Linuxカーネルのメーリングリストは、常に罵詈雑言に満ち溢れているが、そういうのは辞めて大人になろうという主張がSarah Sharp[1]によってなされた。なかなか面白い。
きっかけは、いたって日常的な罵倒混じりの議論に、Sarah Sharpが横槍を入れたところから始まった。
LKML: Sarah Sharp: Re: [ 00/19] 3.10.1-stable review
On Fri, 12 Jul 2013 18:17:08 +0200, Ingo Molnar <mingo@kernel.org> wrote:
* Linus Torvalds <torvalds@linux-foundation.org> wrote:
On Fri, Jul 12, 2013 at 8:47 AM, Steven Rostedt <rostedt@goodmis.org> wrote:
-rc4の後はそういうのは後回しにしてるんだ。だってお前はGregより怖いからな
お前リアルでGregみたことあんの? 奴は巨漢だぜ。奴はマジ怖いぜ。奴はお前程度なら一瞬でぶちのめせるぜ。
Gregが人を一瞬でぶちのめせるにせよだ、それは単なる物理的な脅威でしかなく、本物のカーネルハッカーが恐れるような脅威ではない(薄暗い地下室に対する脅威なんてほとんどない。あるとすれば、地震とか、ガンマ線隆起とか、コンピューターの周りを掃除しようとするカーチャンとか)
そういうわけでGreg君、現状を変えたいのなら、本物の脅威を作り出すべきだ。貢献者にはもうちょっと率直になって、時には罵るべきだ。そうすればメールの件数も半分ぐらいには減らせるよ。マジで。
On Fri, 12 Jul 2013 08:22:27 -0700, Linus wrote:
Greg、お前のところにstableパッチが大量にやって来るのは、お前さんが都合のいい玄関マットだからだ。明らかに、一部の連中は、「こいつぁLinus様の手を煩わせるほど重要なパッチじゃねーな、でもGregってやつなら受け付けてくれそうだ。待ってりゃ勝手にstableになる」とか言ってるぜ。
お前さんは人に怒鳴るということを覚えるべきだ。
ちょっとマジィ? あんたら? stableを改良するのにそんなことが必要ってわけ? Linus Torvaldsさんがここで罵倒を推奨しちゃってるよ。Ingo MalnarとLinusがいまここで罵倒をオススメしちゃってるよ。
マジ、サイアク。暴力なんて物理的なのも、言葉の上なのもダメでしょ。メーリングリストではもっと大人になろうよ。
これを面と向かって話せるカーネルサミットでやってみようよ。アタシにどなってみなよ。アタシ、どなりかえしちゃうからね。今までトップのメンテナーにどなられたみんなの分よ。アタシだっていい子にしてらんないわ。
Sarah Sharp
という具合に、サラ・シャープが、しばしば暴力的な言葉で溢れかえっている現状を批判した。
Linusの返答。
LKML: Linus Torvalds: Re: [ 00/19] 3.10.1-stable review
On Mon, Jul 15, 2013 at 8:52 AM, Sarah Sharp <sarah.a.sharp@linux.intel.com> wrote:
アタシにどなってみなよ。アタシ、どなりかえしちゃうからね。今までトップのメンテナーにどなられたみんなの分よ。アタシだっていい子にしてらんないわ。
それでいい。
Gregはお前を正しく導いたようだな。お前は恐怖を克服している。さあ、怒りに身を任せろ。怒りなくしては私を倒すことはできん。
ダークサイドに来い、サラよ。クッキーがあるよ。
Linus
Sarah Sharpの返答。
LKML: Sarah Sharp: Re: [ 00/19] 3.10.1-stable review
でも、でも、ライトサイドにはブラウニーケーキがあるの。大麻ブラウニーでみんなフワフワのネムネムよ。あ、でももっと大麻ケーキ食べたくなるかも。
Sarah Sharp
Linusの返答。
LKML: Linus Torvalds: Re: [ 00/19] 3.10.1-stable review
ふむ、その件に関してはカーネルサミットで密会を開くべきかもしれんな。
俺は普通のクッキーを持って行くよ。
Linus
Sarahの返答。
LKML: Sarah Sharp: Re: [ 00/19] 3.10.1-stable review
オランダじゃないから、カーネルサミットに大麻ブラウニーは持ち込めないと思うわ。
とにかく、こっちは真面目よ。Linus、あんたは罵倒にかけちゃサイアクよ。
http://marc.info/?l=linux-kernel&m=135628421403144&w=2[2]
http://marc.info/?l=linux-acpi&m=136157944603147&w=2[3]もういいかげんウンザリだわ。
Linusの返答。
LKML: Linus Torvalds: Re: [ 00/19] 3.10.1-stable review
そうだね。だってそれが俺だし、歯に絹着せるとか人当たりのいい奴ってのは感心しないからね。
問題は、俺の意見がどうなのか知らせる必要があるということだ。単に「そういうことはしないでいただけるとありがたいんだけど」とか言ったんでは伝わらない。それじゃ聞いてくれないんだ。「ネット上では丁寧な奴ほど無視される」と、俺は思ってる。
それと、俺は人を放っておきたくはないんだ。過去に起きたことだからね。あるアプローチは気にいらないと十分に強く伝えられなかったばっかりに、勝手に実装が進められて、いざ俺が受け付けないと知ると怒りだした連中とかね。
Sarah、まず俺にできることはそんなにないし、礼儀正しいとか言葉狩りだとかに意味があるとも思えない。君が文化的風習をあげつらって、一部の文化圏は気分を害すると主張するのは自由だ(それと性別についても自由に主張してくれたまえ、性別だって多分に文化的なものだからね)。その際には、「異文化への配慮」とやらをぜひとも持ちだしてもらいたい。俺も「異文化への配慮」を持ち出すからね。俺の文化に対しても配慮してもらいたいね。
"Management by perkele"でググれ。[4]
マイノリティを抑圧したいのかい? フィンランド人は他の国に比べれば相当にマイノリティだよ。異文化への配慮を主張するなら、俺も乗るよ。ただ、俺の文化には罵倒も含まれるんでね。
上記はすこし茶化して書いたものの、真面目だよ。俺は真剣に、議論に対して感情に忠実で率直であるのはいいことだと思っている。メール越しに人を読み解くのは難しいので、メールではより率直である必要がある。僕は基本的に良い人だよ。いつもそうじゃないけど。
カーネルサミットでこれについて議論するのはいいけど、君の「高慢」とやらは、それほど高くはないことを知るだろうよ。
Linus
[1]: Sarah Sharpは30週間で30人のLinuxカーネル開発者インタビューを受けているが、なかなかべっぴんさんである(この記述は男性的でありポリティカルコレクトネスに反する)
30 Linux Kernel Developers in 30 Weeks: Sarah Sharp | Linux.com
[2]: リーナスの罵倒として有名な一例。Linuxカーネルの変更がpulseaudioの挙動を変えたという報告に対し、pulseaudioのバグだと指摘する声を遮って、カーネルがユーザープログラムの挙動を変えたなら、それはカーネルのバグだと罵倒するもの。
On Sun, Dec 23, 2012 at 6:08 AM, Mauro Carvalho Chehab <mchehab@redhat.com> wrote:
つまり戻り値が-EINVALじゃなかったらpulseaudioが変なループに陥るわけ? それはpulseaudioのバグじゃないかな。
Mauro、テメェ黙りやがれ。
バグだ。カーネルのバグだ。お前何年メンテナーやってんだよ? それでいて、いまだにカーネル保守のひとつめのルールすら学んでねーのか?
もし、変更がユーザープログラムを壊す結果になれば、それはカーネルのバグだ。ユーザープログラムを決して咎めてはならない。こんな簡単なことも理解できないのか?
そもそも、コミットf0ed2ce840b3は、たとえ何も壊さなかったとしても、明らかにどうしようもないクソだ。ENOENTはioctlの妥当な戻り値じゃない。ありえん。ENOENTは「該当のファイルやディレクトリーが存在しない」という意味で、パス操作のためにあるのだ。ioctlはすでに開かれたファイルに対してのもので、ENOENTが妥当な場合なんて存在するわけねーだろ。
で、一見すると、これはregressionではないようだね。カーネルではなく、pulseaduioとtumbleweedに深刻なバグかregressionがあるようだね。
黙れMauro。俺はこんな馬鹿げたクソ発言をカーネルメンテナーからは二度とクソ聞きたくない。クソマジに。
お前がRafaelのパッチを検証するまで待とうかと思ってたんだが、俺のメールボックスに、v3.8-rc1でKDEのメディアアプリが全部ぶっ壊れたってエラー報告があるんでな。しかもお前はこの問題に積極的じゃないときた。俺がこの手で今すぐ直接パッチを適用してやる。
「ユーザースペースを壊してはならない」
マジで、何でこんな簡単なルールが理解できねーんだよ? クソでユーザースペースをぶっ壊すようなことはしない。てめーのメールが、根本的に間違ってて、ぶっ壊した原因のパッチが明らかにクソだから、俺は怒ってるんだぜ。パッチは全体的にありえんほどぶっ壊れたクソだ。このパッチはありえんエラーコード(ENOENT)を追加して、そのありえん変更に対応するため、さらに別の場所を直している("ret == -ENOENT ? -EINVAL : ret")
しかも、テメーはユーザースペースをぶち壊した「言い訳」をしていて、動いていた既存の外部プログラムのせいにしているのは、赤っ恥もいいところだ。ここじゃそーゆーふうにはやってねーんだよ。
テメーのクソ「検証ツール」とやらを直しやがれ。明らかにぶっ壊れてるからな。それからテメーのカーネルプログラミングのやり方も改めろ。
Linus
[3]: あるパッチによりUSBにregressionが発生したので、とりあえず該当のパッチをrevertしたいが、きれいにrevertできないという発言に対し、Rafaelが、「そもそも件のパッチは修正のためのパッチなのだから、revertできるものではない。すでにその修正パッチに依存した別のパッチがたくさんある」と答えたところ、Linusから大喝を受けたもの。Linusは「目的が修正にせよ何にせよ、regressionがあったらrevertするのだ。regressionなしは大原則だ」と言っている。
'Re: [GIT PATCH] USB patches for 3.9-rc1' - MARC
On Fri, Feb 22, 2013 at 4:19 PM, Rafael J. Wysocki <rjw@sisk.pl> wrote:
revertはしない。それに依存したものがたくさんある。それに、そのパッチは修正だ。だから、revertするというのはいいアイディアではない。
Rafael、そんなクソ発言は二度と書かないでもらいたいね。
それが「修正」にせよ、それ以外のものにせよ、revertはする。ルールは、「regressionなし」だ。「修正」かどうかなんて関係ない。既存のものを壊したなら、revertされる。
マジさぁ、なんで俺がこんな事言わなきゃなんないわけ? なんでマージ期間のたびに毎回毎回おんなじことをいわなきゃなんないわけ?
これは新しいルールってわけじゃねーんだ。
ところで、このルールが絶対的なルールとして存在する理由ってのは、マジなところサスペンド/レジュームとACPIのためだぜ。過去にこの手の、「この問題は直して、別の場所をぶち壊そうぜ」という無限ループがあったからだ。だからお前はこのルールはよく知っているべきなんだ。だからお前がこんなクソな発言をするとはマジ驚きだぜ。
regressionに言い訳は通用しない。それも「修正だから」なんてのは最悪の言い訳だ。
regressionを生じさせたコミットは、つまるところ、「修正」じゃないのだ。お願いだからそんな馬鹿げたことは二度と言わないでくれよ。
既存の動くものは、今まで動かなかったものより、百万倍は重要だ。
そんなわけで、こいつはソッコーで直す必要があるし、誰か早く何とかするべきだ。何もしないならrevertだ。
「でも修正なんだよぅ」なんて何の意味もない。むしろ、さっさとrevertしておかなかったのを俺に後悔させるほどだ。なぜなら、メンテナーはregressionの重要性を理解していないのだからな。
なぜかこちらは、pleaseの利用率が高い。相手がRafael J. Wysockiだということとなにか関係があるのだろうか。
[4] : "Management by perkele"(罵倒による統制) フィンランドの長々とした議論ではなく、素早い直接の実行で問題を片付けるやり方を、スウェーデンが茶化して名付けたもの。perkeleとはフィンランド土着信仰の邪悪な神の名前で、フィンランドでは、「バカ」とか「クソ」のような罵倒語として使われている。
3 comments:
>ニュージーランドじゃないから、カーネルサミットに大麻ブラウニーは持ち込めないと思うわ。
ニュージーランドではなくて、オランダですね。
そうか。オランダか。
道理で変だと思った。ニュージーランドって大麻合法だったけと。
どうもいまだにNetherlandとオランダを関連付けることができない。
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