この五日間、コンピューターもインターネットも使えない場所で過ごしてきた。そこで、だいぶ前に入手していたものの、なかなか読むきっかけがなかった本を読むことにした。今回読んだのは洒落本だ。洒落本というのは、1700年代に流行った、今で言うライトノベル的な小説だ。内容は遊郭に関するもので、特に通人(遊郭に足繁く通っている者の粋)という概念を取り上げている。幕府によって規制されるまでの短い間に流行った。
洒落本の流通形態は貸本、つまりレンタルであった。そのため、個人で所蔵するということがまれであり、初版本の入手が非常に難しいそうだ。
300年前、日本では多色刷りの版木印刷により大規模な印刷が行われており、貸本屋という流通を介して本がレンタルされ、しかも当時の女郎が読んでいたのだ。これを思うと、当時の日本の識字率の高さはすごい。
読むと、当時の遊郭事情がたくさん載っていて面白い。
また、洒落本には、通人の粋という概念が強く出てくる。通人とは、毎日のように遊郭通いをしていたやくざ風の男の美学である。ただし、多くの洒落本では、通人ぶる男は、たいていうぬぼれが強く、意識的に通人ぶろうとして、やり過ぎで失敗している。洒落本で持てる男は、「むすこ」とよばれるキャラである。むすこキャラとは、若い遊郭なれしていない金持ちのボンボンだ。まあ、むすこキャラは金を持っているし、ちょっと媚をうれば女郎に本気で恋をしていい金づるになるので、遊郭でもてるのは当然といえよう。
また、当時の流行語や、通人言葉が多数出てくる。その上、表記もできるだけ発音に合わせて表記しようとした努力がみられる。
感想としては、300年前の日本語はあまり変わっていないということだ。
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