京都C++勉強会の宣伝のために、C++03とC++11の違いを、少しづつ解説することにした。
今回は、ライブラリ導入編だ。ライブラリ導入(Library Introduction)とは、C++の標準ライブラリを使うにあたっての約束事を定める章である。たとえば、予約されている名前なども、ここで定められている。
新しい予約された識別子
C++11/14では、新しい標準ライブラリのために、多くの識別子を導入した。既存のC++03のコードで、たまたまその識別子を使っているコードは、名前の衝突を起こす可能性がある。
とはいえ、識別子はほとんどstd名前空間スコープの下にあるし、マクロ名もきぞんのコードと衝突を起こさないように注意深く命名されているので、通常は問題になることはない。
新しいヘッダー
C++11/14では、多くの新しいヘッダーが追加された。
C++の新しくつかされたヘッダーは以下の通り。
<array>, <atomic>, <chrono>, <codecvt>, <condition_variable>, <forward_list>, <future>, <initializer_list>, <mutex>, <random>, <ratio>, <regex>, <scoped_allocator>, <system_error>, <thread>, <tuple>, <typeindex>, <type_traits>, <unordered_map>, <unordered_set>
また、最新のC言語規格に合わせて、以下のヘッダーが追加された。
<ccomplex>, <cfenv>, <cinttypes>, <cstdalign>, <cstdbool>, <cstdint>, <ctgmath>, <cuchar>.
たまたま、同じ名前のヘッダーを使っていた場合、問題になるだろう。しかし、ヘッダーの名前も注意深く選ばれているので、通常は衝突することはないだろう。
std::swapのヘッダーが<algorithm>から<utility>に変更
std::swapを使うコードは、C++11からはutilityを#includeしなければならない。
予約された名前空間posixの追加
posixという名前の名前空間が、あらたに追加された。これは、現時点では空っぽだが、将来使うために予約されている。
もし、posixという名前の名前空間をC++03のコードで使っていた場合、互換性の問題がある。
マクロ名として名前キーワードの追加
attribute tokenとして使われている、override, final, carries_dependency, noreturnは、マクロ名として使うことができない。
もし、このような名前のマクロ名を使っている場合は、互換性の問題がある。
そもそも、まともなC++プログラマーはCプリプロセッサーマクロを使うべきではない。
江添とボレロ村上の京都C++勉強会が、12月16日に行われる。これを書いている時点では、まだ空きがあるので、最新のC++14の新機能と、コンパイル時レイトレーシングを勉強したければ、ATNDで参加申し込みをせよ。
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当日はUstreamによる配信もある
http://ustream.tv/channel/hatenatech
また、私の書いたC++11のコア言語を完全に解説した参考書もある。
Gumroadで購入: C++11参考書:C++11の文法と機能
今すぐ閲覧: C++11: Syntax and Feature
誤りがあればGitHubでPull Requestせよ: https://github.com/EzoeRyou/cpp-book
この参考書は、C++の規格のみを参照して記述しており、特定のC++の実装(コンパイラー)で確かめただけで合法、違法を判断する、世間一般によくある駄本とは根本的に質が異なる本である。本書に誤りがあるとすれば、
- 誤字脱字
- 筆者の規格文面の解釈間違い
- 規格文面の誤り
だけである。まだ、世の中の安定版コンパイラーはC++11の規格をバグフリーで完全に実装していない。
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