テリー・グッドカインド著、魔教の黙示を読み終えた。このシリーズの、第六部に当たる。今回は、かなり良作だった。
なぜこれが良作なのか。思うに、今回の話は、あまりにも人間的だからだろう。第四部や第五部では、リチャードがあまりにも強い魔法を使いすぎていて、実感に欠けることがあったように思う。その点、第六部では、魔法が表に、あまり出てこない。もちろん魔法はたくさん登場するが、その魔法について色々と語られることがない。探偵は拳銃が如何に機能するかについて、延々と語ることがないように――。そういう意味で、テリー・グッドカインドらしい話に戻ったと思う。
今回は、凝り固まった思想を持つニッキの話だ。端的に言えば、極端な全体主義とでも言うべきだろうか。努力してパンを得るより、パンを持っている者が、自分に分け与えるべきという思想だ。もちろん、過去の歴史から散々経験したとおり、人はイデオロギーで勤労意欲が沸いたりなどしない。働きたいものが働けず、物品の流通すら制限され、明らかに衰退しているにもかかわらず、人は個人の利益以上の、社会の利益を考える世界だ。リチャードはその世界を、自らの行動を示すことで変え始める。
それにしても「気迫」(スピリット)の像を見てみたいものだ。
ローブを風になびかせ、頭を上げて、背中を弓なりに反らし、何であれ自分を拘束しようとするものには抵抗するというしるしに両脇でこぶしを固めて、外の世界を見ている。
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