2008-01-25

平家物語の読書の進捗

 俊寛僧都が死ぬところまで読み終え候つるに、有王が忠義深くて神妙なりと覚え候。  俊寛が、「生きているからこそつらいのだ」ということを観じて死に行く下りは、結構人の心を捉えたと見え、昔からいろいろと同人物が作られている。例えば、芥川龍之介など。 青空文庫 芥川龍之介 俊寛  話の内容を語ってしまうと、読んでいてつまらなくなってしまうので、あえて語らないが、芥川龍之介の俊寛は、かなりポジティブな性格をしている。しかし、この文章を書くためには、源平盛衰記を読んでいなければならないし、仏教にも明るくなければならないだろう。芥川龍之介はあまり読んでいなかったのだが、これを機会に、他の作品も読んでみることにしよう。  しかし、こういう楽しい俊寛を書いたりしているのに、結局ブロバリンを大量服用して自殺するってのも、解せない話だけれど。  ちなみに、源平盛衰記というのは、平家物語を詳しくし、さらに中国や仏教の故事を、恐ろしく大量に盛り込んだものだ。  例えば、冒頭はおなじみの、祇園精舎の鐘声~で始まるが、まず忠盛が殿上人となって、闇討ちのはかりごとが持ち上がったとき、家貞をボディガードにつけるのだけれど、官人達は、庭にかしこまっている家貞を怪しんで、何者ぞ、と「六位をもって云わせければ」の部分が、「頭左中弁師俊朝臣、蔵人判官平時信を召て」と、具体的な役職と名前が出てきていたりする。  木刀と家貞のおかげで闇討ちはなかった、とここですんなり終わらず、中国の故事、鴻門の会が語られるのだけれど、それが、沛公が項羽に先んじたことからはじまり、司馬遷の史記の、あの有名な部分を余すところなく語りだすという次第。  ちなみに、かの徳川光圀は、源平盛衰記こそもっとも正しく歴史を伝えていると考え、多数の平家物語の異本や、吾妻鏡、玉葉、山槐記などといった文献まで参考にして、源平盛衰記との比較研究をさせた。この研究結果は、参考源平盛衰記という本になっている。

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