうなると早晩もうアイデンティティと紐づけられやすい形ではアウトプットしないことに決めて、ROMで情報収集することに専念することになります。それでもそうして男性中心で形成された業界全般が、なんというか、女性への自覚ない敵意に満ちた感じなんですよね。
暴力的な内容の18禁ポルノやフェティシズムについて技術関係の話題を扱うのと同じブログに頻繁にする人や、ネットが母親との虐待的な親子関係をありとあらゆる成熟した女性に投影して攻撃的に振舞う公開治療の場になってる系統の人はまだ序の口です(ストレスを感じない訳ではないですが)。
とてもじゃないが人様のブログコメントには書けないような罵倒語を使って女性嫌悪的な発言を繰り返し、あまりにもひどいので抗議したらと「女はインターネットを見るな」と言い放つ人に「『男の技術者の方が有能であるという偏見を取り払って女性技術者を積極的に雇う』なんて男性差別だ、そうしたら絶対男が大勢失業するじゃないか」とのたまう方、男女の平等を定めて女性に選挙権を与えた現行憲法は誤りであると主張される、おそらく今だとリタイア年齢の人、極めつけは「男女の賃金格差は明らかだが解消する必要はない、それをやられると僕のような子持ち既婚の男が妻子を養えなくなるから」と平然と言い放つ方(お子さんが女性で結婚の見込みもなく、私のようにまともな収入のある仕事に就けず、パラサイトシングルになって老後の生活資金を食いつぶすようになったらどう思うんでしょうね)。番外編としてかなりきついのが「ブスが殴られるだけで笑える」系の、根本的に価値観が違う人。
誰とも直接会うどころか、直接メールやメッセンジャーでやりとりしたことすらありません。でも、なんとかしてIT業界に入ろうと努力している間はずっと、こうした方々を見るたびに不安に襲われてきました。ああ、あんな人と同じ職場で働くかもしれないと思うと気が重いなあと感じていました。ましてやこういうたち人が上司や人事担当者だとしたらどうでしょう?
「技術系コミュニティの一員である」ということに関して、一度も安全で歓迎されていて、まさしく海外のコミュニティで言われるところの「フェアな扱いを受けている」と感じたことは一度もありませんでした(学生時代を含む)。

多分(お金が十分にあればなんとかなったであろう)健康問題のためにそんなに老い先長くはありませんが、それを除いても、私が生きているうちにIT業界が女性にとって働きやすい場所になることはないのではないかと感じています。前世紀の終わりごろから、状況は改善するどころかバックラッシュが増えるばかりでした。10年あまり関わってきて、本当に不快感と不信と時代遅れの知識以外に何一つ手元に残る結果がなかったことに今改めて愕然としています。
「さようなら、今まで不公平をたくさんありがとう」とでも言えばいいのでしょうか。

Anonymous said...

アファーマティブアクションを「逆差別」と呼ぶのは、「現状は公平であり、マジョリティは不当な優遇を受けていない」ということを暗黙に仮定していると思う。

Anonymous said...

それは「あなたがマイノリティであるがために不当に扱われたことの告発」であって、この記事の本題の「マイノリティ確保のために恣意的に評価基準を下げる手法の是非」とは関係がないのではないですか?

Anonymous said...

アウトリーチプログラムなんて、まさにワナビーと真面目に技術者として働こうとしている同一視することになるんじゃないかという気がする。
私には、 (女/黒人/他の何らかの属性) だから技術力が低くても受け入れられていると見なされるのは到底耐えられない。

Anonymous said...

こういった動きは初耳だったので、率直な感想
規範としておかないと、日和見な集団が、「どうしようもなく口が悪いが、腕はある人」に合わせだすんじゃないかな
「他人が見て面白いことを書きましょう」は名言だと思う。(ソースコード/MLに対しても)

Anonymous said...

そういえば以前女性のカーネル開発者がMLにおける罵倒やめろって言ってた話をこのブログでしていたこと( https://cpplover.blogspot.jp/2013/07/linuxml.html )を思い出しました。

Anonymous said...

7コメさんのいう「どうしようもなく口が悪いが、腕はある人」に合わせた(あるいは彼らを見て彼ら以上に口の悪さをエスカレートさせた)結果が3コメのような技術力以前にマイノリティであるだけで他の同程度の技術力のある人と比べ露骨な待遇の差を受けたりマイノリティ属性への(※コードや言動そのものへではない)罵倒侮辱罵詈雑言が飛び交ったりする状態だったのだろうなぁと
圧倒的な技術力があってそれをねじ伏せていった方々もいることは認めるがやはりハードモードを現状強いられている気がする

Anonymous said...

ソフトウェアプロジェクトにもポリコレの波でしょうか。
この勢いで行けばnihonlinux(藁GGPL(藁とかはむしろ
未来を先取りしていたのかもしれませんね。

Anonymous said...

3番目のコメの人の文章を読んでいて思ったんですが。

あなたが男性に対して強烈な不信感と傍から見て憎悪に近い感情を抱くようになったように、彼らももしかしたら女性から酷い扱いを受けてきた結果として女性を憎悪するようになったのでは?全ての男性ではないかもですが。

ナード男が女性から受ける仕打ちも酷いものらしいですよ。

Anonymous said...

人間二人いれば争いを生み、三人寄れば派閥ができる、四人を超えれば殺し合う。本能です。また技術においても。そういうのがだめなら一人になるしかないんです。