古本屋で滝口入道と言うタイトルの本が売っていた。はて、滝口入道といえば、維盛の善智識だったはず。表紙には、右から左に、「道入口瀧」とかいてあった。昭和十三年出版とあった。せっかくなので買うことにした。
滝口入道とは、高山樗牛という人が書いた唯一の小説らしい小説だ。ただ、現代人がこれを読んで、小説だと見るのは難しい。というのも、本人が書いた文章というものが存在しないからだ。ほとんどが古典や漢詩や仏教書からのコピペである。現代においてこの手の小説を発表したならば、袋叩きにあうこと受けあいだが、しかし時代が時代と言うか、こんな切り貼り小説が、明示を代表する時代小説だというのだから、昔はよほど小説に恵まれていなかったらしい。
まあ、ひとつ弁護しておくと、独自の文体などに価値を見出される時代ではなかった、と言うべきかも知れない。
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