iBus 1.5がUbuntu 13.10で採用されてから、あちこちから混乱の声が挙がっている。色々と議論を読んだ結果、ようやく、iBus 1.5の設計思想を理解したように思う。iBusでは、IMは常に有効になっているものなのだ。
IBus 1.5がUbuntu 13.10に投入されるまでの流れと現状 - いくやの斬鉄日記
結局IBus 1.5の何が問題なのだろうか。 - いくやの斬鉄日記
我々は日本語を入力する時、日本語IMEを使う。これは、日本語の文字があまりに多すぎるため、それだけの物理的なキーを用意することが現実的ではないからだ。そのため、キーボードからの入力を、IMEに変換させ、さらに漢字に変換している。
ところで、日本語中に半角英数を混ぜたい場合は、どうするだろうか。例えばこんなふうに、日本語のsentence中にEnglishを混ぜるルー大柴の芸のようなwritingをしたい場合、どうすればいいのか。
この、「日本語のsentence中にEnglishを混ぜるルー大柴の芸のようなwritingをしたい場合」という文字列を入力する場合、どうするだろうか。ここでは、sentence, English, writing(英語で、意味はそれぞれ、文、英語、記述)という半角英字を入力しなければならない。しかし、日本語を入力中は、キーボードの入力を横取りし、かな漢字に変換する、日本語IMEが有効になっている。日本語IMEが有効になっていれば、この3つの英単語を入力しようとすると、使っているローマ字設定にもよろうが、たとえば、「せんてんせ、えんgぃsh、wりちんg」、となってしまう。
多くの日本語IMEでは、文字列の変換中にF9キーを押せば、変換でなく直接入力した状態にしてくれる。しかし、frustrating(いらつくぜ)と入力するのに、そのキーボード上でfrustratingと入力して、結果として画面には、「fるstらちんg」と表示され、そこからF9キーを押してfrustratingにするのは、極めて「fるstらちんg」だ。frustratingという言葉の意味がわからない、英語はほとんど入力しないようなユーザーしか、そのような入力方法は行わないだろう。そもそも、そのようなユーザーが日本語IMEで慣習的に使われているF9キーを知っているかどうかも、疑問である。
ほとんどの日本語IMEには、半角英数モードというものがある。このモードでは、キーボードの入力は、かな漢字に変換されず、そのまま入力され、そのまま確定できる。問題は、この半角英数モードに切り替えるためのショートカットキーは、F9ほど統一されていない。多くの日本語IMEユーザーは、そのようなキーボードショートカットを知らないのではないか。たまたまそのキーボードショートカットを押してしまい、結果として半角英数モードになり、戻し方が分からずに混乱する人の方が多いのではないだろうか。日本語IMEの使われ方というのは実に様々なので、他人がどのように使っているかはわからないのだが、私のように、たまたま半角英数モードにしてしまい、戻し方が分からずに閉口する人のほうが多いのではないだろうか。
半角英数を入力するには、もっと手っ取り早い方法がある。それは、日本語IMEを無効にすることである。こうすれば、IMEはキーボードからの入力を横取りしない。直接に入力できる。
思うに、これまで、多くのJapanese peopleはJapanese languageに英語、というか半角英数を混ぜる時、単に日本語IMEの有効、無効を切り替えて入力していたのではないかと思う。
iBus 1.5の思想は、どうも、この現状を反映していないように思われる。iBus 1.5の思想は、IMEは常に有効になっているもので、IMEとキーボードレイアウトは同一であり、あらかじめよく使うものとして選んだキーボードレイアウトとIMEのリストの中を、ショートカットで順々に切り替えて使うというもののようだ。IMEは単に切り替えるものであり、有効無効にするものではなくなった。ということは、IMEの有効無効の状態を調べたり、設定したりするAPIは、もはやその存在理由を失う。なぜならば、有効、無効という概念がないからだ。
これは、既存の利用慣習とはまったく異なる思想である。
IMEとは、アプリケーションに入力を渡すものであって、その存在は通常、意識されるべきではないものだが、従来、一部のアプリケーションでは、IMEの存在を意識した処理を行っていた。たとえば、Vimは、独自にモードという概念を持っており、そのモードに応じて、IMEの状態を直接入力に変えられると都合がいいので、そのようなプラグインが存在した。iBus 1.5では、IMEの有効無効という概念が、設計上うすれてしまったので、そのような処理がやりにくくなる。
これは一体どうなるのだろうか。iBus 1.5の設計思想は主流になるのだろうか。
従来、英語には、特に賢いIMEは使われてこなかった。英語入力にも、IMEがあれば便利である。例えば、単語の補完や、綴り間違いや、辞書や、よく入力する文章の補完機能など、様々な利用方法が考えられる。実際、プロプライエタリな日本語IMEの中に、英語に不慣れな日本人向けにそのような便利な機能をもった英語入力用IMEを提供しているものもある。しかし、これまで、英語用のIMEは、あまり開発されてこなかった。
最近、この状況は変わりつつある。スマートフォンやタブレットといったコンピューターの流行のせいだ。このようなコンピューターは、タッチパネルを入力装置に採用している。タッチパネルは、一方では機械的なボタンやゴチャゴチャとした入力装置を省き、薄いパネル一枚のコンピューターを実現できたものの、文字入力という点で、かなり劣っている。タッチパネルでは、文字入力は高速には行えない。
ただし、今やコンピューターの処理性能は大幅に上がった。そのため、賢い入力補助が盛んに開発されるようになった。特に、入力速度の遅さとわずらわしさを補うために、英語でも、単語補完や文章補完のIM機能が発達した。
そのような新しいコンピューターの興隆が、従来のIMにも影響を与えていて、思想が変わっているのだろうと思う。
問題は、従来のキーボードハードウェアで入力する我々は、タッチパネルがもたらした新しいIMの思想を、キーボードにおいても受け入れるだろうか。どちらが優れているかはともかく、慣れは大きい。
キーボードユーザーからは、新しい設計思想はiBusは、好まれないのだろう。おそらく、キーボードユーザーは、別の従来の設計思想のIMに流れていくのではないかと思う。
タッチパネルは確かに面白い入力装置ではあるが、私は、近い将来にキーボードがなくなるとは思わない。物理的な音溝を針でガリガリとなぞって振動させるレコードは、周波数をサンプリングしてビット列で表現し、光の反射具合でビット列を読み取って再び振動に戻すCDに取って代わられた。そして今では、ストレージとネットワークの発達により、光学ディスクもその役目を終えようとしている。これは当然のことだ。しかしタッチパネルは、表面が動的に物理的に変形して隆起し、しかも弾力性を持ち、物理的に押し下げ可能なボタンとして遜色なく機能するような、そういう技術が実用化されない限り、キーボードを置き換えることはないだろう。そのようなタッチパネルに物理的感触をもたらす技術は研究中であるが、まだ実用化には程遠い。
とはいうものの、キーボードの地位はまだしばらく揺るがないと宣言するのは、私にとって、かなり勇気がいることである。というのも、歴史を見れば、盤石だと思われていた技術は、すぐに新技術によって駆逐されていくものだからだ。しかし、私はキーボードに関しては、まだ地位は盤石だと宣言する。
もっとしっかりした順序だった文章を書こうと思ったが、どうも取り留めのない意見がだらだらと続いてしまったので、このへんで切り上げる。
2 comments:
私も英語を入力する際にはIME自体をオフにする派なのですが、かなり昔に、IT系でないオフィスワーカーが、Windows上で所謂半角英数字を入力するときにどうするのかを観察した所、殆どの人がIMEをオンにしたまま全角・半角を切り替えているのを発見して、びっくりした記憶があります。
IMEが予測変換を学習するから賢いやり方だと思うが
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