鬼才という語を使うと、太宰治が墓の中から出てきて嘲笑しそうだが、それはさておき、吉川英治の鬼のような才能についてである。
吉川英治は信じられないくらいに物を読んでいる。今、新・平家物語を読み始めたが、やはり作者の非凡を観ぜずにはいられない。平家物語などの、所謂、軍記物や、当時の文章などは、かなり断片的なのだが、いったいどうやってここまでまとめ上げたのだろう。驚くべき構成力だ。
ただ、盛遠の渡辺橋供養あたりのこととか、袈裟が身代わりを決意するまでの心情描写がなかったのが残念でならない。吉川英治ならば、あの場面もうまく書いてくれただろうに。
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