2013-03-28

ますますクリエイティブコモンズが変な方向へ

「警察の萎縮効果狙う」 赤松健さん、2次創作同人守るための「黙認」ライセンス提案 (1/2) - ITmedia ニュース

ただでさえ誤解を招きやすいクリエイティブ・コモンズがますます誤解を招きやすい方向に進もうとしている。

まず、「クリエイティブコモンズ」というライセンスはない。実際には、CC-BY(著作者表記)を基本として、NC(非商用)、ND(非派生)、SA(コピーレフト)のオプションをつけて使うライセンス集であり、組み合わせ次第で非互換なライセンスになる。

このような非互換なライセンス集を、単にクリエイティブコモンズと呼ぶのは誤解を招き危険である。しかも、一部の条件であるNCやNDを使うと、それ以上の創作性が阻害される。商業利用や派生を禁止してクリエイティブとは何事か。ノンクリエイティブとかアンチクリエイティブに改名すべきである。

リンク先の記事によれば、

赤松さんとともにイベントに登壇したクリエイティブ・コモンズ・ジャパンの常務理事で弁護士の野口祐子さんは、「確かに、クリエイティブ・コモンズは漫画で採用されないと普及しない」と認め

とあるが、めでたくこの結果クリエイテイブ・コモンズが採用されたとして、それは今のクリエイティブ・コモンズが採用されたのではなく、新たに付け加えられた非互換ライセンスが採用されただけであり、問題はむしろ増加しただけだ。またもやクリエイティブ・コモンズを名乗る非互換ライセンスが増えてしまう。何で名前を変えないのか。ナアナアな文化をライセンスにしたので、ナアナア・ライセンスという名前はどうか。日本語の「なあ」はとても曖昧な意味であり、世界でも指折りの理解が難しい言葉に選ばれたそうだから、ピッタリの名前だといえるだろ、な? な?

さて、いままでナアナアでやってきた同人漫画業界に厳格な法律が持ち込まれるので、それに対応する。それは分かる。しかし、なぜナアナアな文化をそのまま引き継ごうとするのだろうか。

ライセンスは、法律の定める期間を限定した独占権、すなわち著作権を元にしている。著作権をたてにして上の許諾を与える条件としてこれこれの要求に従う契約/許諾である。それで黙認という弱い概念を定義してどうするというのか。

もちろん、海外にはfair useのような曖昧な概念を著作権法に含めている国もある。ただし、今回の提案は、そういう国に習って著作権法を改正するのではなく、現行の厳格な法律をたてにしたライセンスでやるのだから、もっと自由か不自由かに厳格になるべきだ。取締だけ厳格な法律に基づき、許諾だけはナアナアな文化のままというのは極めて危険だ。

この動きは、ますます本当の著作者を権利から引き離す動きを加速させるだけだ。

だいたい、不自由な漫画は、一部の人気作品を除いて20年後には入手不可能になる。中古市場を漁らねばでてこない。出版するほどの商業的利益が得られないのに塩漬けになっている。多くは保存されずに消えていくだろう。

私はもうそんな不自由な漫画を読みたくはない。20年後に入手できないような漫画を読んでも楽しめないからだ。

追記:この赤松提案のライセンスでは、デッドコピーの禁止という文面がある。これは思うに、未改変版(あるいは原著作物に直接手を加えたものや、原著作物の一部)の複製物の禁止ということだろう。記事中でも触れている。

 「クリエイティブ・コモンズ・ライセンスは基本的にデッドコピーを前提にしているが、原作の絵をそのままコピーされたり、切り貼りされるのは困る。キャラと設定だけ使った2次創作が認められるCCマークが欲しい」と新ライセンスを提案。

赤松健は漫画家だから、漫画をそのまま再配布されてほしくないのだろう。しかしそうなると。非互換なライセンス集であるクリエイティブコモンズの唯一の共通項である、「非商用での未改変版の再配布」を禁止することになる。

さらに考えると、デッドコピーの禁止は不思議な状況を生み出す。原著作物は赤松ライセンスで公開できない。なぜならば、著作物をデッドコピーすることはライセンス違反だからだ。たとえ原著作者であり権利を持っていたとしても、赤松ライセンスで明示的にデッドコピーを禁止している以上、赤松ライセンスで公開することは出来ない。自分で定めたライセンスに引っかかるからだ。赤松ライセンスは、原著作物ではなく、派生物のみを縛るライセンスとなる。これは、原著作物自体がそのライセンスとして公開されるクリエイティブ・コモンズとまったく性質の異なるライセンスである。

この赤松ライセンスをクリエイティブ・コモンズ傘下に付け加えることを許したならば、いよいよクリエイティブ・コモンズは曖昧で危険なライセンスになってしまう。

11 comments:

Anonymous said...

これは赤松が勝手に暴走してるだけだろ
デッドコピーはダメとか言ってる時点でこいつはそもそもccとは何かが全くわかってない。
こんな案が採用されたりするほどccが馬鹿じゃないことを祈りたい。

江添亮 said...

そういえば、「デッドコピーの禁止」をまともに解釈すると、ただでさえ非互換あnクリエイテイブコモンズの各ライセンスの中で、最低限の共通事項である、

「非商用での未改変版の再配布」

がダメになりますね。

Anonymous said...

本家クリエイティブ・コモンズじゃなくて悪名高いクリエイティブ・コモンズ・ジャパンがまた訳わからないこと言ってるだけじゃん
本家クリエイティブ・コモンズは何も変な方向へ行ってない

Mikiya Okuno said...

相変わらずクリエイティブコモンズはお嫌いなようですね ;)

ライセンスの集合であるというのはその通りですが、有象無象のライセンスを6種類に集約できるというのは大きなメリットだと思います。そういう意味ではクリエイティブコモンズの派生を作るというのはナンセンスな話ですね。

江添亮 said...

クリエイティブ・コモンズという名称が嫌いなのです。
非互換のライセンスは誤解を防ぐために別名であるべきです。
CC-BYとかCC-BY-SAというのも、CCが先頭にくるのでやはり誤解を招きやすい。

Anonymous said...

>非互換のライセンスは誤解を防ぐために別名であるべきです。
じゃあGPLv1とGPLv2とGPLv3も全て別名であるべきですね。
GFDLも然り。

江添亮 said...

ちゃんと別バージョンになっています。

Anonymous said...

クリエイティブコモンズの発行するライセンスも、CC-BY 3.0とかCC-BY-SA 4.0など、ちゃんと別物で、別名がついてます。

まさかライセンス名の頭のCCという二文字だけを指して「同じ名前だ!」と難癖をつけてるのか。
ほとんど言いがかりですね。

Anonymous said...

いやいや、同じ名前かの様に混同して扱ってるのは赤松だから。

Anonymous said...

だから赤松が悪い、っていうなら分かるけど、「わかりにくい」って理由でクリエイティブコモンズを叩いてんのは変
ライセンスの分かりにくさなんてどれも似たり寄ったりだろ

Anonymous said...

CC-BY-NCとCC-BY-NDのデュアルライセンスが認められるように、CCライセンスと赤松ライセンスの両方を表示すればいいだけ。
赤松氏の言い分なら「非営利または改変禁止」という項目をCCに追加しなくてはならなくなる。