2012-05-16

非商用の曖昧性と危険性

多くの不自由な著作物は、「非商用に限り利用可」などという利用許諾、あるいは利用契約を発行している。このような許諾のある著作物は、著作権が制限を受ける場合を除いて、利用してはならない。このような著作物の契約は、結んではならない。なぜならば、著作者は無知か、あるいは邪悪な意図をもってこのような設定をしているからである。

なぜ問題になるのかというと、ほとんどの場合、「非商用」の定義が明確に与えられていないからだ。定義が与えられていない場合、日本語における一般的な「非商用」の意味に従うと解釈するべきである。

派生物の複製物の譲渡や公衆送信を受け取る際に対価を支払わねばならないとしたら、多くの者が、それは商用であるとするだろう。これは納得できる。

では、無償で入手できるが、広告付きのWebページから公衆送信している場合はどうか。Web広告は、現代ではいたるところにある。Web広告では、金銭を受け取る。これは商用であるとする者もいるだろう。

つまり、非商用に限り利用可という許諾や契約の著作物は、広告付きWebページでは使えないことになる。

派生物自体は無償だが、派生物が、自分の他の商用製品を宣伝する広告である場合はどうだろうか。派生物を直接商用目的に使っていないものの、その目的は商用製品を宣伝するためである。これも商用だとみなす者は必ずいるだろう。

そもそも、その派生物をインターネット上で公開するという事は、サーバーにホストさせるという事である。派生物を複製し、公衆送信するのは、サーバーの仕事である。まさか有料のレンタルサーバーを使っていないだろうか。レンタルサーバーは万人が同意する商用である。したがって、非商用の条件に一致しないので、レンタルサーバーの運営者は著作権侵害となる。そもそも、著作権侵害を起こした主体は運営者ではなくレンタルサーバーの利用者なので、派生物を作った自分が著作権侵害者となる。

無料で広告もないレンタルサーバーか、あるいは自前のサーバーならば非商用だろうか。しかし、無料で提供されているレンタルサーバーも、何らかの方法で商業的利益を得ているだろうし、そもそもインターネットのインフラを提供する商用のISPに頼っているので、商用ではないのか。

つまり、インターネット上において、定義が曖昧な「非商用」で著作物を利用する方法は存在しない。

利用許諾に一致しない利用は著作権侵害である。契約違反は契約違反である。刑法、民法に反する行為である。

故に、著作物を「非商用利用のみ可」とする利用許諾や契約を発行している著作者は、無知か、あるいは邪悪な意図を持って、これを行なっていると考えるべきである。我々はそのような契約に応じてはならないし、著作権の制限を受ける場合を除いて、利用してはならない。

自由な著作物かどうかを見極めるのは、かくも難しい。

2 comments:

りっか said...

では世間一般に思われているような「非商用」を明示するためには、どうするべきでしょうか。

江添亮 said...

そもそも、その「世間一般」の考える「非商用」に、ものすごいばらつきがあることが問題なのです。
これは、Creative Commonsの論文でも論じられています。