聡明なC++0xプログラマである読者諸君ならば、もう、以下のコードは、C++0xでは、疑いようもなくwell-formedであることを知っているだろう。
// C++03ではill-formed // C++0xではwell-formed vector<vector<int>> v ;
従来、連続した>は、>>演算子と、文法上曖昧であるので、かならず>>演算子だと解釈されるようになっていた。C++0xでは、このような場合、演算子と解釈されることはなくなった。もちろん、分かりやすさから言えば、空白文字を挟んだ方が分かりやすいだろう。
vector< vector< int > > v ;
何にしても、このようなちょっとした落とし穴は、初心者を無用に混乱させる。、C++0xでは、このようなちょっとした落とし穴がいくつも塞がれている。
さて、ここまでが前振りで、ここからが本番である。以下のコードは、C99では、ill-formedである。C++03ではundefined behaviorである。C++0xではwell-formedである。ただし、[EOF]は、ソースファイルの終りを表す。実際の文字ではない。
int main() { }[EOF]
何故か。C99は、空ではないソースファイルは、必ず改行文字で終わらなければならないと定めているからだ。C++03では、空ではないソースファイルが、改行文字で終わっていない場合は、挙動は未定義と定めているからだ。したがって、上記のコードは、C99やC++03といった、前時代の旧言語では、動かない。
しかし、この仕様は、ユーザーの立場になって考えると、馬鹿げている。ソースファイルの終りが改行でなければならないというのは、ユーザー側からすれば、意味が分からない。ユーザー側からすれば、ソースファイルはそこで終わっているのだから。C++0xでは、このような馬鹿げた制限を取り払った。C++0xでは、空ではないソースファイルが、改行文字で終わっていない場合は、改行文字が補われると定めている。したがって、上記のコードは、C++0xという最高にクールな新言語では、well-formedである。
実は、このC++0xの制限緩和は、実に最近の変更である。いつドラフトに入ったのかというと、FCDからである。何と、今年に入ってからの変更だ。
ちなみに、この制限に関する文面は、
C99(TC3)の5.1.1.2 Translation phases paragraph 1.2
C++03の2.1 Phases of translation paragraph 1.2
C++の最新ドラフトN3126の2.2 Phases of translation paragraph 1.2
に書いてある。
2 comments:
POSIX 的にはテキストファイルは改行で終わることになっています。
・テキストは行の集合である
・行は改行で終わる
という理屈だそうです。
これが制約の由来でしょう。
言語の制約としては無意味ですが、 C の制定当時はツール類との協調を考えてそうしたのかなと想像します。
POSIX由来ですか。
テキストは行の集合という前提すら、現代人である私からすると、もう理解できませんね。
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