2009-08-20

中国の浅はかなプロパガンダ

レコードチャイナ:かつての超大国!日本はなぜ世界のリーダーになれないのか―米誌

2009年8月18日、米誌「World Policy Journal」夏季号は「日本はなぜ世界のリーダーになれないのか?」と題した記事を掲載した。新華網が伝えた。

記事は、かつて経済超大国として世界のリーダーにもなり得る存在と目されていた日本だが、今や中国やインドなどの台頭によりすっかり影が薄れてしまったと論じた。記事によれば、日本は過去40年間、世界第2位の経済力だけを武器に国際社会で高い影響力を発揮してきたが、もともと政治や軍事面での実力は伴っていなかった。第2次大戦後、奇跡的な経済成長を遂げた日本だが今やその伝説も幻となり、大国としての地位すら危うい。

こうなると国際貢献のあり方も変える必要に迫られると記事は指摘。これまでのように「何でも金で解決」という訳にはいかなくなるだろう。日本はすっかり国際社会における自らの役割を見失ってしまった。国内政治も混乱が続いており、今後の見通しは暗い。記事は、これほど短期間で国際地位が暴落した国も珍しい、と日本の没落ぶりを強調した。(翻訳・編集/NN)

huh!、所詮はイエロー・モンキーなジャップの国。見通しは暗いしダメダメだね。

果たして本当にそうなのか。2chで興味深い書き込みを見かけたので、自分で検証してみた。私は、何でも自分で検証せずには信じないタチである。

ます、レコードチャイナの記事には、ソースが欠けている。原文へリンクしないというのは、まともな文章ではない。原文はこれだ。

MIT Press Journals - World Policy Journal - First Page

さて、レコードチャイナの記事では、「米誌「World Policy Journal」夏季号」であると書いている。この「米誌」という言葉に注目してもらいたい。つまり、これは天下の合衆国アメリカ様のご意見なんだぞということを強調したいらしい。さて、実際はどうであろうか。この原文の、"Why Japan Can't Lead"の著者は、オーストラリアにあるニューサウスウェールズ大学の日本政治学の女性教授、Aurelia George Mulganであるという。つまり、これはオーストラリア人の意見である。この時点からして、米誌であることを強調しても、何の意味もないことになる。

さて、次に中身だ。原文からPDFが落とせるので読んでみよう。

Fifty years ago, Japan redefined itself as a model of economic development and a nation dedicated to peace.

五十年前、日本は経済発展のモデルであり、平和主義の地としてよみがえった。

おいおい、戦前の日本は経済発展のモデルじゃなかったとでも言うのか? 明治開国より驚くほど早く発展していたし、だいいち、明治以前でも、未開の土人の国ではなかったのだ。自国の言語を書き表す文字があった。それもかなり複雑な文字があった。経済的には、株という言葉が、わざわざ翻訳するまでもなく、すでにあったし、先物取引すら行われていたと聞く。平和というのは疑問だが、当時は列強による領土拡張のための侵略、植民地化が普通に行われていたではないか。日本だけを特別平和ではないとするのはあたらない。

yet Japan’s political or military status has not since World War II been commensurate with its economic power.

しかし、戦後の日本の政治と軍事は、経済力と釣り合っていない。

政治的には、非常に安定している国だと言える。
軍事的には、専守防衛を旨としているので、素人の目を楽しませるほどの派手なものはない。ただ、日本のレーダーは、大韓航空機撃墜事件の犯人特定の動かぬ証拠を示せる程度には優秀である。

Ueno Park in the center of Tokyo, better known for its cherry blossoms, is now home to an ever-expanding army of unemployed and homeless ex-salarymen, clustering together for moral support and assistance from public organizations.

桜で有名な上野公園は、ホームレスの巣窟となっている。

ホームレスは減っている。一時期は、サザエさんにもネタにされるぐらい、ホームレスは多かった。しかし今は、かなり少ない。それに、ホームレスというのは、その人間性にも問題がある。能力以前の話で、どうも、私の主観だが、酒におぼれている人間が多いのである。生活保護だとか居住の提供だとかの行政支援も行われているが、そういう人たちは利用しない。というのも、そこでは酒が飲めないから。

Those lucky enough to hold on to their jobs are squirreling money away as insurance for bad times. Affluent Tokyo residents no longer flock to Sunday shopping in the Ginza, the so-called “temple of luxury” and showpiece of brand-name consumerism.

たとえ定職にありつけている人でも、不景気のため、セコセコと貯蓄するだけである。トーキョーの金持ち達は、もはや、「贅沢寺院」と呼ばれる銀座で、ブランド品をあさったりしないのである。

だんだん筆の運びが怪しくなってきた。どこの三流週刊誌のゴシップ記事だよ。苟も日本政治学の博士号を取った教授の書く事だろうか。

Its armed forces have acquired modern, technologically advanced conventional capabilities, yet they are structured principally for defense of the homeland. Japan is committed to UN peacekeeping but not to the full spectrum of peacekeeping operations, which includes collective security.

武装軍隊は最新技術の先進的な兵器を購入しているが、専守防衛を旨としている。日本は国際連合の平和維持活動に参加したが、平和維持の完全な活動はできていなかった。例えば機密情報の収集だ。

なんだか反論するのもばかばかしくなってきた。国を守る程度の事は、古くさい時代後れの武器で十分だと言いたいのだろうか。PKOの目的とは、名前の通り、平和を維持する活動である。基本的には、紛争の当事者を停戦させ、合意を得たのちで、対立し合う集団の間に、監視役として、各国から軍隊を派遣する。PKOの活動(PKOの活動ってへんな言葉だが、日本語としてPKOが定着しているのだから仕方がない)の一つとして、平和が保たれているかどうかの調査も含まれる。それを機密情報の収集と言っているのだろうが。そんなことは日本の現行法では不可能だ。ちなみに、PKOでの自衛隊の活動らしい活動は、主に現地の支援、例えば、道路や橋の整備などだった。

Likewise, Japan is nominally committed to the U.S.- Japan alliance but not fully committed, given its rejection of collective defense.

同様に、日本は大抵、アメリカ合衆国に協力しているが、完全ではない。集団安全保障への参加の拒否などだ。

集団安全保障とは、こういうことをいうのであろうか。他国に対する武力の不保持を明記している憲法の下でそんなことができるわけがない。憲法九条の政府としての解釈は、憲法は武力の保持を否定しているが、自衛権は否定していない。つまり、自衛権のための武力の保持は、認められるという考え方である。自国が侵略されない限り、武力行使などできるわけがない。

もう読むのがいやになってきた。どこの三流ゴシップ記事だよ。

Far from being encouraged, political dissent that challenges the dominance of mainstream discourse is curbed by both overt and covert censorship as well as by the police who single out anti-government protesters for discriminatory treatment.

世論に対する政治的な反論は、明白もしくは暗黙的な検閲によって阻止されており、警察は反政府運動家を探して、差別的な扱いをしている。

少なくとも、非武装地帯を作ろうだとか、外国人参政権を認めようなどという主張が検閲されたり、警察によって捕まったなどという話は、日本では聞いたこともない。中国ならいざ知らず。これを伝えているのが、金楯、俗にグレート・ファイヤーウォール・オブ・チャイナで有名な中国の報道機関なのだが、自国のインターネット検閲に関してはどう考えているのだろうか。あるいは、反政府運動というのが、日本赤軍のようなものならば、当然、「差別的な扱い」をされるべきだと思うのだが。

もう疲れたので、2chネタの検証だけ行う。

Japan will have a Lower House election before mid-October, and for the first time, the LDP faces the real prospect of defeat. It’s up against a genuine, possible alternative governing party, the Democratic Party of Japan, or DJP, which has held a near-majority of the Upper House since the last election in 2007, producing a divided Diet.

民主党(Democratic Party of Japan, DPJ)を、かつて韓国に存在した、Democratic Justice Party(DJP)と混同しているという批判もあった。その前に正しく記述しているので、あるいはタイプミスであるのかもしれない。しかし、どうも文脈がおかしい。"or DJP for short" ならともかく、単に"or DJP"というのはちょっと疑問だ。Democratic Party of Japanの略がDPJであることは明らかである。わざわざ後々のために解説するまでもない。さらに決定的なことに、記事中のすべての箇所で、DJPを使っている。記事中にDPJの文字は存在しない。もはや弁論の余地がない。これはタイプミスではない。この女性教授は、明らかに意図的にかつて存在した韓国の政党の略称であるDJPを使っているのだ。この教授、本当に日本の政治学で博士号を取ったのだろうか。DJPなる日本の政党は存在しない。あるいはこの教授、日本と韓国を混同しているのではないだろうか。韓国であるならば、上記の検閲のことも、日本的な文化はだいぶ最近まで検閲されてきたし、分からないでもないのだが。

このゴシップ記事は、最後に以下のように結んでいる。

Unless Japan soon figures out how to resolve the current domestic political impasse and restore its political leadership’s ability to govern and rule, it will face the prospect of diminishing international power and recede ever farther from its long-held goal of being a major player on the international scene

日本がすぐに現在の国内の政治の行き詰まり脱却と、遵法を徹底させる政治指導力の回復に努めなければ、国際的な力の低下という失望と共に、国際社会での主要的な役割も地に墜ちるであろう。

ところが、レコードチャイナの翻訳では、

日本はすっかり国際社会における自らの役割を見失ってしまった。国内政治も混乱が続いており、今後の見通しは暗い。

最初の、"Unless Japan soon figures out..."という部分が完全に抜け落ちているのだ。これは中国側の意図的な誤訳であり、日本人をして、日本はもはや没落して希望がなく中国のような強国には比ぶべくもないという認識をせしめ、そのネガティブな意識をもって、実際に日本を没落させようという意図なのだろう。

結論、2chでの噂は正しかった。

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