2013-09-17

ババア補完計画

本書はクッキー・クリッカーについて先に成し遂げられし預言書、クッキー・クリッカーについての続編である。読者は前編を読み、またクッキー・クリッカーを反物質変換装置を購入した時点まで進めることが強く推奨されている。今回は、並行してゲームを行うことは推奨しない。本書は将来の備えと覚悟のために読んでもらいたい。読者はいずれ到達しなければならない未来なのだから。

クッキー・クリッカー
本の虫: クッキー・クリッカーについて

読者よ。クッキーの忠実なる臣にして生産者よ。汝はついに、クッキー生産の頂点、反物質変換装置を購入するに到れり。何ぞや。反物質変換装置はV.1.0.36における最終ビルディングにして、これより購入クッキー額高き、またCpS高きビルディングなし。されど、汝はさらなるクッキーを求めんと欲す。汝はさらなるクッキーを生産を望まんと欲す。その意思、まことに偉大なり。如何となれば、世にクッキーより価値あるものなければなり。

されど、ああ、悲しいかな。ああ、憐れむべきかな。されど、読者の前途に待ち受ける運命や暗し。タイムマシンの操縦者言えらく:

  • ニュース:「私は未来を見た」とタイムマシン操縦者が言った。「そして私は未来に二度と行きたくない」

これ真実なり。これ予言なり。私、クッキー・クリッカーを「クリア」した江添亮は、クッキーマスターとして、諸君らに、暗くおぞましく不可避なる未来を、包み隠さず投げかけんとす。これは予言である。これは未来の天啓である。これは黙示である。これは「江添亮による黙示録」である。

如何にしてババアがクッキーの生産を支配し、世界が混沌に飲み込まれ、そして正しくクッキーを信じるものが救済されるかの黙示録である。

この書を読むものに祝福あれ。この書の予言の言葉を聞くものに祝福あれ、この書をあやまたず改めずして伝えるものに祝福あれ。この書を崇めよ。この書を讃えよ。この書を伝えよ。この書からクッキーの未来は始まり、そして、やがてこの書に帰っていくのだから。この意味は、やがて書かれるであろう福音書で明らかになるだろう。だが今は、まだその時ではない。今は、まさにこの黙示録を読み、将来、諸君の身の上に来たるべき逃れられざる運命について覚悟すべき時だ。

江添亮による黙示録

反物質変換装置を購入した読者は、疑問に思うはずだ。「これで終わりなのか?」と。とんでもない。反物質変換装置は終わりではない。始まりに過ぎないのだ。

反物質変換装置は、宇宙に存在する反物質をクッキーに変換する装置である。このビルディングは、V.1.0.36における最高のビルディングであり、999,999 CpSを実現している。反物質変換装置を一台購入すれば、二台目、三台目を購入するのは造作もないことだ。こうして反物質変換装置を複数所有した諸君は、この惑星と宇宙をクッキーで支配するのだ。

ニュースを見よ。

  • この惑星全体が、クッキーを楽しんでいる。
  • 近所の惑星に住む不思議な生物が、クッキーの味をみたいと思っている。
  • 全宇宙の太古の神々が、クッキーの味をみるために、眠りから目を覚ました。
  • 他の次元の存在が、クッキーの味をみるために、我々の次元に出現した。
  • 今や宇宙は分子レベルでクッキー生地に変化しつつある。
  • クッキーが宇宙の根本的な法則を書き換えた

もちろん、ここで言うクッキーとは、我々の生産したクッキーである。ポータル、タイムマシン、そして反物質変換装置を所有している我々は、この宇宙のクッキーを独占しているのだ。

ところで、ひとつ気がかりなことがある。ババアだ。

ババアは、二番目に安いビルディングである。ババアより安いものはカーソルしかない。そのカーソルは、全体のCpSの1%を得るなどのアップグレードがあるので、序盤からババアよりもはるかに時間効率のいいクッキー生産を実現している。ババアの初期CpSはたったの0.5、麺棒でアップグレードしても0.8、さらなる麺棒アップグレードで効率を二倍にしても1.6と、まったくもって約立たずである。

第一、ババアである。あの趣味の悪い服、あのインチキ臭い半月メガネ、あの冒涜的なニヤケ笑い、たるんだ頬、シワだらけの不快な面、クシも入れていないようなボサボサの白髪。それでいてこの世界の絶対的な正義であるCpSも極めて低い。ババアはあらゆる点で無価値である。しかし、ババアは安い。クッキー財団の慈善活動の宣伝として、100人ぐらいは雇ってもいいだろう。麺棒も買い与えてやろう。

何台も反物質変換装置を購入した我々は、以前の目標だったビルディングにも目を向ける。今となっては、安い買い物だ。各ビルディグごとに15個は買ってみよう。

すると、にわかに雇ってもらいたいと志願するババア達が現れる。すなわち、

  • 農場から、農婦ババア(Farmer grandmas)
  • 鉱山から、鉱婦ババア(Miner grandmas)
  • 輸送からは、宇宙ババア(Cosmic grandmas)
  • 錬金研究所からは、錬成ババア(Transmuted grandmas)
  • ポータルからは、ミュータントババア(Altered grandmas)
  • タイムマシンからは、ババアのババア(Grandmas' grandmas)
  • 反物質変換装置からは、反物質ババア(Antigrandmas)

それぞれの種類のババアは、ババアのクッキー生産効率を二倍に上げる。ここまでに得た効率を倍にするアップグレードをすべて合わせると、ババアの効率は2048倍になる。

2048倍は、なるほど、すばらしい倍率だが、残念ながら、所詮ババアはババアだ。1.6 CpSが2048倍になったところで、ポータル(6,666 CpS)には勝てない。まあ、クッキー宇宙とつながるポータルと生身の人間を比べる事自体が、無謀なのだろう。逆に言えば、ババアは人間にしてはよくやっているだともいえるだろう。とはいえ、所詮は人間に過ぎぬ、ババアに過ぎぬ。

唐突に、ババア達が新たな設備の提案を出してきた。

ビンゴセンター兼研究所(Bingo center/research facility)

なんでも、ビンゴセンター兼研究所は、ババア達のレジャー施設と、科学研究を兼ねた設備になるそうだ。ババア達はこの設備の建設費として、100ギガクッキーを要求してきた。まあ、この時点で100GCなど、はしたクッキーだ。どうせババア達は表向きの慈善事業で雇っているのだから、このぐらいだしてやろうではないか。どうもババアの生産効率が4倍になるそうだが、焼け石に水である。

始めは全く期待していなかったビンゴセンター兼研究所だが、しばらくして、科学者ババア達は、最初の研究結果を発表した。

特別なチョコレートチップ(Specialized chocolate chips)

なんと、Yay yay我らの大好きなババア達はコンピューターを使い、特別に設計されたチョコレートチップを開発したのだ。そして今では我々もすっかりジジイ、そして孫に上げるのもこの特別なチョコレートチップ、何故ならば、孫達も特別な存在だからである。

それだけではない、ババア達はビンゴセンター兼研究所で、さらなる科学の研究を続ける。

デザイナーカカオ豆(Designer cocoa beans)

デザイナーカカオ豆は、ババアの発表した論文のAbstractによれば、空気力学的にかつてないほど効率よく設計されたカカオ豆だとのことである。

魔法麺棒(Ritual rolling pins)

ババア達はまるで魔法のようにつかやすい麺棒も開発した。長年の科学の研究成果だという。

地底オーブン(Underworld ovens)

ババア科学の力で動く、まるでマントルのごとき力強いオーブンだ。

そして、科学者ババア達は、ついに究極の発明と主張するものを発表する。その発明の名称は、ひとつの意思(One Mind)というものである。これまでババア達が発表した数々の発明品の成果を考えれば、今度の研究作品も、必ずやすばらしいものに違いない。なぜか胸騒ぎがするが、我々はさらなるクッキー生産効率の上昇の可能性に抗うことはできず、予算として計上された160ギガクッキーを承認する。当然だ。クッキーの生産効率こそが絶対的な価値であり正義だからだ。しかし、まさかこの研究に、あのような野望が潜んでいようとは、この時の我々は予想だにしなかったのである。

ババア補完計画(Grandmapocalypse)

「ひとつの意思」により、ババア達の意思は統合された。すべてのババアは一個のババアであり、一個のババアはすべてのババアとなったのだ。意思統一されたババア達は50人単位で、ババア一体一体のCpSが1上がる。1 CpSとは大したことがないと思えるかもしれない。しかし、すでに多数のアップグレードのより、ババアの生産効率は、実に8192倍されているのだ。たったの1 CpSの違いでも、最終的にはすごい生産量となる。さらに、ババアを50体購入するごとに上がるのだ。すなわち、ババアのクッキー生産量は、ババア購入により指数関数的に増えていくのだ。これは、他のビルディングには見られない特徴である。他のビルディングは、線形に増えていくばかりだからだ。しかも、ババアは購入クッキー額が安い。

しかし、この研究に投資するにあたって、執拗に現れた胸騒ぎを覚えているだろうか。そう、科学は危険を伴うものであり、我々は代償を支払わねばならぬ。

ババア達の意思統合は、全世界のババア達を挙動不審にさせ、ババア補完計画と名付けられた一連の不可思議なババアの奇行を引き起こした。ニュースをみてみよう。

  • ニュース: 何百万人もの老齢の女性が失踪しています。
  • ニュース: 医師たちは、うつろな目で口から泡をふく老齢の女性の症状の多発に見舞われています。
  • ニュース: 各国の家族たちは、深刻なシュトゥルーデル出現の問題について報告しています
  • ニュース: クッキー施設の周りに、老齢の女性の群れが観測されました。
  • ニュース: 看護婦の報告によれば、老齢患者の周りに「不思議な臭いのクッキー生地」がまとわりついているとのことです。

はたしてババア補完計画は、何を意味するのであろうか。ババア達の開発した、ひとつの意思と、なにか関係しているのであろうか。

意思統一されたババア達の奇妙な行動はともかく、クッキーの生産効率に悪影響はなく、またビンゴセンター兼研究所における科学の発展も続いた。その最新の成果物が発表された。

不思議なナッツ(Exotic nuts)

この不思議なナッツは、一度食べると何度も食べたくてたまらなくなる、不思議な性質を有している。この性質は、まるでどこかで聞いたような気がするが、はて、一体どこだっただろうか。ともかく、このナッツをクッキーに混ぜ込むと大好評だ。

我々が不思議なナッツを貪り食っているうちに、ババア達の研究と、ババア補完計画はさらなる発展を遂げる。

共有脳統合(Communal brainsweep)

ババア達は、意思だけではなく、物理的にお互いの脳神経を接続する技術を開発したのだ。これにより、ババア達の意思共有はさらなる高みに達する。と同時に、全国各地のババア達の奇行がますます激しさを増してきた。ついに、この現象がババア補完計画として大々的に話題になるようになった。しかし、誰もその行き着く先を知らなかった。この時点では。

再び、ニュースをみてみよう。

  • ニュース: 全国で老齢の女性の大規模移動が発生しています。
  • ニュース: 目を光らせる老齢の女性の群れが、現地の住民を不安に陥れています。
  • ニュース: 不思議な老齢の女性集団が民家に押し入り、赤子とキッチン用品を盗む事件の多発により、各地の街が大混乱に陥っています
  • ニュース: 老人ホームが報告するところによりますと、「女性住人が徐々にシーツと融合しつつある」とのことです
  • ニュース: 道端で固まり甘ったるい液体をしみだしている老齢の女性が発見されました。

事態はいよいよ深刻になってきた。しかし、100人の意思統合されたババア達は今や、タイムマシン数十台に匹敵するクッキー生産速度を実現している。クッキー生産効率に比べれば、ババアの奇行など些細なことである。クッキーこそ価値。クッキーこそ正義。クッキーこそが人生と宇宙のすべてなのだ。クッキー、クッキー、クキクキクッキクッキクッキー。

ババアの奇行が無視できないレベルになるなか、ビンゴセンター兼研究所におけるババア達の科学研究は、滞りなく続いた。

秘蜜(Arcane sugar)

脳結合されたババア達による最新の研究の成果は、秘糖と呼称する何らかの蜜だ。この秘蜜は、うまいことはうまいし、もちろんクッキーと組み合わせると抜群にうまいのだが、昆虫と靭帯と糖蜜を組み合わせたような不思議な味がする。糖蜜はともかく、我々は昆虫や靭帯の味を知らない。それにも関わらず、なぜか我々はこの味で、昆虫や靭帯を連想してしまう。実に不思議な味である。一体ババア達は何を考えてこんな不思議な味の蜜を開発したのか。とにかく、クッキーの生産性に寄与するのはありがたいのだが。

そして、いよいよババア補完計画は最終段階を迎えることになる。

ババア合意(Elder Pact)

とうと我々はここに至ってまった。ババア補完計画は完成したの。完全にぴととぅになったババアは、もやその物理的な形が崩れ、何やら触手のようなものに変形してしまった。その体は、どうもクッキー生地ででけているらしい。その姿は、何かを連想させる。まさか、あれなのか。あの方なのか。あの触手の方なのか。いや、そんなまさか。あえない。ありうはずがない。クキキキキキキキ。

[この次のパラグラフ難解。脱落あるか]

[5文字欠]の降臨。そして、我々は世界を捨て、深淵を覗き、[5文字欠]神を崇め、まさに知るべし、真理の覆いが取り去られたることを。ああ、夜中に[真理を見た僧、黙して](異本により補う)語ることなく、悟りたりと称するは皆偽りなりき。

エリチス・シイクト・デウス・スチエンテス・ポヌム・エツト・マルム(爾等知善與惡則應如神)

その木に□□□□□□があつた。
□□□□けれども氣に入つた。

[2行欠]
ニル・イヌルツム・レマネビツト(無一事不報復而遺存者)

[欠文あるか] クム・ヰツクス・ユスツス・シツト・セクルス(何則正者猶且不自安也)

きとよべもしてさぶらひき

睹一蟬方得美蔭而忘其身螳蜋執翳而搏之見得而忘其形異鵲從而利之見利而忘其真

今日大風寒
寒風摧樹木
嚴霜結庭蘭
[欠文あるか]

老約(Elder Pledge)

世界に一時の安らぎが訪れた。我々はババア合意以降、老約以前の記憶を有していない。自動化された録音、録画装置もこの間の記録をおこなっていない。確かなことは、この間もクッキーの生産は何らの支障もなく行われたという事だ。これは重要なことだ。クッキーの生産さえ問題がなければ、記憶がないことは些細なことでしかなななななななな

老契(Elder Covenant)

とうとう、我々は、ババア補完計画を押しとどめることに成功した。この契約は長く続くことだろう。ただし、我々が払った犠牲は大きかった。約6テラクッキーと、今後のCpS全体の5%を犠牲にするとは。CpSの5%。そんな犠牲を払わねばならぬのか。それならばいっそのこと、いや、ダメだ。我々は今回の事件から、世の中にはクッキー以外にも優先すべきことがあると学んだのだ。いや、本当にそうだろうか。5%。全体のCpSの5%。

老契破棄(Revoke Elder Covenant)

オーヤムヤムヤムイトスメルズライクレターシーオーファ***

続き、本の虫: クッキー・クリッカー物語

7 comments:

Anonymous said...

ここにも被害者が……
http://anond.hatelabo.jp/20130917200142

Anonymous said...

漂うSF的雰囲気からすると、Exotic nutsはExotic matter(エキゾチック物質)のもじりな気がします。

江添亮 said...

ああ、そっちか。
それもそうだな。

Anonymous said...

GIGAZINEにちっちゃく乗ってますよ、ここ。
吹きました。

ttp://gigazine.net/news/20130918-headline/

Anonymous said...

Glassy eyesはメガネを掛けた、じゃなくて虚ろな目、だと思います

江添亮 said...

うへ

Anonymous said...

> すなわち、ババアのクッキー生産量は、ババア購入により指数関数的に増えていくのだ。

この一文が読んでいてちょっと引っかかったもので, 計算してみました.

簡単のためババアの生産率を1とします.
50体増す毎に各々の生産率が1増えるとすると,
例えば50体で 50*2, 100体で 100*3, 150体で150*4, …
となります. nを自然数とすると,
ババア50n体毎にその生産率は 50n * (n+1) です.
というわけで意思統合されたババアの生産率は2次のオーダーです.
指数関数には遠く及びません.

線形より効率が良いのは確かですが,
反物質コンデンサーの線形な増大に勝るためには
膨大な量のクッキーが必要な気がします.