世間では、年賀状というものを送るそうだが、正しい年始状の書けない情けない者が多い。そこで、今年も残り少なくなってきた今、正しい年始状とその挨拶例をみてみよう。
男の場合、以下のように書くのが正しい。
新年の御慶めでたく申納候。舊年中は何かと御高庇を蒙り御禮は筆にも盡し難く候。何卒當年も相變らず御厚眷を賜はり度偏に奉願候。尚尊家御一統の御慶福を奉祈候。謹言。
これこそ、正しい年始状である。
また、このような年始状をもらった場合、以下のように返事を書く。
早々御賀章を賜はり忝く奉存候。萬里到らぬ隈なき新陽の光を欣び迎へて尊堂御一同の御健康と御昌福を奉祝賀候。客年中は當方こそ種々御好意を忝うし千萬感謝仕候。尚倍舊の御愛顧を奉願候。先は御答禮まで。謹言。
こう書いてこそ、教養のある返事である。
ちなみに、女の場合は、ここまで難しく書く必要はない。もっと簡単に書いてよろしい。
さしのぼる初日影くもりなき年の光を、御一統様御揃ひのどかに御迎へ遊ばされ候こと、かず〳 〵御めでたく御祝ひ申上候。私方にも皆皆つゞが無く年重ね候ま〻憚りながら御心安う思召たまはりたく候。常は手前にかまけ御無沙汰ばかり致し、御子様方御成身の御様子も久しう拜し参らせず、一入御ゆかしう存じまいらせそろ。めでたくかしこ。
「まいらせそろ」は、本来、合略仮名で書くべきなのだが、遺憾ながらUnicodeにも入っていない文字なので、仕方なくかなで書いている。実際に書くときは、合略仮名で書くべきである。
さて、返事には、
門の小松の千代かけてめでたき年の初めの御玉づさ忝う拜しまいらせそろ。御一統様ます〳 〵御機嫌よく御年迎へ遊ばされ、重ね〴 〵めでたく祝ひ上げまいらせそろ。先づは御あいさつのみ。めでたくかしこ。
ちなみに、これはたまたま百万遍の古本祭りで手に入れた文章のお手本集の中に載っていたものだ。
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