王子墊問曰、士何事、孟子曰、尚志
王子墊問ふて曰く、士、何をか事すと、孟子曰く、志を尚くすと。
漢文では、基本的に主語、述語、目的語の順で文字がくる。書を読むのであれば、読書だし、礼を学ぶのであれば、學禮だ。而るに、今上の文の「何事」は、その原則に従っていない。これはどういうわけか。
実は、目的語が、何とか誰などという、疑問代名詞である場合は、一般に、この語順が逆になるという法則がある。例えば論語でも、
吾之於人也、誰毀誰譽
吾の人に於けるや,誰をか毀り、誰をか譽めん
これも、目的語が先に来ている例である。
子曰、不患人之不己知、患不知人也
子の曰く、人の己を知らざるを患へず、人を知らざるを患ふるなり。
もし、目的語が代名詞で、しかも文が否定文である場合は、一般に、不、目的語、述語、の順番になる。だから、「人を知らず」は、「不知人」だが、「己を知らず」は、「不己知」になる。
身不善之患、毋患人莫己知
身の不善をこれ患へよ、人の己を知ることなきを患ふるなかれ。
漢文にも、倒置法がある。その場合、目的語、述語、という並びになるのだが、単純にその並びにしてしまっては、混乱するので、之を付ける。これを訓読する場合、之は、これと読むか、あるいは全く読まない。それ自体が特に重要ではないからだ。
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