2010-10-24

盗難バイクを受け取った少年、一切の電子機器の使用を禁止される

Court Rejects Probation Rules On Teen That Ban Him From Using Social Networks Or Instant Messaging Programs | Techdirt

shall not use a computer that contains any encryption, hacking, cracking, scanning, keystroke monitoring, security testing, steganography, Trojan or virus software.

is not to use a computer for any purpose other than school related assignments.

暗号の利用禁止ということであれば、SSLを利用したWebサイトは使用できなくなる。それどころではない。Webブラウザーやメールソフト自体が使用禁止だ。そもそも、WindowsやMacOSやLinuxといったモダンなOSは、暗号技術がふんだんに使われているので、使用禁止である。コモドールでも使うのだろうか。いやしかし、コモドールは暗号フリーだろうか。

それどころではない。テレビやゲーム、DVDなども使用禁止である。大昔の真空管テレビででもない限り、これらの機械には、暗号技術がふんだんに使われている。もちろん、DRMのかかった音楽や動画、電子書籍なども利用禁止である。また、電話も使えないだろう。

電子透かしも、DRMを利用不可能にする。しかし、現在では、多くの音楽CDに、電子透かしが埋めこまれている。つまりこの少年はCDを再生することすらできまい。

キーストロークモニタリングの禁止も厄介だ。なぜならば、現代のほとんどのソフトウェアは、キー入力を監視している。もちろん、OSはまず筆頭にあがる。キーモニタリングをしていないソフトウェアというのは、OSのカーネルのごく一部でしかないだろう。しかし、それ単体では存在できない。そもそも、BIOSからして、キーモニタリングしているではないか。

クラッキングやスキャニングの定義も曖昧である。セキュリティテストには、おそらくファイヤーウォールやアンチウイルスソフトなども含まれるであろう。これらも実に効果的に、OSを使用不可能にしている。あるコンピューターにウイルスが入っていないと断言することはできない。なぜならば、工場出荷段階で、HDDやフラッシュメモリやEPROMにウイルスが混入している可能性があるからだ。

もし、この少年の住んでいる家が、物理的なカギのかわりに、電子キーを用いていた場合、この少年は一人で家に入ることすらできないであろう。

裁判所の命令を守るためには、この少年は現代技術を排斥するアーミッシュ - Wikipediaの住んでいる場所に引越して暮らすしかないであろう。しかし、アーミッシュとて、道交法をまもるためにしかたなく、馬車にライトを取り付けたりしているのだ。果たしてそのライトには、一切のコンピューターと認められる電子回路が組み込まれていないものかどうか、心配である。

このように、現代社会における暗号の禁止は、単なるパソコンの利用の禁止以上の、あらゆる電子機器の使用禁止という意味を持つ。あらゆる電子機器の使用を禁止された場合、すでにその存在に依存した社会では、暮らしていけないだろう。一体どうしたらこんな馬鹿げた命令を下せたのか、理解に苦しむ。

詳しくは元ソースを参照してもらいたいが、これには抜け穴があって、「学校の宿題のために、学校内や家庭内の監視された環境なら使用可能」という文章がある。おそらく、あらゆる電子機器の利用が、学校の宿題という名のもとに行われるのであろう。そもそも、自宅のドアを自力で開けられなければ、専属の秘書でも雇わない限り、学校に登下校できないわけだし。

そもそも、「盗難バイクを受け取った」という罪が、どうしてコンピューターの使用不可という命令になるのか分からない。現代社会は、コンピューターなしでは、到底暮らしていけないというのに。たとえば、銀行にも行けない。信号機の利用はコンピューターの利用になるだろうか。

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