2010-01-16

日記

一月十四日

また例のごとく、3980円の夜行バスで東京へ行く。しかし、今回のバスには、違和感があった。

違和感というのは他でもない、バス自体だ。私は毎回、同じ夜行バスを利用しているのだが、いつもとは、バスが違ったのだ。どう違うのかというと、実は、バスが夜行バスではなく、観光バスだったのだ。

夜行バスというのは、普通、車内の照明をつけずに走る。ところが、このバスのカーテンは、非常に薄いので、遮光性がまるでない。また、普通は、フロントガラスからの光を遮るため、前にもカーテン等があるはずだが、これもない。これではまぶしくて寝られたものではない。

そもそも、なぜバスにあの独特のブラウン管がついているのだ。また、車体を夜行バスの名前でラッピングしているのだが、、「何々観光バス」という文字がある。明らかに観光バスである。

また、スタッフもおかしい。普通、夜行バスのスタッフは二人いる。運転手と、その他の雑務を行うスタッフである。今回も、スタッフは二名いるのだが、明らかに、二人とも運転手である。

思うに、今回の不況のあおりを受けて、観光バス会社の仕事がへり、そこに目をつけたこの夜行バス業者が、バスと運転手を、そのまま引き受けたか、あるいは委託したか、そんなところではないだろうか。

バスの質は最悪だったが、今回の移動は楽だった。何しろ、たまたま隣に人が座っていなかったのだ。私は二席を占有することができた。

一月十五日

6時に新宿に着いた。いつもは、東京駅で降りて、そのまま神保町で古本をあさり、然る後にC++WG会議に出席するのが、通例となっている。しかし今回は、C++0x本の打ち合わせのため、技術評論社に行かねばならない。新宿で降りて、市ヶ谷へ向かう。なんと今回は、電車を間違えることがなかった。そろそろ東京の複雑怪奇な路線にも、慣れてきたのだろうか。

市ヶ谷に着いた。まだ朝早い。たしか駅前にマクドがあったはずだと思って、行ってみると、マクドとモスが並んでいた。モスに入った。

モスで三時間ほど、D&Eを読んで過ごした。今回C++0x本を書くということで、数年ぶりにD&Eを読んでいるのだが、やはりこの本は、不朽の名著だ。C++成立の時代背景と設計思想が、実に分かりやすく書かれている。

10時になったので、技術評論社で、C++0x本の打ち合わせをした。本が出版されるまでの流れ、印税の計算方法など。ページ数は、せいぜい800ページが限界のようだ。余白は、製本の精度の都合上、あまり狭くできないらしい。

C++WG会議に出席。私はn2951: forwardのレビューをした。

一生さんのレビューしたn2998: Reaching Scope of Lambda Expressionsの印刷で、非常に素敵なフォントを使っていた。一体、なんというフォントなのか知りたかったが、遺憾ながら聞き漏らした。やや丸みのある文字だ。メイリオではないと思う。ヒラギノ角ゴだろうか。これほどの品質のフォントが、フリーフォントとは思えない。

redboltzさんが、2009-10-19/24 Santa Cruz meetingにゲストとして出席したというので、その話を聞いた。面白そうだ。私も出席してみたいものだ。カネさえあれば。

聞説、Googleが人を大募集しているという。興味はあるが、私が、Googleが求めるだけの能力を満たすかどうか。当面の生活費を確保したいが、問題は、今仕事をしていては、本を書く時間がない。

会議後、飲みに行くことになった。C++0x本に関して、なぜある機能が、今の仕様になったのかという、歴史が知りたいという意見があった。たしかに、そのようなコンセプトで書かれたD&Eは名著であるし、興味深いのだが、なにぶん、ページ数にも限りがあるし、今の本のコンセプトは、「C++の歴史」ではない。機会があれば、そういう本も書いてみたいと思う。

私の思想は、高校数学の域を出ていないという話があった。曰く、「高校までの数学は、あらかじめ決められたルールの枠内で考えるものである。一方、大学の数学は、あるルールに対して、本質的に欠くべからざる最小限の定義を考えるのである。だから、C++はどうなっているのかではなく、C++はどうあるべきなのか、ということを書くべきである」云々。

C++の本来の面目を考えるのは、もちろん標準化委員会のメンバーとしては重要だが、普通のC++ユーザーにとっては、現実のC++でwell-formedなコードの方が重要だと思う。

残念ながら、帰りのバスの時間があるので、九時過ぎに抜けた。

帰りのバスも、行きと同じ観光バスであった。帰りは、最後列の窓際の席だった。最後列は唯一、脚がのばせる席である。しかも、シートを倒しても後ろに迷惑がかからない。そのため、今回の夜行バスは、往復とも、比較的ラクだったと言える。観光バスだと、こういう事もあるのだろう。

さて、明日から、予備自補の最後の訓練がある。戻ってきたら、執筆に取り掛かろう。まず行わなければならないのは、目次案の作成だ。Expression, Statements, Declarations, Declaratorsには、人間がひとかたまりの機能だと認識している機能が、点々と定義されていてわかりにくい。この四章で規定されている機能のうち、変数、配列、ポインタ、リファレンス、関数は、総合的に解説した方がいいだろう。他に、総合的に解説した方がいいものはあるだろうか。

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