2013-09-24

ValveがSteamOSを発表

SteamOS

紹介するのがはばかられるが、DRM汚染された不自由なゲームソフトウェアの流通であるSteamを行なっているValveが、SteamOSなるものを発表したようだ。

SteamOSは、現段階ではマーケティング部門が宣伝文句を書いたとみえて、詳細は分からない。単にLinuxベースとのみ書かれているが、おそらくは、またぞろ新たなGNUにLinuxカーネルを組み合わせたシステムを土台にしたディストロのひとつだろう。

Valveが独自のディストロに走るのは、分からないでもない。というより、必然的とも言える。ValveがUbuntu用に提供している不自由なゲームを流通させるためのSteamクライアントの仕組みというのは、ゲームのプログラムから必要になる主要なライブラリを、すべてバイナリで提供し、ライブラリへのパスを上書きしてゲームのプログラムを実行しているからだ。これは、ライブラリのバージョンや挙動を固定するためだ。

ValveがWindowsから離れたがっているのは、他でもない。Microsoft自身が、ソフトウェアの流通まで担おうとしているからだ。これは、Steamと直接競合する。Gabe NewellがWindowsを批判しているのは、結局このためだ。デフォルトの力は強い。OSに最初から組み込まれている機能と、あとから手動で追加しなければならない第三者の機能が競合して勝てるわけがない。Netscape NavigatorがIEに負けたのもこのためだ。デフォルトで入っている存在は強い。

宣伝文句では、素早いアップデートや進化などと書いてあるが、疑わしいものだ。というのも、進化というには、Linuxカーネルだけではなくライブラリも更新しなければならない。しかし、バイナリで配布する不自由で融通の効かないプロプライエタリなソフトウェアだからこそ、ライブラリを固定したいのだろう。ということは、ライブラリを変えることはできない。

不自由なソフトウェアのゲーム開発者というのは無責任で、いや、無責任だからこそバイナリで配布するのだが、一度発売したものは、将来のOSの変更に対応しない。そのため、OSごと保存しなければ、ソフトウェアの実行環境を保存できない。数十年もすると、OSが動くハードウェアがなくなるので、そのOSが動くハードウェアのエミュレーターまで保存しなければならなくなる。

Linuxカーネルは、ユーザースペースのプログラムの挙動を変えないという事にかなり本気なので、Linuxカーネルの中身はともかく、Linuxカーネルをアップグレードして、ライブラリが動かなくなるという事はあまりない。

ということは、Valveがまともに進化速度とゲーム互換性を両立させたかったら、歴代のライブラリのバイナリを保存してローカルに持っておき、ゲームごとにライブラリパスを指定という馬鹿げたことをしなければならない。まあ、たぶんやるだろうと思う。

その他に営業文句の中で興味深いのは、既存の不自由なWindowsや不自由なApple用の不自由なゲームを、gaikaiのようなサーバー側で実行してストリーミングでプレイできるようなサービスも提供するらしい。

ああ、これも必要悪なのか。ストールマンのいうとおり、もたらす害悪より利益のほうが勝るのか。まあ、実際、Valveの参入はGNU/Linuxのゲームのパフォーマンス向上には、それなりに寄与しているのかもしれない。グラフィックはすでにいくらか向上させたし、いまは入力レイテンシとかオーディオのパフォーマンス向上に取り組んでいるとか。いかにもゲームらしい方向だ。不自由なOSで不自由なゲームを動かすより、不自由なドライバーとライブラリに汚染されているとはいえ自由なOSで不自由なゲームを動かすほうが、いくらかマシなのだろうか。ああ、やんぬるかな。

追記:SteamOSはどのくらい受け入れられるのだろうか。ただ、これは広く一般にというわけではなく、主にPCゲーマーを対象としている。PCでまともにゲームをやるには、自作かパーツを指定してのBTOで、さらに最低限、グラフィックカードは毎年買い換えなければならないだろう。そういう層であれば、十分に簡単なインストーラーさえ用意すれば、自力でOSをインストールする程度はわけがないだろうし、また、自由にせよ不自由にせよ、グラフィックドライバーの配布方法は、GNU/Linuxの方が洗練されている(ディストロの提供元が更新できるよう自動化が進んでいる)ので、ある意味、Windowsより楽になるわけだ。

7 comments:

Anonymous said...

記憶違いかも知れませんが、最近はWindows UpdateでNvidiaのドライバが入った気がします

Anonymous said...

>不自由なドライバーとライブラリに汚染されているとはいえ自由なOSで不自由なゲームを動かすほうが、いくらかマシなのだろうか。ああ、やんぬるかな。

鏡見ろ鏡w
あんた自身、つい最近まで自由なOSで不自由なcookieclickerをプレイしてましたがな
ハマりすぎたあまり小説まで書いてたし

Anonymous said...

linux版のsteamクライアントではユーザーが使用するライブラリを選ぶことができますよ
https://wiki.archlinux.org/index.php/Steam

Anonymous said...

Steamのライブラリはバージョンや挙動を固定していません。それに個々のゲームは独立していて、クライアントを使わずに起動することができます。
勿論、ゲームの再配布には制限がかけられていまが、Valve側による自由への配慮は最大限されているんじゃないでしょうか。

Anonymous said...

Cookie Clickerが不自由?
わざわざコピーライトとともに自由を認めるコメントを明記している作者が泣き崩れるな

Anonymous said...

FSFや江添のいう自由な利用ができないからこのブログじゃ不自由って言われてんだろ。
クッキークリッカーはFSFの定義とかOSDとかを満たしてない俺俺ライセンスだからね。
つーか作者が「広告は禁止」なんて言ってんのに自由ソフトウェアとして認められたらストールマンが発狂するwww

Anonymous said...

すべてに文句つけてるだけにしか読めないのですが。
Valveの取り組みも評価すべきだと思いますよ。もしくは単純に面白がればいいのでは。ずっこけても普通のPCとして使えるのですから。
Microsoftは、Appleストアの現時点での成功モデルを後追いしているだけで、サードパーティとWin-Winの関係を築こうとはとても見えませんからね(弱小のアイディア重視の開発メーカーは、とりこみたいといいつつ、失敗してますからね)。

こういう方が、標準化委員会とか参加しておられるのですか。。。心配ですな。