2013-10-02

Ubuntu 13.10でのXMirデフォルトが見送りになる模様

[Phoronix] Ubuntu 13.10 Desktop Will Not Use XMir By Default
XMir update for Ubuntu 13.10

当初の予定では、今月半ばにリリースされる予定のUbuntu 13.10は、サポートされている環境(主にIntel)では、デフォルトで、X.Orgとは異なる独自の新しいディスプレイサーバーであるMir上に、X.Orgを流用したX互換のXMirを動作させ、さらにその上で、既存のXに依存したウインドウマネージャーやらライブラリやらを実行する予定であった。ただし、まだ問題が多いとして、見送る決定がなされた。

まあ、AMDかnVidiaの吐き気を催すプロプライエタリなバイナリのカタマリを使っている環境では、当初の予定でも依然としてX.Orgなので、大方にはあまり影響がなかっただろうが。

Waylandでは、XWayland(XMirと同じくX.Orgを流用)が、Xに依存するアプリケーションを実行するだけの互換レイヤーであり、たとえできたとしても、その上でディスプレイマネージャーまで実行するほどの愚直な方法はとっていない。

Canonicalは、とにもかくにもMirの実績が欲しいらしく、結果的にすべてをXMir上で実行することになったとしても、Mirを使わせることにやっきになっている。

これをみると、Waylandは正しい設計と実装を慎重に進める方針のように感じられ、一方Canonicalは、なりふりかまわず動くものを早く出したいという方針のように感じられる

WaylandはMirに先行してもう何年も開発され続けている。X.Orgでは限界だと感じる大勢の分野の人間が、協力して正しい設計にしようとしている。GTK+やQtのようなGUIツールキットから、ウインドウマネージャーから、Intelのような自由ソフトウェアに貢献しているGPUベンダーまで、幅広い分野から支援、対応されている。

一方、MirはCanonicalがWaylandの設計の一部を流用して、秘密裏に9ヶ月ほど開発していたものを、急にだしてきて、Waylandにかわってうちはこれを使うといいだした。Canonicalはそれまで、将来的にはWaylandに移行すると発表していたこともあり、この秘密裏で当然の方針転換の発表は、様々な分野の人間の反感をかった。いまは少し落ち着いてきたが、それにしても、GTK+やQtのようなツールキットの対応も、Canonicalが自前で対応しなければならないだろう。

そして、Canonicalは発表するや、すぐにUbuntuで、環境は限定的ながらもデフォルトにするべく無茶苦茶な短期間の予定を設定している。

こう書くと、Waylandこそが未来であり、Mirは勝手に爆死するだろうと思うかもしれない。だが、筆者はどちらが成功するのか、分からないでいる。特にソフトウェア史を振り返ると、主流となったソフトウェアは、とりあえず一般人(=オマエのカーチャン)に動くものを素早く提供したところが多いからだ。いかに問題が多かろうと、オマエのカーチャンでも動かせるものがあるというのはでかい。問題山積みながらも、CanonicalがUbuntuでWaylandに先んじてMirを、オマエのカーチャンでもインストールするだけで動かせる状態にまで持っていけば、Mirが勝ってしまうかもしれないのだ

「論理的、技術的に正しい設計を! 慎重な設計を! 理想の設計を! 絶対に問題が起こらず、将来の拡張性も万全な設計を!」、このように理想を追い求めた結果、広く使われることなく、発展せずに死んでいったソフトウェアは多い。多くの者は、そのソフトウェアの存在すら知らぬ。

動くものがあれば利用者が現れる。実際に利用されなければ分からない問題もある。問題は発見されなければ修正できない。利用者が大勢いれば、別の分野も、対応を迫られる。たとえば、多くのWebサイトは、不自由で規格準拠せず遅い時代遅れのIEに対応しなければならない。IEが最悪なのは明白だが、Webサイトの閲覧者の90%がIEである以上、対応しなければならないのだ。何故ならば、IEは一応は動くわけだし、Windowsのデフォルトだからだ。

幸い、IEのシェア率は、このブログではもはや10%にまで落ちている。これは、FirefoxやChromiumのような、IEより圧倒的に機能面ですぐれたブラウザーがでてきたり、そもそもWindowsのシェアが下がってきているからだ。残念ながら、下がったWindowsのシェアは、自由なOSではなく、iOSや不自由ドライバー満載のAndroidといったOSと、そもそも従来のPCとは少し勝手が違う、スマートフォンやタブレットといったハードウェアの興隆によるものだが、劣ったIEのシェアが下がるのはいいことだ。

しかし、このブラウザーのシェア率は、このブログのような、やや一般とは離れた話題を扱うWebサイトだからこそであり、まだ無知盲目なユーザーの多いWebサイトでは、50%以上がIEだろうと思われる。既存の体制を打破するのは難しいのだ。

筆者の予想では、ディスプレイサーバー戦争は、明確な勝者がいないままダラダラと続くだろう。UbuntuではMir、その他のディストロではWayland、しかし、実際には、どちらも大方のアプリケーションはいまだにX.Orgに依存しているという状態がしばらく続くのではないかと思う。

2 comments:

Anonymous said...

> 以下に問題が多かろうと
s/以下/如何/

Anonymous said...

GNOMEやKDEにもMir移植プロジェクトはありますよ。