2013-12-27

XKCD What If: 致死量のニュートリノ放射ってどのくらいなの?っと

XKCD What If: 致死量のニュートリノ

超新星にどれだけ接近すれば、致死量のニュートリノ放射を浴びることができるの?っと

(物理屋の事務所から聞こえてきたセリフ)

「致死量のニュートリノ放射」というセリフは、いかにも奇妙だ。私はこのセリフを耳にした後、何度も首をかしげざるを得なかった。

もし、読者が物理屋でなければ、読者にはさほど奇妙に聞こえないかも知れない。そこで、この驚くべき発想の意味をちょっとわかりやすく書いてみよう。

ニュートリノとは、幽霊のような粒子で、この世界とはほとんど干渉しない。試みに読者の手の平を観察せよ。毎秒10兆個ほどのニュートリノが太陽から降り注いでいるのだ。

読者が膨大なニュートリノの存在に気が付かない理由は、ニュートリノというものは、通常の物質とほとんど干渉しないからだ。平均して、このような大量のニュートリノは、数年に一回ぐらい、読者の体の一個の原子と衝突する[1]。

[1]: 読者が子供であれば頻度が下がる。なぜならば、衝突すべき原子が少ないからだ。統計的に、筆者の初めてのニュートリノとの干渉は、10歳ぐらいのときに起きたはずである。

実際、ニュートリノはとてもこそこそしているため、太陽からの膨大なニュートリノは、地球全体を、何の影響もなく通り抜けてしまうのだ。ニュートリノを検知するために、人間は百トンもの物質で満たされた巨大なタンクをこしらえて、太陽からのニュートリノのひとつと、どうにか衝突してくれることを祈っているのだ。

これはつまり、粒子加速器(ニュートリノを生成する)が、ニュートリノビームを、世界のどこかの検出器に送りたいときは、検出器の方向にビームを向けるだけでいいのだ。たとえ、地球の反対側であったとしてもだ!

だからこそ、「致死量のニュートリノ放射」というセリフは、とても奇妙に聞こえるのだ。ありえないスケール同士の組み合わせだ。ことわざでいうならば、「羽で殴り飛ばされる」とか、「サッカー場の上までアリを詰める」[2]、といったところだ。もし、数学の素養があるのあらば、"ln(x)e"のような式を見たようなものだ。これは、文字だけ読めば、完全に意味をなさないというわけではないが、このような式を適用すべき状況が思いつかないのだ。[3]

[2]: それでも世界のたった1%程度の量のアリなんだけどね。

[3]: もし、数学科の一年生を苦しめたいのならば、この微分させた、ln(x)e dxについて質問してみるといい。1のようでもあり、他のなにかのようでもあるが、そうではないのだ。

このように、ニュートリノをたった一つの物質と作用させるだけの量を集めるのも難しいのだ。読者に影響を与えるほどの大量のニュートリノは、想像が難しい。

超新星(Supernovae)[4]は、そのような状況を提供してくれる。この問題を話してくれた物理学者は、超新星に関わる数字を推測するときの原則としては: どんなに超新星を大きなものと考えようが、超新星は想像よりもっと大きい

[4]: Supernovasでもいい。Supernoviiは非推奨。

このスケールの大きさを読者に認識させるための問題:

以下のいずれかが、読者の角膜に与えるエネルギーという点で、よりまぶしいか。

  1. 太陽と地球ほどの距離ほど離れた場所から観測した超新星
  2. 読者の眼球にくっつけて起爆させた水素爆弾

物理学者の原則を適用すれば、超新星のほうが眩しい。実際にそのとおりである。9桁もの差がある。

だからこそ、これが適切な質問になるのだ。超新星は想像できないほど強力で、ニュートリノは想像できないほど非力なのだ。いったい、どこまでいけば、このふたつの想像できないもの同士が打ち消し合って、人間のスケールで影響を及ぼすのか。

被曝の専門家、Andrew Karamの論文が、その答えを提供してくれている[5]。この論文は、超新星において、星の核が崩壊して中性子星になるとき、1057個のニュートリノが放出されると説明している(星のすべての陽子が崩壊して中性子になるのだ)

[5]: Karam, P. Andrew. "Gamma And Neutrino Radiation Dose From Gamma Ray Bursts And Nearby Supernovae." Health Physics 82, no. 4 (2002): 491-499.

Kramは、1パーセク[6]離れた場所におけるニュートリノ被曝量は、約0.5ナノシーベルト、あるいはバナナを一本食べた場合の500分の1の被曝量であると計算した。

[6]: 3.262光年、もしくは、ここからアルファケンタウリまでよりすこし短い。

[7]:xkcd.com/radiation

致死量の被曝量は約4シーベルトである。逆2乗の法則を使えば、被曝量を計算できる: \[ 0.5\text{ nanosieverts} \times\left ( \frac{1\text{ parsec}}{x}\right )^2 = 5\text{ sieverts} \] \[ x=0.00001118\text{ parsecs}=2.3\text{ AU} \] 2.3AUは、太陽と火星より少し遠いぐらいの距離だ

核が崩壊する超新星は、巨大な星に発生する。そのため、このような距離から読者が超新星を観測したならば、読者はおそらく、その超新星をつくりだした星の外層の中にいたはずだ。

ニュートリノ放射による被害という考え方は、いかに超新星が強力なものかを改めて思い知らされる。もし、読者が超新星を1AU離れて観測したとして、読者は何らかの方法で、発火、消失、そして何らかのエキゾチックなプラズマに変換されるのを免れたとしても、幽霊のようなニュートリノが、まだ読者を殺せるほどの量を持っているということだ。

もし十分に速ければ、羽は確実に読者を殴り飛ばせる。

2 comments:

Anonymous said...

「2.3AUは、地球と火星より少し遠い」は、太陽と火星より少し遠い、ですね。

Anonymous said...

one for every proton in the star that collapses to become a neutron

「崩壊して中性子になる陽子1つにつき1つ」だと思います。
実際、星の外層は爆発で吹き飛ばされるので星の全ての陽子が中性子にはなりませんし。