Richard Stallmanへのインタビューがすごい。
Richard Stallman | The GNU/Linux Action Show | Jupiter Broadcasting
Stallmanは聞きしに勝る高潔ぶりだ。ストールマンは、あらゆる創作物はフリーに共有できるべきだと考えている。例えば、誰かが壁に絵を描いて公開した場合、誰でもフリーにコピーできるべきだと考えている。たとえ、画家がコピーさせたくないと考えたとしてもだ。ストールマンによれば、フリーとはユーザー側にあるのだ。ユーザーはコピーするフリーを有しているというわけだ。例え画家がコピーされたくないフリーを主張したとしても、ユーザーのフリーが優先されるのだという。そもそも、フリーな世界ではあらゆるものは共有可能であるべきだからだ。フリーとはユーザーにかかるのだ。
皮肉なことに、ストールマンは現行のアメリカ合衆国の著作権法に反対しているが、ちゃんと現行法を守っている。GPLからして、アメリカ合衆国の著作権法を根拠に書かれているのだし、ストールマンは一切の非フリーなソフトウェアを排斥している。ストールマンの使っているコンピューターも完全にフリーなYeelongである。OSはUbuntuから非フリーなソフトウェアとプロプライエタリなソフトウェアのインストール方法を取り除いたgNewSenseである。
しかし、ストールマンの信じるフリーの概念を押し通すと、現代では、日々の生活の糧を得ることすら難しい。ストールマンは、非フリーなソフトウェアを作るなどということは、自由を失うことであり、そのようなソフトウェアは放擲すべきであると信じている。
しかしたとえば、ゲームを、ソースコードはおろかその他のリソースまで完全にフリーで売るのは難しい。なぜなら、フリーなコンテンツを売るということは、誰か一人さえ買えば、あとはカネを払わずコピーされてしまうからだ。現行のフリーなソフトウェアにしたって、多くはプロプライエタリなソフトウェアを売っている企業からの献金や、同じくプロプライエタリなソフトウェアを売っている企業に雇用された人間が開発している。もし、世界からプロプライエタリなソフトウェアがなくなれば、利益が減り、当然、フリーなソフトウェアの開発も縮小してしまう。ただし、ストールマンによれば、それでいいらしい。
ストールマンの考えでは、自由のない世界は、制限された栄えている世界より邪悪である。ソフトウェアがフリーである限り、たとえ、利益がないことによってフリーなソフトウェアの開発が止まったとしても、他人が開発を引き継ぐことができる。
「しかし、フリーだけになって産業の規模が縮小してしまっては元も子もないではないか、第一、フリーを実現するためにコピーされない権利の放擲など様々な制限を課さなければならないとしたら、果たしてそれをフリーと呼べるのか」という反論に対して、ストールマンは、「そもそもそんなことは問題ではない」と答えるのみである。自由がないアメリカ合衆国では、無実の者が弁護の機会も与えられずに拘束されていたりする。正当なデモの権利を行使した人間が拘束されている。そのようなフリーではない世界で、富が、現金が、一体何の役に立つというのか。
「すべてのソフトウェアがフリーな世界で一体どうやって利益を得るのか」という疑問に対する、ストールマンの唯一の答えは、カスタムソフトウェアである。
これを考えてみると、ソフトウェアをカスタマイズしてほしいという要求は常にある。自分にはソフトウェアをカスタマイズする能力がなかったり、例えあったしても、時間や労力がなかったりする。その場合、他人にソフトウェアのカスタマイズを依頼し、その作業に対し対価を払うということは、十分に妥当だ。この際、ソフトウェアのカスタマイズを必要としているのはユーザーである。もし、対価を払わなければ、ソフトウェアのカスタマイズは行われない。その結果、ユーザーはカスタムソフトウェアを入手できない。入手できないものは、フリーな世界であっても入手できない。ここに、利益を得る機会が生まれるのだろう。
しかし、そんな世界では、経済の規模はかなり縮小してしまうだろう。第一、Microsoftにしたって、Red Hatにしたって、数多くいる社員のうち、プログラマーはほんの僅かである。むしろ大企業ほどそうなのだが、プログラミング以外の作業は常に必要である。そのため、どんなソフトウェア企業でも、大抵はコードの書けない人間を雇っている。大企業の場合、プログラミング以外の作業が非常に多いため、社員のうちのプログラマーの割合は非常に低くなる。もし、すべてのソフトウェアがフリーな世界になれば、MicrosoftやRed Hatのような会社は、今の形では成り立たなくなるだろう。たとえ存続するとしても、大幅に規模を縮小することになるだろう。それでいいのだろうか。
ストールマンの言うことには、「そもそもそんなことは問題ではない」のだそうである。フリーかどうかが問題なのだ。
1 comment:
「 Richard Stallman といえど、完璧じゃない 」って事かな。
恣意的な考え方を排除できなかったり、完全な反論を構築できなかったりする、一般的な人間と大して変わらぬ所があるんだから。
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