2009-09-17

延慶本の文覚の発心譚が興味深い

周知の通り、平家物語には異本が多数存在する。一番有名なのが、覚一本である。今日の一般人が、平家物語を読もうとすれば、まず覚一本を読むだろうと思う。それも、龍谷大学所蔵の本を底本にしたものである。なぜなら、岩波から出ている平家物語がそうだからだ。

ほかにも異本は様々あるが、私は、まだ覚一本と源平盛衰記しか読んでいない。

延慶本というのがある。これは、最も古体を残していると言われている本である。とは言っても、延慶時代(1308年 - 1310年)に、根来寺によって写本されたもので、明らかに、全体的に書き直されたと推察できる証拠もあり、また、根来寺の宗派の影響も受けているので、これをもって原平家物語ということもできない。しかも、盛衰記からの影響を受けたとみられる箇所もある。

今まで、読んでいなかったが、ふと文覚の発心譚の部分を読んでみると、だいぶ興味深い。世間一般の文覚の逸話とは、だいぶ違ったことが描かれている。

ただし、どうみても脚色が甚だしい。ことによると、源平盛衰記よりひどいかもしれない。

ただし、よく書けている。かなり文学性は高いと思う。

とりあえず、全部通して読んでみることにする。

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