今行われている、下鴨納涼古本まつりで、面白い本を見つけた。表紙には、軍談三国志と書いてある。中には、通俗三国志と書いてある。明治四十五年発行の本だ。興味深かったので買うことにした。
あとで調べたところによると、三国志演義の翻訳らしい。元禄の頃に成立したのだとか。内容は簡潔ですばらしい。興味深いのは、句読点が一切ないことと、御、申、候といった漢字に対して、特殊なくずし字のようなものが使われていることだろうか。それから、おそらくは「やう」だと思われる言葉が、「よふ」と表記されているのも気になった。また、細かいところでは、閑話休題のルビが、「あだしごとはさておき」となっているのが興味深かった。
それにしても、これはいい本を手にいれたものだ。昔、本の価値は文章量によって決まるのだと考えていたが、今は、簡潔な文章を好むようになっている。だらだらと長文を弄して説明するだけなら誰にでもできる。真の文章は、最低限の長さで内容を伝えることにあるのだ。吉川英治の三国志は、この点であまりよろしくない。いつも最期まで読もうとして、途中で諦めてしまっている。文章が無駄に長すぎるのだ。それが、この通俗三国志では、まだ44ページ目だというのに、もう呂布が死んでいる。かといって、三国志で重要な話を省略していたりはしない。なかなか表現力の高い文章だ。気に入った。
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