2013-12-11

xkcd What if?: 星の王子様に出てきた小さな惑星が本当にあったらどうなるの?っと

またもやxkcdから。

小さなお星様

もし、小惑星がとても小さく、しかし超密度であれば、星の王子様みたいに生活できるの?っと

Samantha Harper

先週、我々は巨大な惑星における生活を考察した。今週は、小さな惑星に目を向けよう。

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ著の星の王子様は、遠く離れた小惑星からの旅人のお話だ。読みやすく、どこか物悲しく、印象深い絵本だ。[1]。子供向けの本だが、対象読者を限定するのは難しい。ともかく、大衆受けしていて、歴史的にもベストセラーになっている。

[1]: 星の王子様のような話をもっと読みたければ、Mallory Ortberg著のこの素晴らしい小説を下までスクロールするといい。

星の王子様は1942年に書かれた。これは小惑星について書くにあたって、とても興味深い年代である。というのも、1942年には、我々はまだ、小惑星がどのような形をしているか知らなかったのだ。当時の最高の望遠鏡を使っても、最大の小惑星は、単なる光の点としてしか観測できなかった。実は、asteroidという名前の由来はそこから来ている。意味は「星のような」だ。

我々が小惑星の形について初めて確認できたのは、1971年、Mariner 9が火星に到達して、フォボスとダイモスの写真を撮影した時だ[2]。この、当時小惑星と信じられていた月[3]は、現代風のポテトのような形の小惑星のイメージを形成した。

[2]: コレがフォボスの画像だ。典型的な小惑星の見た目をしている。この計画に画像アーカイブは、NASA Space Science Data Centerにあるが、奇妙なことに、NSSDCは、実際の画像閲覧は、どっかの個人サイトTripod pageに丸投げしている。

[3]: 興味深いことに、フォボスとダイモスは小惑星の形をしているが、最近の研究によれば、小惑星ではないという。Craddock, Robert AのAre Phobos And Deimos The Result Of A Giant Impact? Icarus (2010)を参照。

1970年代以前、SFでは小さな小惑星も、惑星のように丸いものであるとの考えが一般的だった[4]。

[4]: 皆がそういう考えだったわけではない。だいぶ正確な考えの人もたくさんいた。ヘンテコな考えもあった。

星の王子様はこの考えをさらに飛躍させた。小惑星が、小さな惑星で、重力があり、空気があり、バラもある。ここで科学的に糾弾するのはあたらない。なぜならば、(1) これは小惑星の話ではないし、(2) 大人が物事を真面目に考えすぎることを茶化すためのものだからだ。

そこで、お話を変更するのではなく、科学的に考えればどうなるのかについてみてみよう。もし、歩き回れるほどの表面重力を持った超密度の小惑星があるとする。その小惑星は、とても面白い特性を持っている。

もし、小惑星が半径1.75メートルであれば、地表で地球と同等の重力を有するためには、その質量は500万トンなければならない。これは、地球上に存在するすべての人間分の質量と同じ程度の質量だ。

地面に立つと、潮汐力を感じるだろう。頭より足のほうが重く感じるので、ゆっくりとストレッチしたような感覚を覚えるだろう。あたかも、丸まったゴムボールの上でストレッチしているような感じ、あるいは、頭を中央に向けてメリーゴーラウンドに寝そべったような感覚だ。

地表における脱出速度は、秒速5メートルだ。これは全力疾走よりは遅いが、それでもそれなりには速い。目安として、もし読者がバスケットボールをダンクシュートできなければ、垂直跳びで脱出するのは無理だ。

しかし、脱出速度の面白いところは、進む方向は関係がないということだ[5]。もし、読者が脱出速度よりも速く動けば、その方向が惑星に向かうものでないかぎり、脱出できる。つまり、小惑星を水平方向に走って、崖でジャンプしてもオサラバできるのだ。

[5]: ・・・だからこそ、脱出速度(escape velocity)は、本当は脱出速度(escape speed)と呼ばれるべきなのだ。方向がないというのは(それこそがspeedとvelocityを区別するものなのだから)、とても重要な違いだ。

もし、読者が惑星を脱出するほど速く動けなかったとしたら、軌道上を回ることになる。読者の軌道速度は約秒速3メートルだ。これはジョギングの速度である。

だが、これはとても奇妙な軌道になるだろう。

潮汐力が読者の複数箇所に対して働くことになる。もし、読者が惑星方向に腕を伸ばしたとすると、その腕は体の他の部分よりより強く引かれることになる。もし、腕を地面に下ろしたとすると、体の他の部分は上方向に押し上げられる。これはつまり、読者の体の他の部分は、重力をより軽く感じることになる。結果的に、体の各部位が、それぞれ別々の軌道を辿ろうとするのだ。

このような潮汐力下における巨大な軌道物体は--例えば、月--は、一般的に、粉々に砕けて輪を形成する。これは読者には起こらない。しかし、軌道はカオス的かつ不安定なものとなるだろう。

このような軌道については、Radu D. RugescuとDaniele Mortariによる興味深い論文[6]で検証されている。彼らのシミュレーションによれば、巨大な長い物体は、中心部を軸に不思議なパターンをたどるのだという。質量の中心点すら、古典的な円を描かない。五角形軌道のこともあれば、カオス的に回転した挙句、惑星に衝突するものもある。

[6]: >Rugescu, Radu D., Mortari, Daniele "Ultra Long Orbital Tethers Behave Highly Non-Keplerian and Unstable" WSEAS Transactions on Mathematics, Vol. 7, No. 3, March 2008, pp. 87-94.

このような解析には、実は実用的な応用対象がある。長年、とても高い、車輪とヒモで、荷台を重力圏内外に運ぼうという提案がなされている。いわば空中に浮かぶ 宇宙エレベーターだ。そのようなヒモは、荷台を地表と月間で移動させることができたり、地球の大気圏内から宇宙船を捕まえたりできる。軌道ヒモの不安定性は、この計画における難しい課題となっている。

さて、この超高密度小惑星の住人は、とても注意深く暮らさなければならないだろう。もし速く走り過ぎると、激しく揺さぶられて、昼飯を戻してしまう深刻な危険がある。

幸い、垂直跳びは問題ない。

星の王子様の生活は大変そうだ。

1 comment:

Anonymous said...

velocityが「速度」で、speedが「速さ」ですね